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屋根裏ネズミ、Tidaの定番メニュー沖縄そばの深みを知る…の巻 (「人間」です!Tidaにネズミはいないから心配しないで!)


Tidaはいろいろおいしいんだけど、やっぱり沖縄そば、いいよね、定期的に食べたくなる。

と、しか思っていなかったのです。そもそも私は、沖縄そばをよく知らない。というか、沖縄よく知らない。行ったことない。なので、「沖縄そばです」といって出されたものは、ああこれなのですね、と受け入れるだけ。ところが、この前お客さん相手に、オーナーのトシさんが、いつもの調子で、つまり、てっらてらの太陽のようなでっかい笑顔とでっかい声で、次々と知られざる驚愕のコダワリを話し出したものだから、私は開いた口が塞がらなかったのです。

「ダシねー、焼きアゴでとってるんすよー!」
九州で博多ラーメン作っていた時があったのですって。え、そうなの?いや、トシさんのこと何も知らないけど。キュウシュウ、ハカタ、ラーメン――知りませんでした。いや、沖縄ベースで、あとはブラジル要素を加えてる、くらいしか思っていませんでした。
話を戻すと、スープの作り方には、その頃の経験を応用しているそう。しかも、博多でなく、長崎で使われる出汁の使い方をアレンジしているって。つまり、焼きアゴを使う。確かにアゴっておいしいよね。深みのある味はアゴ使ってるからですよ、って、なるほどです。
沖縄料理は、基本、カツオなんですって。鰹出汁。だけど、そこに焼きアゴを入れてみようと思った、そして、その焼きアゴは、ちょっと通常の手段では手に入らないのだそう。まだまだ謎が隠れています。とにかく、そのおかげで、あの独特の深みのあるスープの味ができあがっているのですね。

「あとねー、
博多ラーメンやってたときにもう一つ参考にしたのがね、清湯(ちんたん)スープっていうね、そのスープのとりかたも取り入れてる!」
材料だけでなく、方法もうまく取り入れて、おいしさを追求しているわけですか。

ところで、博多ラーメンといったら、豚骨なわけですが、さすがに沖縄そばに豚骨はないよね、と思ったら、そこで切り分けているわけでもないみたいです。
「豚骨でもいけるんだけどー、あえて試してないのは、まあ、そばの専門店やっているわけじゃないからさ……でも悪くないかな。アク出るから大変なんだけどねー、
そう言いつつ、トシさんは宙を眺めます。そして、頭の中で味の足し算、でなく、かけ算をしたのち、
「うん、でも今度やってみるよ。質は上げていくよ!」
ですって。
トシさんの頭の中は、味の実験室みたいです。いい味に出合ったら見逃さない。そして、それはトシさんのやること全てにつながる「やってみよー」精神なのです。

とにかく「飲んでも食べれる」をテーマに、10年まえから「こっさり」(コクがあるけどあっさりしている)をスタンスにやってきているとのこと。
「今はいろんなところで使われている言葉だけどね、実はオレずっと使ってる。これがテーマ。」
飲み干せるスープにしたのですって。……あ、私も毎回最後の一滴まで飲み干すのだけど、これは、トシさんがそういうスープにしていたからなのですね!

ということで、スープすごいんですが、とにかく麺。麺を語らずにTidaの沖縄そばは語れません。というか、麺だけ語ればいいじゃん、というくらい麺にコダワリがつまってる。かみかみするたびに、小麦が香り、汁の味がからまってやたらうまい。トシさん手作りのこーれーぐーすをかけると、さらにうまさが際立って、うつわが空っぽになるまで、とにかく、
うまい、うまい、うまいが続きます。

Tidaの沖縄そばに使われている麺は、石川で小麦から作っている、麺を心から愛するモリカワさんの渾身の作です。ひと噛みごとに小麦の味がして、ばよんばよんと弾力をはなちながら、口のなかで存在感を主張します。育ちが良くて本性がやんちゃな麺、という感じ。

麺とスープの相性ってとても大切で、沖縄そばに使う麺としては幾つかのチョイスがあるそうです。沖縄では地域によって、麺の種類が違うのだそう。名護、山原は平麺。南部は中太ちぢれ麺。そして、離島はまた別のバリエーション。

Tidaの沖縄そばに関しては、ストレート麺というチョイスもあったけど、ここは中太ちぢれ麺。スープとなじむからだそうです。中太ちぢれの、生麺。通常、沖縄はゆで麺なので、ここもアレンジ部分なのです。
ちなみに、Tidaの沖縄そばには、汁そばと焼きそばがありますが、(そしてここまで、汁そばの話をしていますが、)焼きそばも人気のひと品。焼きそばのときって、麺のモチモチ感が人気なのだそうです。このモチモチ感、実はモリカワさんの麺て、さぬきうどんを参考にしていて、その製法を取り入れているからなんですって。この時点で、もう、沖縄、福岡、長崎、石川、香川が入っている。沖縄そばという名の、キメラな奇跡。

