ヨシコ

趣味で小説書いたりしてる。たまに好きな本とか映画についてテンション上げて語り出す。 ね…

ヨシコ

趣味で小説書いたりしてる。たまに好きな本とか映画についてテンション上げて語り出す。 ねこねこ目食パン科鳥派属。主な生息地域はカクヨム島。事情に応じてちょっとだけ移動することもある。

マガジン

  • 【小説】黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる【全22話】

    王太子主催の夜会で起こった侯爵の服毒死。早々に自殺と断定する王太子に、黒衣を纏う伯爵令嬢、ヴィクトリア・リデルは打算に満ちた異論の声をあげる。 「いいえ、自殺ではありません」 父の急死と共に王家に返上された爵位を取り戻したいヴィクトリア。突き付けられた条件は、事件の真相解明と、ヴィクトリアの結婚相手を連れてくること。 冷酷な王太子、商会を牛耳る最高顧問、幼馴染の騎士と忠実なる侍女(仮)を巻き込み、ヴィクトリアの思考と弁舌が冴え渡る。 西洋の宮廷を舞台にした、ミステリー×パワーゲーム×逆ハー(風味)のヒストリカル・ストーリー。 ※カクヨムにも掲載しています。

  • 【小説】カンヴァスの神さまと夜の女神【全17話】

    才能に恵まれていないと理解しつつも、絵を描くことを止められない姫宮夜子。 天才と持て囃され画家として名を売りつつも、義姉の夜子に執着的な想いを寄せる姫宮瑠衣。 瑠衣の才能を羨み、瑠衣を受け入れられない夜子と、その嫉妬を理解し、受け入れられることはないと知っている瑠衣。 大切にできない、噛み合わない、迷ってばかりの二人が行きつくのは奇跡の夜に、二人は何を語るのか。 夜子と瑠衣、二人それぞれの視点でおくる、カンヴァスの神様に捧げるラブストーリー。 ※カクヨムにも掲載しています。

記事一覧

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(目次)

全22話 王太子殿下は冷酷無情 (1)1-1 https://note.com/mujiyoshiko_neo/n/nb050f1c48e46 (2)1-2 https://note.com/mujiyoshiko_neo/n/n2d11864f17c7 (3)1-3 …

ヨシコ
3か月前
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黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(22)

お茶会裁判7-5 「もったいないお言葉です」  いつの間にか、王太子の傍らに紙とペンを携えた従僕が控えていた。 「二つ、確認したい。私の個人的な興味からくる質問だ…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(21)

お茶会裁判7-4  テーブルの下で、いつの間にか握り締めていた黒いドレスを掌でひと撫でした。  まだ油断はできないが、ひとつの大きな山場を越えた。 「では、もうひと…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(20)

お茶会裁判7-3  これでダメなら最初に言った通り、隣で気配を消している従兄に婚約でもなんでもしてもらうしかない。  永遠とも思える僅かな時間の沈黙の末に、セオフ…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(19)

お茶会裁判7-2 「で? ヴィクトリア嬢、二つ目の条件はその男でいいのか?」  出された紅茶を無感動に飲んだ王太子が、副社長とはまた違った意味で身を強張らせている…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(18)

お茶会裁判7-1  王宮に到着すると、ヴィクトリアとダンテは宮廷内のティールームへと通された。  中庭を臨む明るい室内に置かれた長いテーブルは、糊の効いた真っ白のク…

ヨシコ
3か月前
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黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(17)

秘密の真相6-3  虚栄心ばかり強く、権力に固執し、他者を見下している者は、往々にして物事の本質を正しく捉えることができない。  副社長は、リデル伯爵家の未亡人を…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(16)

秘密の真相6-2  王妹殿下の降嫁については、政治的な駆け引きとは無縁の、もう少し情に寄った話だったりする。  つまるところ、侯爵家の次男と王女のごく個人的な関係の…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(15)

秘密の真相6-1  一週間前、王太子から今現在のリデル家にはそぐわない、かしこまった招待状を受け取った。  ちょうど約束のひと月が経つ、本日午後のティータイムへの招…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(14)

赤い薔薇の女王さま5-2  知らせを受けて滞在を切り上げ、急いで戻った頃には父は棺の中だった。  さらには、ヴァンホー商会はラトウィッジ海運との取引ごとまとめて他…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(13)

赤い薔薇の女王さま5-1  嵐の前のような静けさの中、ひと月は瞬く間に過ぎ去っていった。  少し物足りない紅茶を飲みながら、ヴィクトリアはじっと忠実な従者の帰りを待…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(12)

擬装従者は身を尽くす4-2  うやうやしく手紙を受け取るヘンリエッタの手は、ヴィクトリアのものより大きく指も長い。  路上の片隅で、世の中の全てを恨んで淀んだ眼をし…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(11)

擬装従者は身を尽くす4-1  王太子が設けた期限はひと月。  第一に、事件の首謀者を詳らかにし、その証拠ないし首謀者の自供を引き出す。  第二に、婚約者及びそれに準…

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3か月前
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黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(10)

