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「積極的な撤退」をさせる学年経営を

学級崩壊したら、立て直せない

今年は学年主任。ここまで学年部の先生たちとコミュニケーションをとりながらやってきた。でも、いろいろなことで相談を受ける。やっぱり多いのは、子どもへの指導について。

「○○君が言うことをきかない」
「どうやって接したらいいか分からない」

そんな中、ゴールデンウィーク前には、一つのクラスが学級崩壊しかけた。自分は学年主任として、何ができるのだろう。何ができたのだろう。って考えていた時に、大好きな中村健一先生の『ブラックシリーズ』が刊行された。


本書の最大の学びは「学級崩壊したら立て直せない」だった。そして、学級崩壊は、運」とまで言い切っている。学級崩壊させないために様々なネタや予防策を打ち出していた中村先生だけに、このスタンスには疑問をもった。

でも、読み進めていくうちに晴れていく。

来年度も教師として戦うために、今年度は「積極的な撤退」をしよう。

1年間を生き抜く。そして、来るべき自分の生きやすい1年間で実力を発揮する。そうやって教師を救いたい。そんな思いが本のあちこちからにじみ出ている。そこで自分にできる「積極的な撤退」の手助けを考えた。

①声をかける

崩壊学級担任は、孤独だ。誠実だから、自分を責める。

「この仕事に向いていない」
「職員室にいる先生方も、自分はできないやつだと思っているに違いない」
「もう辞めたい」

そうやって、自分を責めているに違いない。実際、僕もそうだった。狭い市内では、だれもが自分の失敗を知っていて、みんなが自分を責めたり笑ったりしている。そう思っていた。

だからこそ、職員室をホームにする。崩壊学級担任に声をかけて、味方になる。いざというときに力になったり話し相手になったりする。たまには、飲みにも行く。特に学年部は特別扱いをする。そうやって、コミュニケーションをとっておくことで、何かあった時に、気軽に相談できる人でありたい。

②子どもや学校と距離をとらせる

ただでさえ日々の学校生活でくたくたなのに、崩壊学級担任ともなればなおさらだ。でも、崩壊学級ではトラブルが頻発するもんだから、なかなか帰ることができない。

授業の準備をしないと明日が心配だから、慎重に準備をする。使う道具や話す言葉によってはさらなるトラブルを生むだろうから、慎重になる。

ここで思い出したことがある。僕のクラスが崩壊していたころ、教室でリンゴを一個ずつ配ることになった。学校に地域の方が親切にもリンゴをくださったからだ。

これをそのまま配ると「○○の方が大きい!」「ひいきだ!!!」とトラブルの種をまくことになる。そこで、くじ引きをすることにした。そうすれば、自分のくじ運のせいになる。

しかし、これでも不安はぬぐえない。次は、くじを引く順番のせいにするかもしれない。そこで、「【リンゴをもらう順番を決めるくじ】を引く順番を決めるくじ引き」をすることにした。そうして、ようやく一人一個のリンゴを渡すことができたのだ。

崩壊学級では、ここまで準備しないといけない。でも、それらすべてを担任が請け負う必要はない。学年部でできることは学年部でやればいい。学年部でやろうとしていたことでも、途中でやめたらいい。

例えば、ろうかの掃除。学年部で協力してきれいにするのはいいんだけど、崩壊学級担任が他の先生に任せるのは申し訳ないと早く来てやっている、という話を聞いたことがある。そんなのやめるか「自分たちでやるから、休んでいてよ!!」って声を掛けたらいい。

とにかく、しっかりと休んでもらって「積極的な撤退」に備えてた力を温存しておいてほしいものだ。

③自分のために頑張る

この本の中に、こんなフレーズがある。

崩壊学級担任を辞めさせなければ、自分が傷つかなくて済む

ある日突然、隣の教室の担任の先生が辞めてしまったらどうだろう。一緒にやってきたのに、それを救えなかった。そんな経験はしたくない。きっと、ずっと引きずってしまう。

本当に、自分は関係ないのか?自分の「せい」ではないのか?

よかれと思ってアドバイスしたことが、かえって追い詰めることもあるだろう。きっと、自分が至らないのは本人だってわかっている。何がだめだったのかも考えている。それが当たっていなくても、もう十分すぎるくらいに自分を責めている。

そんな中で、助けることもせず、良かれと思ってアドバイスをしてもなかなか入っていかないし、追い詰めることになる。それよりか「ここまで戦ってきたこと」を認め、これからに向けて励ますことが大切なんだろう。

自分は、こうやって本を読む教師だ。教育技術や学級経営なんかに興味がある。学んでいると思う。だからこそ、至らなさが目に付く。ついついそれを指摘したくなる。知識をひけらかしたくなる。いや、ひけらかしたのかもしれない。

あくまでも相手目線で考えれば、それがどれだけしんどいことなのかは想像がつく。自分が傷つかないように、認めて励ましていきたい。

おわりに

ここまでは自分のフィルターを通してのかかわり方などを考えてきた。ただ、この本には姉妹版がある。

こちらには、実際に学級崩壊した経験をもつ教師たちが、「してもらってよかったこと」「してほしくなかったこと」を書いている。だから、よりリアルな声が集まっている。併せて読むと、より理解が深まる。


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