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密着マルチについての文献紹介(24.3.12更新)


本は各自で用意して下さい。図書館でも結構揃います。カーリルを活用してください。随時更新します


風の谷のナウシカ 絵コンテ1 
A・Bパート(1984)

↓密着マルチ仕様による Follow
・密着マルチFollow
(マルチとはこの場合、多断層ということ。)
空(雲)と電柱、手前の草ムラが画面をよぎる速度は異なる。
電柱、草等を動画で処理することがあるが、背景処理する場合は一番下の背景以外はBOOK(ブック)という
(指定の実例)
密着マルチFollow→

コメント:文庫本サイズ。宮崎駿自身による撮影処理解説がイラスト付きで載っています。値段も安いのでかなりオススメです

ロマンアルバムエクストラ 
風立ちぬ(2013)

p20
…カメラ移動を表現するために、画面奥と手前で背景の移動速度を変える密着マルチが用いられている。
p54
…密着マルチ引き(背景をなんだんかのbookで構成し、カメラの移動に合わせて異なる速度で引く)…
p56
…雲の間から巨大飛行船が出現する場面で使われているのは、p54と同じ密着マルチの技法である。ただし、その目的は視点移動のためではなく、奥行きのある雲の移動を表現するためである。
p82
…bookを重ね、それぞれを大地のうなりに合わせて上下に異なるタイミングで引っぱる密着マルチ…

コメント:全編を通して定義が曖昧です。編集は野崎氏ですが撮影経験のある方が監修してないため正しく用語が使えているか不明。デジタル上で作られたものは手段の話では全てデジタルコンポジットに分類されます。その中でも撮影台の密着マルチでも表現できる手法や密着マルチ風の演出に対し密着マルチと呼ぶことが現在主流になっているでしょう。手段と演習の話を区別するのがポイントです。例えばp20のシーンは町の人々が動画になっているので撮影台では厳しいですが、手前と奥の風景だけを考えれば撮影台でも表現できる立派な密着マルチです(町の人々は背景として処理されるでしょう) 一方、p82はレイヤーが多過ぎるので撮影台では不可能に近く手段として密着マルチとは言えません。ここでは演出として密着マルチ風のスライド演出を指しているようです

スタジオジブリの撮影術(2023)

●密着マルチ
移動しているカメラで撮影した時、遠景はあまり動かず(無限遠はほぼ完全に静止)、逆に近景は大きく動く*。そこで背景を遠景から近景に何段かに分けて描き(一番奥を背景、手前に置く背景をBookという)、それぞれ移動の大きさを変えて撮影することによってカメラが移動する動きを擬似的に再現する方法。当初は背景の手前にBookを1枚置くだけの二段撮影だった**が、時代と共に段数は増え、最終的には奥井氏の後述の言葉にもあるように五段(背景+Book4枚)のマルチ撮影まで行われるようになった。今はデジタル技術を用いて近景から遠景まで連続的に移動速度が変化する背景マッピング撮影が主流となっているが、密着マルチ独特の移動感を好む監督も少なくなく、あえてアナログ時代の動きがデジタルで再現されることもある***

これも野崎氏です。*は説明のため嘘が含まれてます。カメラの首を振るPANでは回転中心が静止で中心から離れるほど画面内での移動速度が上がることは簡単に想像できると思います。**当初は横スライドのみだったことが最初に紹介したナウシカの絵コンテの解説で分かります。***手段と演出が区別されていて素晴らしい表現です。内容的にもマニアックでオススメの本です 



その他

ロマンアルバム もののけ姫(1997)
p101 コンポジットとオプチカル合成に言及
THE ART OF もののけ姫(1997)
p172 コンポジットとオプチカル合成に言及

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