最高顧問はとても黒幕3-3  副社長が完全に去るのを待って、セオフィラスがやはり芝居がかった振る舞いで椅子に腰かけた。  長い脚を組むその姿はまるで舞台に立つ役者の…

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3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(9)

最高顧問はとても黒幕3-2  カカオの苦みが舌の上を通過し喉を通っていく。  目の前のこの尊大な人物は、キャロル侯爵に見出された商人の父親、その後釜に強引に、運よ…

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3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(8)

最高顧問はとても黒幕3-1  マクミラン商会が本社としている建物は王都の一等地にある、王城に次ぐ立派な建物である。  その目が眩むほど豪奢な建物に足を踏み入れたヴィ…

ヨシコ
3か月前

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(目次)

全22話 王太子殿下は冷酷無情 (1)1-1 https://note.com/mujiyoshiko_neo/n/nb050f1c48e46 (2)1-2 https://note.com/mujiyoshiko_neo/n/n2d11864f17c7 (3)1-3 https://note.com/mujiyoshiko_neo/n/nf7d7fa1dbad7 近衛騎士は誠実でヘタレ (4)2-1 https://note.com/mujiyoshiko_ne

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(22)

お茶会裁判7-5 「もったいないお言葉です」  いつの間にか、王太子の傍らに紙とペンを携えた従僕が控えていた。 「二つ、確認したい。私の個人的な興味からくる質問だ」  頬杖をつく王太子の前に、紙とペンとが並べられていく。ヴィクトリアは居住まいを正した。 「なんなりと」 「爵位には義務と責任が付きまとう。自由とは対極にあるものだ。お前にとっては爵位など、足枷にしかならないのではないか?」  王太子のその言葉には、ひと月前のような揶揄する響きも、侮るような色もない。

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(21)

お茶会裁判7-4  テーブルの下で、いつの間にか握り締めていた黒いドレスを掌でひと撫でした。  まだ油断はできないが、ひとつの大きな山場を越えた。 「では、もうひとつ。この事件の首謀者を詳らかにし、証拠ないし自白を引き出す、について」 「ああ、その前に」  王太子が声を上げ、ヴィクトリアの言葉を遮った。その視線が、ひたすらに気配を消していたダンテを見る。 「そこの近衛騎士。近衛騎士だな。見覚えがある」  騎士として呼ばれたらしいダンテは、明らかに考えるより早く、恐

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(20)

お茶会裁判7-3  これでダメなら最初に言った通り、隣で気配を消している従兄に婚約でもなんでもしてもらうしかない。  永遠とも思える僅かな時間の沈黙の末に、セオフィラスが顔を伏せ再び肩を揺らした。声もなく笑うその姿を、ヴィクトリアはじっと見つめる。  そして、セオフィラスが顔を上げた。  ヴィクトリアの顔をひたと見据えるその表情は、僅かな一瞬、底冷えするような凶暴さを滲ませているような気がした。セオフィラスのその表情に、ヴィクトリアは思わず内心で息を呑む。 「なんてこ

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(19)

お茶会裁判7-2 「で? ヴィクトリア嬢、二つ目の条件はその男でいいのか?」  出された紅茶を無感動に飲んだ王太子が、副社長とはまた違った意味で身を強張らせているダンテをちらりと見た。  ヴィクトリアもカップに手を伸ばし、その鼻孔をくすぐる芳醇な香りに心を落ち着ける。 「今しばらく、考える時間をいただけますでしょうか」  持ち上げたカップの中、湯気と香りに包まれた琥珀色の水面に映るのは、平静を保っている自分の顔。 「かねてより情熱的な愛を育んでいる間柄ではありますが

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(18)

お茶会裁判7-1  王宮に到着すると、ヴィクトリアとダンテは宮廷内のティールームへと通された。  中庭を臨む明るい室内に置かれた長いテーブルは、糊の効いた真っ白のクロスが掛けられ、花と共にセッティングがされている。  奥の席には王太子のための空席。その王太子に近い場所に、ヴィクトリアの席が用意されていた。  そして、その向かいの席には当然のようにセオフィラス・キャロルが座っている。  つまらなそうに頬杖をついていたセオフィラスは、ヴィクトリアを目にした瞬間花開く様な鮮や

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(17)

秘密の真相6-3  虚栄心ばかり強く、権力に固執し、他者を見下している者は、往々にして物事の本質を正しく捉えることができない。  副社長は、リデル伯爵家の未亡人を、娘のヴィクトリアを、世間知らずの女に過ぎないと侮ったのだろう。  そして、あのラトウィッジ海運を。  あの人たちは、取引相手をしっかりと見定める。たとえそれまでの取引があろうとも、そんなことは関係ないのだ。  ヴァンホー商会を手に入れた程度で、副社長の相手などしてくれるほど容易くはない。 「もし、副社長が事

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(16)

秘密の真相6-2  王妹殿下の降嫁については、政治的な駆け引きとは無縁の、もう少し情に寄った話だったりする。  つまるところ、侯爵家の次男と王女のごく個人的な関係の末の、恋愛結婚だったのである。少なくとも、そうであるとされている。  ヴィクトリアにとっても、一応は伯母に当たる。元王族のセオフィラスの母。  もちろん面識はあるが、まあなんというか、いかにもセオフィラスの母親、という人物である。恋心などという不確かなもので、自身の行く末を定めるような人には見えない、というのが

