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虐待サバイバーの宿命?その②トラウマの再演

虐待のトラウマ治療を進める中で治療者に教わったのが、これが【トラウマの再演】と呼ばれるものだという事です。以下は治療者に教わったことの覚書です。

小さい頃に私が父親にされた性的な事や流血を伴う激し目の暴力行為は、瞬間冷凍されトラウマ記憶として、何も感じないように私の内側のどこか奥の方に仕舞われていたんだそうです。

外敵に襲われ「死ぬかもしれない」と思った時は、動物も同じようにフリーズし、死んだふりをするそうで、これは生命の本能だそうです。

逃げるか、闘うか、フリーズか。
生命の危険に遭遇した時、本能はこの3パターンのどれかの行動を起こすそうです。

児童虐待の場合、子供は養育者とは闘えないし逃げられないという事を知っています。
本能的にすべての子供は親を愛するように出来ているそうです。
生存権が親にあるので、生物としてそのようにプログラムされ生まれてきます。
なので自分の生死を握る親が、死ぬかもしれないと思わせる程の暴力を自分に振るう事は、到底受け入れられません。
そこで脳が自動で瞬時に感情をシャットダウンさせる指令を出し、トラウマ記憶にして一端凍らせて保管する事で、自殺や重度の鬱を防いで生き延びさせるそうです。

確かに治療をするその日まで、殴られるシーンなどを思い返しても、情景は思い出せるのに、不思議なほど一切何の感情も湧きませんでした。
子供の頃に怪我になるレベルの暴行を受けた時も、本当に見事に固まってしまい、感情は消えました。

理不尽な暴言系は、当時も今も思い出すと怒りが湧いたりして、直接的な生き辛さにつながっていると感じていたので、言葉の暴力の方が私には余程辛い事だったのだと思ってきました。

しかし氷漬けにされたトラウマ記憶というのは、大人になってからある時に溶けて出てくるそうです。40歳を超えてからドッと出てくる事が多いと何かで読みました。
辛い過去を受け入れる精神的な余裕が出てくるから説や、記憶が出てくるのを防いでくれていたエネルギーが、疲労で弱まるからなどの説を見ました。

まぁその前でも、トラウマ記憶は感じないとはいえ、処理されないままに潜在意識にしっかりと書き込まれているので、色々な所で出現して来る様です。

潜在意識は、父親とは別の気味の悪い男たち(または暴力男たち)との代替行為よって、同じ被害を繰り返し体験したい。その目的は、大人になったので今度こそ過去の試練を乗り越えたいとか、昔の辛い体験は実はそんなに大した事ではないと思いたいとか、そんな事みたいです。
私は5歳の時に、母が父に殴られて泣いているのも見たので、母の課題も背負ってしまった所があるかもしれません。

トラウマの再演は、本人の意識や努力、周りの助言などでは止められず、成人してからも同じような内容の被害に繰り返し遭い、複雑性PTSDの度合いを深めやすいんだそうです。

私は7年前に不安症になる前は、【辛い目に遭う度に乗り越える強い私】を自負していました。昭和の根性論で自分を奮い立たせ、性格も別人の様でした。

そして自傷行為としか思えないような、良くない恋愛や別れによる鬱を繰り返し、傷を重ね、深めてばかりいました。
隙あらば浮気しようとして私の見捨てられ不安を爆発させてくれる様なトキシックな人、無職でヒモ同然でしかも鬱、親と死別や片親など、私と同じように何かしら生い立ちに問題がある人としかご縁がなく、しかも17歳のころからずっと恋愛依存症でした。
自分の性格が悪いせい、男運が悪いせい、前世で悪事を働いたせい、と自分を責めるのも常にセットでした。

治療を終えてみて思うのは、自分でトラウマの再演を止めるのはまず無理なので、早く専門家に掛かれば良かったという事です。
トラウマ記憶を解放するのは、一人では危険な場合もあります。

私は今年に入ってから専門家の下で、虐待のトラウマ記憶を外に出し書き換える『EMDR』という眼球運動による治療を受けていました。

治療に当たってくれた女性は、日本語はできないので、私は母国語を全く使えなかったのに、私の言葉の行間における細かいニュアンスまでを完璧に分かってくれる方で、知識も経験も豊富で、本当に信頼がおける方でした。

おかげでトラウマ記憶の多くを過去の物にでき克服したと思っていたんですが、まだまだ完治ではなかったようです。

でも自分でもハッキリわかる位に良くなっています。

今年の春からは別の業種に無事に転職をし、以前の恐ろしい会社での辛い肉体労働から無事に逃げ出しました。(去年の夏にプレッシャーから仕事中にパニック発作が出たので、心療内科の門を叩くことになりました。)

現職は心身共に前よりはずっと楽だし、一通りの治療も済んだので、もう大丈夫だと思いたかったけど、焦りは禁物です。

ゆっくりと自分でできるケアを続けようと思います。


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