カート・コバーンがメジャーデビュー前に着ていた非営利団体”Inner City Missions”のTシャツ
Tシャツとロック音楽についてお話ししているYouTubeチャンネルのテキストを動画では話せなかったおまけ話やイラストとともに綴っています。
90年代における最高のロック・アイコン、カート・コバーンが着ていたTシャツについて全7回語る内の第5回目です。
⬛️Fake画像が壊すミュージシャンのイメージ
最近はアーティストのフォト・ショットもコラージュなんかで加工されたものが色々なwebサイトにアップされていて、カート・コバーンが実際に着用していないにも関わらず、まるで着ていたかのようなFake画像があったりします。
私が元々所有していたアーティストのTシャツと同じものをカートが着用している画像を発見して一瞬喜んで、ここで紹介しようと思ったのですが、再確認のため画像検索をかけたんですね。そうしたら全く別のTシャツを着用している写真でTシャツのみ差し替えられている画像がたくさんヒットして出てきたんです。それで誰かが作ったFake画像だとわかったんですけど、やっかいなのはアップロードされたFake画像は誰かがコピーしてまた別のところにアップロードみたいなことが繰り返されていると、いくら最初のFake画像が消されてもどこかで残り続け、増殖していくと、やがてFakeも本物も区別がつかなくなるという恐ろしいことになりかねないんですよね。
まぁ、酷いのになると、あの曰く付きの1992年のMTVミュージックアウォードのカート・コバーンとアクセル・ローズがその時の格好そのままでツーショットにおさまっているFake画像まであるんですから、実際何があったか知らない世代の人が画像だけ見ると希代のミュージシャン二人は仲良しみたいに思ってしまう可能性もあって、全く酷いもんだと思ったのです。
なので、ここでミュージシャン、アーティストが着ていたと紹介するものは写真集なんかにも使われるようなオフィシャルなショットやレーベル、レコード会社のオフィシャルなカタログにある映像作品、現在は廃盤になっていても過去に公式にリリースされている映像作品で確認できるもの、その中で印象的なものに絞ることにしています。ただ当時の記憶をたどってお話ししている部分が多いので曖昧だったり記憶違いをしていることも可能性としてあります。その場合は曖昧であることをお伝えするようにしますし、アーティストのイメージを歪めたりするようなものでない話しに限ることにしています。ですから、万が一それは間違っているというような情報があれば、正しい情報ソースとともにご指摘いただければと思います。
⬛️メジャーデビュー前に着ていた非営利団体のTシャツ
ということで前置きがながくなりましたが、カートが着用していたTシャツでちょっとマイナーなものも紹介したいと思います。
こちらはカリフォルニアのロングビーチにあったクラブ、ボガーツでのライブの時にカートが着用していたTシャツの復刻盤です。
この映像は『With The Lights Out』のDVDの中で確認ができます。インディ時代、SUB POP からリリースした『BLEACH』のツアー時なので、演奏も荒削り、まぁNirvana が荒削りでなかったことはないんですけど、輪をかけて荒削りで、カートの髪もちょっと長め、チェックのシャツ、色もののTシャツ、履き古したジーンズとおそらくはき古したコンバースオールスター・スニーカー。いかにもメジャーデビュー前のインディー、オルタナティヴスタイルです。
映像ではほとんどTシャツの柄がわからないんですが、このライブ写真ではしっかりと確認ができます。このTシャツには Inner City Missions とタイポされています。
あと十字架を握る手と街の図柄がプリントされているようです。調べてみたのですが、全く同じ図柄のものはWebの検索ではヒットしませでした。やはりもう30年以上も過去のものになるので、現存はしていないのでしょうか。
ただ、同じInner City Mission という名称で、その後に地名がつくようなものがいくつか該当するものがありました。いずれも非営利団体のもので、子供の教育の場が不十分なところに学校を建てたり、その援助を行ったり、アフリカでは水道が整備されていない地域に井戸を掘ったり、そういった活動を行うものが見つけられました。
カート・コバーンが積極的に慈善活動を行っているイメージがないので、どうしてこのTシャツを着用していたのかはわかりませんが、もしかしたら、デザイン性が気に入って着ていたのかもしれません。
私もこのデザイン、Tシャツのデザインとしてとても好きです。まず、地の色なんですけれど黒にも濃紺にも見えます。映像や写真からはほとんど黒にしか見えないんですが、羽織っているチェックのシャツの色が映えて見えるのか若干青みが入っているように見えるんです。あと、このTシャツをWornFree というアメリカのTシャツブランドがあるのですが、このブランドがまた素晴らしいコンセプトで、私は尊敬しているブランドなので、また別の機会にまとめて取り上げるつもりなんですけれど、そのWornFreeがこの Innner City Mission のTシャツを復刻していた時期があり、そのボディの地の色が紺色だったのでそのイメージが刷り込まれているのかもしれないんですが、個人的には地は濃紺だと更にかっこいいなぁと思っています。
ここでお持ちしたのは黒ですし、もちろん黒でもカッコいいです。こちらの方が好みという方が多いかもしれません。
黒、濃い色の地にイエローのタイポグラフィがとても映えています。このタイポもかなりレトロな雰囲気で、90年代というより、70年代を彷彿とさせます。この端のくねった感じとかです。なんとなく70年代のR&BやFUNKのにおいが感じられてそんなところもTシャツのデザインとして好きなところです。 Innner City Mission という語呂もそう思わせる原因かもしれません。
こちらは今も販売されている商品ですので、日本国内のロックTシャツを扱っているショップで購入できると思います。TシャツのボディはGildan社のものなのでアメリカで手に入るでしょうし、イギリスをはじめヨーロッパ圏でみ比較的入手しやすいものだと思います。
⬛️小汚くてダサい貧乏インディ・ミュージシャン
柄やロゴの入ったTシャツにチェックのシャツ、ネルシャツ、で破れたジーンズという、まだパジャマやモヘアのカーディガンを着るカート独自のスタイルになる前、あと基本的なTシャツの上にシャツを羽織るようなスタイルは変わらないんですが、少しフェミニンで洗練されたスタイルになる前のカート・コバーン。一言で言ってしまえば小汚くてダサい、貧乏インディ・ミュージシャンだったころのの若い、まさにグランジぃなカート・コバーンの気分を味わってみるのも面白いと思うんです。ほとんどのミュージシャンにはそんな時期があったんですから。
この後、Nirvana がメジャーデビュー、大ブレイクして、カートも格好良くなって、Tシャツとネルシャツの小汚いスタイルがファッションになってグランジ・ファッションと呼ばれるようになって、カートがそのアイコンにまつり上げられるようになったころ、カート自身はそれを窮屈に感じ、取り巻く環境を皮肉ったり、流行になったグランジ・ロックを嫌い、皮肉るような発言が多くなります。カートが着るTシャツ一つを取ってもそんなことを感じさせるので、次回とその次にはその辺に触れたいと思います。