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(15)

秘密の真相6-1  一週間前、王太子から今現在のリデル家にはそぐわない、かしこまった招待状を受け取った。  ちょうど約束のひと月が経つ、本日午後のティータイムへの招待状である。  同伴者も一緒に、という但し書きから読み取れた何かは、恐らく気のせいではないだろう。  王宮へと向かう馬車の中。いつかと同じように、ダンテと二人で向かい合っている。  あの時の御者役はヘンリエッタが務めていたが、今は違う。でもきっと大丈夫。まだ時間はある。それに、ヴィクトリアは自らの従者を信じてい

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(14)

赤い薔薇の女王さま5-2  知らせを受けて滞在を切り上げ、急いで戻った頃には父は棺の中だった。  さらには、ヴァンホー商会はラトウィッジ海運との取引ごとまとめて他人の手に渡っていて、爵位すらも取り上げられていた。  リデル伯爵は急死。一人娘の不在については「隣国で行方知れず」などという、どこから出てきたのかも定かではない、曲解された、馬鹿げた噂が一人歩きをしていたせいで。  帝国は遠く、隣国とはいえどんなに急いでも片道半月はかかる。ヴィクトリアの元に知らせが届くまでに半

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(13)

赤い薔薇の女王さま5-1  嵐の前のような静けさの中、ひと月は瞬く間に過ぎ去っていった。  少し物足りない紅茶を飲みながら、ヴィクトリアはじっと忠実な従者の帰りを待ち続けた。  ここ最近連日しとしとと降り続ける雨が王都を濡らし、立ち込める暗い雲が気分をも塞ぐ。  王太子と約束したひと月が経った今日、ヴィクトリアは王都の外れに在る墓地にやって来た。  霧のように降る雨に傘は差さずにいるが、時間が経つにつれ少し冷えを感じる。その冷えと相まって、濡れた芝の鮮やかな緑の中で、等間

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(12)

擬装従者は身を尽くす4-2  うやうやしく手紙を受け取るヘンリエッタの手は、ヴィクトリアのものより大きく指も長い。  路上の片隅で、世の中の全てを恨んで淀んだ眼をしてヴィクトリアを見上げたあの頃よりも、ずっと大きくなった。  大きく、頼もしく、誰よりも信頼に足る無二の従者となった。  ヴィクトリアはこの従者の献身を信じている。  ヘンリエッタになら、この手紙も、リデル家の行く末も、全てを託すことができる。  手紙だけでは足りないことがあるかもしれないが、ヴィクトリア自ら

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(11)

擬装従者は身を尽くす4-1  王太子が設けた期限はひと月。  第一に、事件の首謀者を詳らかにし、その証拠ないし首謀者の自供を引き出す。  第二に、婚約者及びそれに準ずる者を用意する。  王太子が戯れのように付け足した「隠し子のようなもの」は存在しないので、それについては論外である。  出された二つ目の条件、婚約者について、正直に言えば少しも気が進まない。  ヴィクトリアとて貴族の娘である。爵位を継ぐ、その先に後継という問題があることについてはわかっているし、いつか伴侶を迎

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(10)

最高顧問はとても黒幕3-3  副社長が完全に去るのを待って、セオフィラスがやはり芝居がかった振る舞いで椅子に腰かけた。  長い脚を組むその姿はまるで舞台に立つ役者のようだ。  ちなみにダンテはカップの中の甘い液体を飲み干したせいか、ややげんなりとした様子を見せている。  本日三杯目となる甘い飲み物だけのせいではないかもしれないが。 「さて、ヴィクトリア。ぼくに用事があるんだって? 何かな。婚約者にご指名とあらばこのまま教会へ行くでも構わないけど?」  冗談めいた口調で

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(9)

最高顧問はとても黒幕3-2  カカオの苦みが舌の上を通過し喉を通っていく。  目の前のこの尊大な人物は、キャロル侯爵に見出された商人の父親、その後釜に強引に、運よく収まっているだけの俗物である。父親の威光を自らの功績と勘違いして偉そうにしているだけ。  先代の副社長についてはヴィクトリアも多少面識がある。いつも柔らかい物腰の謙虚な好人物で、それでいて抜け目のない優れた商人であったと記憶している。  どうやらその思慮深さを継ぐ事ができなかったらしい息子は、親の威光ぐらいし

黒衣の令嬢は薔薇の色を塗りかえる(8)

最高顧問はとても黒幕3-1  マクミラン商会が本社としている建物は王都の一等地にある、王城に次ぐ立派な建物である。  その目が眩むほど豪奢な建物に足を踏み入れたヴィクトリアたち三人は、特に約束を取り付けていたわけでもないにもかかわらず、明らかに常用ではなさそうな建物の奥、貴賓用らしき応接室に通された。  マクミラン商会は、この国の流通、その大半を一手に握る商社である。  社長を始めとした役員の他、名ばかりのものも含めキャロル侯爵家及びドッドソン侯爵家に連なる者が席を埋めて