私が実験動物から離れた理由

もうすぐ、3月も終わろうとしています。
新たな生活に飛び込んでいかなければならない4月が来ます。
しかし、新型コロナの影響で、世界中がパニックを起こしており、先行きは不透明です。
このような状況が早く好転することを願うばかりです。

さて、今回はいつもの動物実験を理解してもらおうという趣旨とは少し離れて、キャリア選択のひとつとして、備忘録として、私が実験動物から離れ、一般企業へと就職することについて話そうと思います。この記事を開いたあなたのキャリア選択の一助になれば幸いです。

まずは、簡単に自己紹介を。
私は大学のときから実験動物学を専攻しており、2020年に地方駅弁大学にて医学系修士を取得しました。4月より、実験動物とは全く関係ない一般企業にて働く予定です。

なぜ、大学のときから実験動物学を専攻し、修士の学位まで取得したにも関わらず、関係ない企業を選択したのか?

理由は、将来職を失う可能性が高いためです。

実験動物の使用匹数は年々減少しています。
それには多くの理由がありますが、最も大きな要因は科学技術の発達です。

現在、製薬会社内では動物実験はほとんど行われていません。

では、どのように創薬をするのか?というと、
先日の記事でも話した通り、過去の情報やデータを組み合わせることで、効果がありそうな化合物を導きだし、それを動物実験の受託会社へと流します。

今では、この新化合物 (新薬) 探索の技術が格段に進歩しており、動物実験につながる前に多くの化合物候補が削られています。
そのため、現在の製薬会社では探索研究が得意な研究員を多く集める風潮となっています。

そのような中で、自分は大学、大学院と実験動物を使って研究をしてきました。
また、実験動物技術者1級の資格も所持しており、動物の処置や取り扱いについては相当の自信を持っています。

しかしながら、私はこれまでに動物を使用しない実験をやったことがありません。

つまり、現在の製薬会社での研究員がやっていることを私は全く理解できません。本当にそんなことで創薬ができているのかさえ、私には半信半疑なのです。

既に、自分は製薬会社から必要とされておらず、現在持っている技術だけでは就職することができない (限られる) ため、専攻関係の就職に拘ると、動物実験の受託会社となります。

受託会社は実験動物使用数が減少している影響もあり、給料は他の一般企業と比べて少ないです。また、動物を生産・維持する必要性があるため、休日が少ないのも特徴です。

このような会社に就職したいと思いますか?
少なくとも私は就職したくないと思いました。

また、人工皮膚等の技術が発達したために動物実験をしなくなった化粧品会社が出てくる、社会の流れを私は肌で実感してきた年代でした。

今後、そのような技術革新による、更なる実験動物使用数の減少が起こる可能性があります。

もちろん、すぐに0になるとは考えられませんが、そう遠くない未来であると予見しています。
(犠牲になる動物が減ってほしいという希望的観測も混じっています)

そのようなことを考えると、会社の倒産や社員のリストラなどが発生するかもしれません。

このような理由から、私は専攻していた実験動物関連の就職はせず、一般企業へと就職しました。

実験動物学専攻の方や製薬会社へと就職したい方は
この自分のキャリア選択を少しでも参考にしていただけると幸いです。

もちろん、未来など想像の範疇に過ぎず、どうなっていくかなど全くわかりません。
そのような中で、自分が何をしたいのか、どのような世界に生きていたいのか、学生のうちにゆっくりと考える機会を作り、未来を切り開いていきましょう。

むこ

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