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story その生き物

その生き物は大きく欠伸をした
もう随分出し切ったやうだ

これで結構働ゐたのだ
次の波が来るまで
俺の役目は無ゐだらう

深海へ潜るやうに
その生き物は瞳を閉ぢた

岩のやうな姿が
後ろの景色へ溶け込んでゆく

ゐづれまた時が来たら…

引ゐて行く潮と共に
そゐつは靜かに消へてゐった


ことばはこころ。枝先の葉や花は移り変わってゆくけれど、その幹は空へ向かい、その根は大地に深く伸びてゆく。水が巡り風が吹く。陰と光の中で様々ないのちが共に生き始める。移ろいと安らぎのことばの世界。その記録。