モリカワさんの麺に出会うきっかけは、向こうからやってきたのらしいです。
トシさんがこだわりのスープをおいしく食べて飲んでもらえる麺を探していた折、その頃トシさんが働いていた代々木の沖縄料理店に、モリカワさんが麺を持って会いに来られたんですって。それは、モリカワさんもカポエイラをやっていて(カポエイラについてはまた今度!)、モリカワさんのお知り合いがトシさん(カポエイラの先生です)のところでカポエイラの練習をしていて、で、オレの先生沖縄出身、沖縄そば作る、的なことを言ったら、え、会いに行く、ということでトシさんに会いにきた、という経緯だったと聞きました。
縁、えにし。手を重ねてカポエイラのゲームが始まるように、麺でつながる味の縁といいますか。

最後に、沖縄そばの上に乗っかるでっかいらふてーについても言及しておきましょう。らふてーは、いわずとしれた沖縄の家庭料理。ですが、ここでも沖縄の伝統にこだわる、だけでなく、実は、博多ラーメンのチャーシュー作りを参考にして作っている部分があるそうです。近いけれど微妙に異なる、いろんなスキルを使いつつ、経験の「かけ算」の結果が、今日の、明日の「おいしい」になるような計算を、トシさんという人はするのです。それで、Tidaの沖縄そばは、今のおいしさになっているのです。

だから、1年後も同じ味とは限らない。
でも、断言できるのは、
もし、味が変わっているなら、それはかけ算でさらにおいしくなっているから。
多分、後退しない、ということです。

この点、私、ちょっと自信があります。

そんなの沖縄そばじゃないじゃん、という人もいるかもしれません。実際そういう人もいるそうです。でもそんな時、トシさんは聞きます。じゃあ、何をもって「沖縄そば」っていうの?と。
伝統を守ったらそれがいいの?それだけでいいの?より良く、よりおいしくしようと、新しく試せることがあるのなら、それを組み合わせることで、「沖縄そば」のおいしさの根源部分をよくしていける、そうではないのか。そしてその実験をしているのは、ほかの誰でもない沖縄出身のトシさんだということ。自信があるから出している一品だということ。それを本質と呼んで悪いわけはないのです。そしてそれは、伝統を忠実に継承する人たちの努力を否定する行為では決してないこと。この点、誤解されやすいですが、伝統に忠実、というあり方を全肯定しつつ、自分は違うアプローチで本質を見極めようとしているわけで、この2つのアプローチは共存可能であり、多様性の確保による伝統の深みの継承であり、文化へのリスペクトでもあると、私はそう理解しています。

だから言える。これは、端から端まで沖縄そば。
東京で食べる沖縄料理。Tidaだから食べられる沖縄そば。

「沖縄そばだからおいしい」ではなくて、
「沖縄そば×博多ラーメンだからおいしい」ではなくて、
「沖縄そば×博多ラーメン×コダワリの麺だからおいしい」ではなくて、
トシさんのルーツと出会いの結晶だからおいしい!だと思うのです。
これが良い、これこそが良いという人もいるのは、そういうことではないでしょうか。
だから今日も、うつわが空っぽになるまで、もりもり全部食べてしまうのです。最後の一滴までおいしくいただき、あーおいしい!とつぶやくのです。するとトシさんが今日も
「ありがとーございまーす!」
とどなるような音量でお礼を言うのです。

さて、モリカワさんの麺の話に戻りますが、Tidaで今一押しなのが、ふーちばー麺。ヨモギの入った、香りの高い麺で、つるつるとのどごしよく、翡翠のような美しい麺です。
ヨモギを使っているので、あたたかい季節限定。
沖縄だと、ヨモギを麺に乗せたりするそうですが、麺に練り込むはないんですって。で、この麺大変美味なんです。見た目だけでなく、中身も美しい。
Tidaでは、ふーちばー麺の味を楽しめるように、シンプルなつけ麺にして出しています。

トシさんは、こんなことを言います。
「おいしいんだよ。まずはさー、つけ汁なしで、そのまま食べて。
「そして、こーれーぐーすかけて、そのまま食べてみて。
「それから汁に付けて食べてみて。」

その通りに、まずふーちばー麺だけ食べると、小麦とヨモギが口の中でさわやかに香る!
つるんとしているので、感触がやたら気持ちいい!
ビールかな、と言うと、泡盛が合うんだよ!ですって。そうね、こーれーぐーす合うものね。
そして、シンプルなつけ汁と相性よく、冷たい麺食べる贅沢がここに詰まっている感じなのです。
そして、最もすごいことは、これ、まだ完成形ではないということ。なので、今後ますますおいしくなるに違いないのです!だってトシさんの頭の中でかけ算が進行中ですから!

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