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オランダメディアとCOVID-19についてのメモ

オランダでは、2月末にCOVID-19の感染者が初めて報告され、3月頭には外出制限や休校などの措置が速やかに行われました。以来、大手メディアも新興メディアもCOVID-19にまつわる報道一色です。

いくつかのメディアをウォッチしていると、個々の事象をつなぐ文脈を伝えたり、心が上向きになるニュースをまとめたり、試行錯誤しながらCOVID-19を報じていることが伺えます。気になったものを書き残していこうと思います。

De Correspondent

新興メディア「De Correspondent」は、「Corona in context」と題し、特定のテーマごとに記事やポッドキャスト、動画をキュレーションしています。

テーマは「これまでわかったこと、わかっていないこと」や「世界の政治や権力がどのように変化しているのか」「コロナが人や社会にどう影響するか」「コロナはメンタルヘルスにどう影響するのか」など。出来事の表層だけでなく、裏にある構造や背景を伝えようとする彼らの意思が伺えます。

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他メディアのコンテンツも積極的に紹介していました。TortoiseやNewYorkTimesなど、英語記事も翻訳して掲載しているようです。

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NOS

オランダの公共放送組織「NOS」のウェブサイトでは、2016年に発表した以下のニュースモデルを用いて、COVID-19の報道に向き合っています

このモデルでは、読者がニュースに求めているニーズを以下のような四象限で整理しています。

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縦軸:知る(weten) 理解する(snappen)
横軸:リラックス(ontspannen)力を尽くす(inspanne)です。
左上:経験する(Beleven)
ニュースを感じ、共有し、関与し、より深く理解したいというニーズ
左下:意見を形成する(Mening Vormen)
特定のトピックについて理解を深め、自らの思考を発展させたいというニーズ
右上:適用する(Toepassen)
生活のなかで選択をするために必要な情報を集めたいというニーズ
右下:追いかける(Bijblijven)
世の中に追いつきたい。何が起きているか知っておきたいというニーズ

NOSのオンラインチーフGerard de Kloet氏は、COVID-19の報道においては、右上(適用する)と右下(追いかける)のニーズだけでなく、左上(経験する)のニーズも増していると語っています。

そのニーズに応えるため、NOSでは個人のストーリーにフォーカスした特集を展開しています。「日常生活で経験していること(Ervaringen uit het dagelijks leven)」では人々の暮らしの変化を、「彼らはコロナ危機でも働き続ける(Zij werken door tijdens de coronacrisis)」では医療従事者やスーパーの従業員など、働く人々の姿を伝えていました。

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NU.nl

オンラインニュースサイト「NU.nl」は、「グッドなニュース(Goed Nieuws)」と題し、前向きなニュースをまとめた記事を毎日公開しています。パンダの妊娠やシマウマとロバの交雑種の誕生から、集中治療室に入院中の患者の減少まで、幅広いグッドニュースが掲載されています。

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https://www.nu.nl/coronavirus/6044618/goed-nieuws-zeldzame-zezel-geboren-carre-acrobate-kan-weer-lopen.html

編集長のGert-Jaap Hoekman氏は「ヘビーなメッセージの合間にあたたかいメッセージを届けることは、読み手や編集者の気持ちを前向きにする」と、意図を語っていました。

COVID-19に特化した期間限定コンテンツ

COVID-19に特化したポッドキャストやニュースレターを始める例もあります。ジャーナリストのElger van der Wel氏は、こうしたメディアをポップアップメディア(pop-upmedia)と呼び、いくつか事例を紹介していました

例えば、オランダの公共ラジオ局「NPO Radio 1」は既存のポッドキャスト番組「De Dag」をコロナウィルスにフォーカスした形でリニューアル。国内外のCOVID-19にまつわる動きを紹介しています。同放送局のポッドキャストリスナーは減っている一方、De Dagのリスナーは増加しているそうです。

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人気インディペンデントポッドキャスト番組「man met de microfoon」も番組名を「Lock Down」に変更しました。緊急治療室で働く人や、ソーシャルディスタンシングを守らないサイクリストに注意したい人、リモートで一緒に映画を楽しむTipsを紹介したい人など、幅広い市民のストーリーを届けています。

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COVID-19を報じるメディアやジャーナリスト向けのツール

COVID-19を報じるジャーナリストに向けたツールも登場しています。

例えば、記事の背景情報をブロックで表示するツールを開発する「NewsChain」は、政府のCOVID-19情報を埋め込むためのコードを無償で配布しています

各ブロックのクリック率や読了率も計測できるようです。ファウンダーのVan de GriendtはSVDJのインタビューで「COVID-19のブロックは80-90%の読者が開封し、読んでいる。背景情報のニーズがいかに高いかが伺える」と話しています

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今後もCOVID-19をオランダのメディアがどう報じていくのか、気になった動きがあれば随時足していこうと思います🙋‍♀️


最後まで読んでいただきありがとうござました!