誰も知らない【ショート・ショート】
ユリは、入院した叔母の代わりに、墓参りに行くことになった。
2週間前にお見舞いに行って、叔母から頼まれたからだ。
(まだまだ入院するから)お盆に墓参りできないみたい。
息子たちも行けないって言ってたから、誰も行けないのよ。
行きたいんだけどね。
病室の窓の外を見ながら、叔母は元気のない声だった。
「場所を教えてくれたら、私が行ってこようか?」と答えると
まぁ!本当!ユリちゃん行ってくれるの?
ぱっと目を輝かせて、叔母は笑顔になった。
🌟🌟
8月13日。行くならこの日しかない。
ユリは、従兄弟に聞いた〇市〇〇町の〇〇霊園をグーグルマップで確認し、ナビを設定して、車で向かった。
〇市は、海沿いにある。市役所のある中心部の市街地は山に囲まれ、コンパクトな町だ。〇〇霊園は、市街地から北西方面の山の谷あいにあった。登っていく道路は一本道で、わかりやすい場所だった。
着いた。
〇〇霊園と看板のある駐車場に車を停めた。
50以上の墓が並ぶ中、〇〇家の墓を探して歩き回る。
が、見つからない。
ぐるぐると2回見て回ったが、ない。
道路を挟んで反対側にもたくさんの墓があった。
どこまでが〇〇霊園なのか、わからない。
〇〇霊園の手前で、〇〇寺の〇〇墓地、■■霊苑の看板も見かけた。
一本道は、まだまだ上まで続いているが、はるか先の山の斜面に、たくさんの墓が見えた。
山と山の間の谷間の斜面に、下から上まで、びっしりと墓地になっていた。
こんなにすごい数の墓を見たのは、初めてだった。
〇〇霊園の周辺をしばらく探してみたが、やっぱり見つからない。
断念した。
叔母さん ごめんね。
近くまで行ってみたけど、わからなかったよ。
次のお見舞いで、叔母さんに話そう。
がっかりするだろうな
お彼岸には行くね といっても
行ける自信はない。
だって、叔母さんしか知らない場所だから。
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