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【小説】終焉。僕は君らとこの物語を変えられるの、かな?3

第二章:豊穣の女神。そしてこの世界のお伽話。其の一

「ねぇ***今夜の寝る前のお話はなにがいい?」
「うーん…お母さんが何か決めてよ!お母さんが好きな話を聞きたいよ僕は」少年は布団に入りながら母に言った。
「わかったわ、んー。じゃぁ、豊穣の神様のお話なんてどうかしら?」銀に輝く綺麗な髪を降ろしている、母親らしき人物が優しい声で言った。
「なにそれ!ほしようのカミサマ?面白そう!聞きたい!」少年はバッと手を挙げ声を出した。
蝋燭が微かに揺れる。
「こーら、***夜なんだから大声上げないの。あと、ほうじょうね。」
「ごめんなさーい。でもここら辺には誰もいないよ?」少年は窓を見つめた。外の森は月と星の光で少し照らされ、木でできているこの家は風でミシミシと音を立てている。
「そーいう問題じゃありません!もうほら、お話してあげますから。」
「ねぇねぇ、ほうじょうのカミサマってどんなカミサマなの?」少年は尋ねた。
「それはね、とっても優し…いや、いいわ。お話を聞けばわかるでしょう。」
「はぁーい」僕は疑問になった。なぜ母が言葉を詰まらせたのか。
「あ、豊穣の神様の前に1つお話をしましょうか。今から8000年…いやそれ以上も昔のお話でね・・・」
☆     ☆      ☆
かつて、今より9000年以上前。この世界には6つの大陸があった。
その内の3つの大陸は人が支配していた。いや、かろうじて支配し暮らしていた。そして、他の3つの大陸にあるのは「魔」だ。その「魔」は目に入った生物を破壊していった。いつからか、「魔」は<亡魔スレイン>と呼ばれるようになった。<亡魔スレイン>の形はバラバラであった。虎や狼また、人に似たのも居たそうだ。<亡魔スレイン>は人を喰らえば強くなり、知恵をつける。その時代の人々にとっては毎日が恐怖に侵されていた。しかし、ある日を境に<亡魔スレイン>の遭遇率がさがっていった。人々は不思議に思った。中には<亡魔スレイン>が自滅していったのではと言う者も現われてきた。しかし、それは甘い、甘すぎる考えだった。人を喰らい知識を貯め込んだ<亡魔スレイン>が軍で人類に攻めてきたのだ。人々はただただ逃げることしかできなかった。抵抗は虚しく。滅びる運命と思えた。だが、奇跡は起こった。神が生まれたのだ。この星に。その生まれた神は<亡魔スレイン>を一瞬で葬った。大群だろうと関係ない。その神が裁きを与えた瞬間に<亡魔スレイン>は浄化されるように消えていく。消えた途端周りの木々が活性しているようだ。まるで、この星の栄養になっているかのようだ。
銀の髪を揺らし、敵を葬る彼女の姿は美しく優雅であり、人々の目を奪った。
誰かが言った。「星が生き返る…星生だ…星生の女神だ…!」
その後、彼女は逃げようとする<亡魔スレイン>の軍を壊滅させた。そしてこの世界に一時的な平和が訪れたのだった。
だが、これは人々にとっては歓喜であったが、星生の女神にとっては壮絶な物語の始まりだった。
☆      ☆      ☆
「ねぇお母さん知ってるよ僕。せいせいのカミサマって悪いカミサマでしょ!」僕は母に言った。
「え、どうして?どうしてそう思うの?***」
母は驚いた顔をした。
「だって、本に書いてあったの」
「本?」
「うん。本にね!ちゃんとは読めてないけど…確か、せいせいのカミサマは王子様をさらって王国を壊して、逃げたカミサマって書いてあったよ!」
「もしかして、ほうじょうのカミサマって悪いカミサ…」
「ねぇ。***。」
母の声のトーンが少し下がった。僕は怒らせたのかと身を構えた。
「その星生の神様のお話はね。物語の途中までしか、書かれてないのよ。」母は優しい声で言った。
「?」僕は二つの意味で驚いた。
「ふふ、(?)でしょ?」母は少し笑いながら言った。
「豊穣の神様と星生の神様はね、同じなのよ。」    
「***。この世界はね、広いのよ。この森を抜けた先には、人が住んでいるのよ。そして、海を越えた先には。もっとたくさんの人がいるのよ。」
母は楽しそうに僕に言ってきた。
「この私たちが居るこの南の大陸。ミドラスの人はね。豊穣の神様って呼ぶのよ。そして、海の向こうの人は、星生の神様って呼ぶのよ。」
「ねぇお母さん。星生の神様って結局どうなるの?」
僕は質問した。
「それはね、また今度にしよか。もう寝ないとね。おやすみなさい」
母は蝋燭を消した。
「うん…わかったぁ。おやすみお母さん。」
そう言って僕の意識は夢へと落ちていった。
☆      ☆      ☆
「おい、起きろ。起きろって」
僕は肩を揺さぶられ起こされた。
「あ…あれ…僕は…お話を…」
「おい、何寝ぼけたこと言ってんだ?犀兎せいと。って…なんで泣いてるんだよ。」
「え…あ、ほんとだ…」僕は顔に手を当て気付いた。
「どーしたんだよ」桑棘そらが心配そうに聞いてきた。
「いや、なんか、とっても昔に…体験したような…懐かしさが…」
なぜだろうか。さっきまで、なにか見ていたような気がするが思い出せない。
「てか、お前会議終わってからずっとここで寝てたのかよ…まぁいい。ほら、お寝ぼけさん一人じゃ危ないから俺が一緒に連れて行ってやる。」
「あぁ、ありがと。」
僕は桑棘そらに連れられ部屋に戻った。

#終焉物語



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