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#部活の思い出②~野球部の人~

私は野球部の人が苦手だった。

野球部の人はみんな坊主で、体格が良くて、いかつい。上級生になると尚更凄味が増す。
下ネタを大声で話す。予習や課題を全然やって来なくて、授業前に他の人のものを全部写す。
自分とは正反対な人達ばかりなので、クラスメイトでない限り関わらないようにしていた。もちろん嫌いじゃないのだけど、なんだか怖い。

しかし、私がクラス内でいじられキャラになりつつあった時、関わりを持ってしまうことは避けられない状況になった。野球部の人は他人をいじるのも、自信がいじられるのも何故か慣れている。そして同じ部員の中で広まる。最初はクラスメイトの野球部の人だけだったのに、気が付くと他のクラスの野球部の人にもいじられる様になっていた。
やっぱり怖かったけど、自分とは正反対のような存在である野球部の人と話すことができたのはちょっと嬉しかった。

この時期、「MAJOR」という野球漫画が流行っており、クラスでも貸し借りされていた。私も気にはなっていたが、すでに50巻以上出ていると聞いて、読みきれないだろうと諦めてしまった。けど、野球漫画を読んでみたいと思ってインターネットで探すと「おおきく振りかぶって」という漫画がヒットした。


こちらはそんなに巻数がなかったので、まだ追い付けそうだった。更にこの気になったタイミングでアニメ化も予定されていた。これは読むしかない!と思い1巻を買いに走った。

この「おお振り」のポイントはとにかく描写が細かい所。1つの試合に単行本4~5冊分あてがわれている。野球に興味を持ったけど、ルールを全く知らなかった私も試合の流れをしっかり理解する事ができた。物語序盤のハイライト、昨年度甲子園出場校との試合で逆転をした時、初めて漫画で鳥肌が立った。
描写が細かいのは日常も同様。試合以外は普通の高校生。クラスでの様子やテスト勉強までとてもリアルな日常が描かれている。これもまた野球部の日常について知ることができた。実在の野球部も朝練に始まり放課後も練習。土日は丸1日練習か試合で、テスト前の休みも他の部活より短い。そりゃあ課題や予習をする時間もないはずだ。強豪校ではないので、甲子園出場なんて夢の中の話かもしれない。それでも、自分の時間を野球に費やしていく。
「おお振り」を通じて「野球部の日常」を知り、関わりたくなかったはずの野球部の人達についてもっと知りたくなった。

その後「おお振り」はあっという間に最新巻まで揃えてしまい、次の巻を待つ日々が始まった。夏になり、甲子園が開幕する。それまで全く興味を持たなかったのに「熱闘!甲子園」で毎日結果をチェックした。決勝戦はドキドキしながら見ていた。
すっかり「高校野球」の世界にのめり込んでしまった結果、自分から野球部の人に話しかけるまでになってしまった。あんまり調子に乗ると後が怖いので、適度に距離を保ちつつ、色んな人に話かけた。特に部の中心になっている人と話すときは憧れの芸能人と話すような気分だった。今思い出すと恥ずかしいくらいの変貌ぶりだ。

高校を卒業すると「高校野球」の世界は過去のものになり、甲子園での試合を見ると懐かしい気持ちになる。全国にいるたくさんの球児が甲子園に立つために自分の時間を犠牲にして練習に励んでいる。どんなに年を取っても、彼らの姿は私に当時と同じような憧れを抱かせる。


私は野球部の人に憧れている。

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