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エンタメ気質もほどほどに

学校から帰って来た小2の息子と話してい今どきの小学生ってマセてるんだなと思った。同級生のA君が彼女と歩いているのが見えたからこっそり後をつけたら、人気のない路地に入ったところでお尻を触ったりして、公園ではベロチューしてるのを見たというのだ。小2でそれはさすがに早くないか?と驚いた。もともと、少し前から「Aがクラスのいろんな女子に告っている」と聞いていたので恋愛ごっこを楽しんでいるのかと思って笑いながら聞いていたのだが、あんまりエスカレートするのも大丈夫かなと心配していた。ちなみにA君の両親とは気さくに話せる友達だ。

ここまでならまだしも許容範囲だった。だが、なおも話を聞いていると、どうも雲行きが怪しくなってきた。なんでもその彼女がA君の家にお泊まりした時に二人でお風呂に入ってお互いの体を洗ったとか、あそこを触ったとか言うので、「さすがにそれはマズいだろ!」と思い、A君の父親BにLINEして「こんなことになってるみたいだけど、相手の親に知られたら大騒ぎになるよ!大丈夫?」と忠告すると、Bも「にわかには信じ難い話ですけど、まずは本人に詳しく聞いてみます」と言う。しばらくしてBから「彼女とされるRちゃんとは通学路の方向も違うし、一緒に帰ってはいないようです」という返事。また、お泊まりの事実もないという。小2の子供が親の目を盗んで他の子の家に泊まったり、逆に他の子を家に泊めるというのも不可能だ。

それを受けて今度は我が子に問いただすと、自分が直接確認したのは通学路でイチャついていたところまでで、お泊まり云々は3年のカケルくんから聞いた話だという。それをBに伝えると、自分の子があらぬ噂しかも破廉恥極まりない噂を広められていることを不憫に感じたようで、学校に報告したそうだ。すると、トラブル担当の教員からそもそも3年にカケルくんという生徒は存在しないという回答。

それを受けてまた我が子に問いただすと、今度はその子が何年生かは知らないという。体が大きかったので上級生だろうということで3年と憶測で言ったのだ、と。
「じゃあ四年とか五年かも知れないってこと?」
「うん」
「でも、同じ学校の生徒なのは確かなんだよね?」
「もしかしたら別の小学校の子かもしれない」
「でも学校を出たあたりでその子に話を聞いたってさっき言ってたよね?そしたら別の小学校の子ってことはあり得ないでしょ?」
確かにごく近くにもう一つ小学校はあるのだが、下校時間はそう違わないだろうし、二つの学校は徒歩で20分ぐらい離れているからだ。

このあたりでぼくの目も細くなる。息子がだんだん純白からグレー、そして黒へと変色していくように見える。あ、怪しい・・・。ぼくは詰めていくことにした。
「明日読み聞かせの活動日だから学校に行くけど、ついでに先生に訊いてみるよ?それでうちの小学校にいなければもう一個の小学校に電話して訊いてみる。いい?もしも嘘ついてるなら今のうちだよ。明日学校におれが行って先生に話したり、他の学校に電話したりすればもっと話が大きくなって、後からおれがいろんな人に謝って回らないといけなくなる。その段階で嘘だったことがわかったらブチ切れるからね!いい?」
「・・・」
「あのさ、おれも小さいころに嘘たくさんついたよ。それで話が大きくなって嘘だって言えなくなったこととかあったと思うから気持ちはわかるよ、うん。でもさ、どっかでバラさないといろんな人に迷惑かかるから、もし、白状するならほんとにこれが最後の最後のタイミングだよ。どうなの?」
息子はもうコーナーに追い詰められて死に体でファイティングポーズすら取れないボクサーのようだ。
「うそなんでしょ?」
ばつが悪そうにこくりとうなずく息子。
やっぱりか・・・。

その前に帰宅した妻にも「うそじゃないのね?」と何度も念を押されてたので、すっかり息子を信じていた妻に「やっぱあいつの嘘だった」と告げると、いたくショックだったようで(妻は正義感が強く、曲がったことが大嫌いの一本気な性格)泣きながら声を荒げて怒った。隣の家で同じ年頃の親子が仲良く風呂に入っている声がしていたが、急に静かになった。その後、妻は泣きながらA君のお母さんに電話で謝まっていた。

ごく近所なのでその場の流れで謝りに行こうとすると、Bは「Aには嘘のことは伏せてあるので本人に謝る必要はないです。」と言ってくれた。が、この騒動で向こうの両親は二日間ろくに眠れなかったそうで、本当に申し訳なかった。

最初から半信半疑で聞いていて「ベロチュウはないんじゃないかと思います」と言っていたBに「A君も親の知らないところで何してるかわからないし、嘘つくことだってあるんじゃない?」などと自分の息子が正しい前提で話していたことも、嘘つきだったのは自分の息子で完全に真逆な状況であったこも恥ずかしく申し訳なかった。

自分もよく話し相手を楽しませるために罪のない嘘をついたり、盛って話したりするからそういう悪影響を与えちゃってるのもあるんだろうなと反省。
よくぼくがスマホを見たり、テレビを見たりしながら息子の話を聞いている時、息子がぼくの顔色をチラチラとうかがっているのが目に入る。ぼくが彼との会話で楽しんでいるかどうかを気にしているのだ。

だから今度の嘘もぼくがびっくりしたり、笑ったりするのを面白がってエスカレートしたというのもあるのかもしれない。つまり、別に友達の悪い噂を流したくてついた嘘ではなくて、彼なりのサービス精神、エンタメ気質の結果だったのかなという解釈もできる。

親って自分の子が疑わしくても最後は味方になってあげないといけない存在だから、裏切られるのも覚悟の上で、その言葉はやっぱりこれからも基本的には信じてあげないといけないんだよなぁ(泣)。せめて早くばらしてよ。

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