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レ◯プ未遂に遭ってしまい、鬱発症で休職4か月目 その②精神科編

男が帰った後、私は居間のソファに仰向けに倒れ込んだ。
涙がじんわりと溢れてきて、こんな経験は必要なかった…!と何度も強く思った。
時計を見たら11時頃だったと思う。その日は16時から眼科の予約が入っていた。私はヨシ!と意を決して起き上がった。負けてたまるか。こんな事で。
洗面所で口元を洗う。男の唾液が付着していて気持ち悪かった。
シャワーも浴びたかったが、ちゃんといつものジョギングを済ませてからにしたかった。休日の習慣は崩したくない。スポーツウェアに着替えて、外に出た。

走りながらまた泣けてきた。何で私はいつもいつもこんな目にばかり遭うんだろう。何で最初に男に付け入る隙を与えてしまったんだろう。何で止められなかったんだろうと自責の念が止まらなかった。走る毎に涙がどんどん出てきて、目標の半分以下の2キロを過ぎた辺りで、ついに走れなくなった。帰ろう。身体が拒否している。

またソファに寝転がり泣きながら呆然としていた。今日は眼科に行ってる場合じゃないかも、大きい病院の精神科の緊急の診察室に行こうと思った。眼科をキャンセルしシャワーを浴びて、重い身体を引きずってのろのろと精神科に向かった。

1時間ほどでその病院に着いた。ここは予約は要らないが、診察が終わるまでに最低4時間は滞在しなければいけない。
受付の看護士に、「今朝工事の男にレイプされかけて、ちょっと精神状態が不安なので診察を受けたい。」と言うと、「交通機関使って、自力でここまで来たのですか?」と聞かれた。
まるで自分一人で来れたなら大したことないからと断られそうな気がして焦ったが、ちゃんと受付は済んで待合室に入れた。20人くらい人がいた。

ここには以前にも一度来た事がある。待合室の風景は外の世界とは全く違う。全身タトゥーの薬中っぽい入院患者が一人で騒いでいるのを除けば、大半の人は虚ろな目でグッタリとしていた。怒って看護士に怒鳴ったり、苛々している人や、ずっと手が震えている女性もいた。付き添いの人だけが背筋を伸ばし微笑を湛え、外の世界の明るい波動にも溶け込める特別な存在で、この待合室の風景から浮いて見える。
私は机に突っ伏して、みんなと同じ虚ろな目で周りの人を見ていた。何で皆ここに来たのかな?私もまたここに来る羽目になってしまった。考えるのも疲れて、机の模様を眺めながら無心で待っていると看護士に呼ばれた。

待合室の隅で、一回目の問診。優しく私に色々質問し、ノートパソコンに打ち込む。自分の身に起きた事をようやく誰かに話せた事に少しホッとした。
そこから2時間程待って、次は精神科医に呼ばれ個室で1対1で話した。今日会った被害と過去の虐待の話、診断を受けた複雑性PTSDの事、毎日苦しんでいる不安障害の症状と、この一年は変な男達に言い寄られたり触られたりした苦痛が頻繁にフラッシュバックし、生活がままならない事を話した。
先生は優しく熱心に話を聞いてくれた。フリーズは自然な反応で、今日被害に遭った私は何も悪くないと言ってくれた。
嫌なのに変な男達に触られたりするのを怖くて拒絶できないのも、虐待のトラウマによるものだろうと。自分の身体は、自分が嫌な相手には触らせない権利が誰にでもあるんだよと教えてくれた。
40分くらいの診察。辛い時に飲んでねと4粒だけ薬を処方してくれ、市の福祉の施設で無料で精神科の治療が続けられるよう紹介状を書いてくれた。
来て良かった。一人で抱え込まずちゃんとプロの方二人に話せて言葉を掛けてもらえたので、これで自分は壊れてしまう事はないはずと少し安心できた。

外に出るともう真っ暗だった。
こんな日にとても料理する気になれないので、二駅先で降りて、大きなイタリアンレストランに行った。味に定評があるインテリアが素敵なお店で、満席だったが運良く座れた。自分を甘やかさねば。今日くらいは好きなものなんでも注文しよう。と思っていたのに、選ぶ段階で頭が疲れて食欲もなくなった。ぼんやりしながら窯焼きピザをもそもそ食べつつ周りの人を見るともなく見ていた。何かデザートも食べようかと思ったが、やはり選ぶのが面倒臭くてやめた。

薬を病院でもらったのを思い出して帰り道に飲んだら、アルコールを飲んだみたいに頭だけが急にフワッとなった。アトラックスというアレルギーの薬だけど、不安を和らげ入眠効果が高いそうだ。
おかげで帰ってすぐに深い眠りに落ちた。

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