【ポッドキャスト|文字起こしつき】〈AIラヂオ004|生成AIは人間のクリエイティビティを超える?超えない?
みなさま、こんにちは!テック系フリーランスライターの五条むいです。
テクノロジーとの共生でハッピーになりたいHarmonic Society株式会社の師田賢人とテック系フリーランスライターの五条むいがゆるく愉しくお届けする、〈AIラヂオ004〉をお届けします!
前回から間が空いてしまってごめんなさい。今回のテーマは〈生成AIは人間のクリエイティビティを果たして超えるのか?〉です。回が進むにつれて議論がますます深まってきました。
文字起こしもついてます。よろしければ、しばしお立ち寄りください。
ところでボクたちは、AI研究会でも活動しています。よろしければこちらにもお立ち寄りください!
AIラヂオ004の文字起こし
師田:皆さんこんにちは、AIラジオというポッドキャストです。この番組ではAIに関する情報発信をしています。今回のテーマは、AIは人間の仕事を奪うのか、クリエイティブ職は失われてしまうのかというテーマについてお話したいと思います。
お届けするのはHarmonic Society代表の師田と五条むいです。よろしくお願いします。
五条:よろしくお願いします。
師田:はい、AIラヂオも今回、4回目ということで、いろいろと反響とかコメントとかもいただけて嬉しい限りです。前回の3回目では直近の未来、3年とか5年とかで、生成AIは人間の仕事を奪うのかっていうことについてお話しました。
特にその中でもライティングを例にあげて、人間のような感情とか経験とかっていったものをAIは見つけることが難しいから、まだ人間のライターの仕事とかを完全に代替することはできないんじゃないかっていうような結論に達しました。
ただ今回はもっと長期的な未来、たとえば10年後とか20年後といった未来に、AIは人間の知性を超えるのかとか、クリエイティブ職といったものの仕事を奪うのかっていうことについてちょっと、長期的な視点で見ていきたいと思います。
はい。というような感じで、AIが人間の知性を超えるっていうのをシンギュラリティっていうふうに呼びますが、五条さんは実際に起こると思いますか。
五条:そうなんですよね。ちょっとなんか雑談になっちゃうんですけど、AIが人類の知能を超えるっていうシンギュラリティ論を展開した、あの有名なレイ・カーツワイルって人がいるんですよね。
彼は2045年頃にシンギュラリティが実現すると言ってるので、未来を2045年頃っていう設定だとしたいんですけど。
ボクはレイ・カーツワイルがディストピア論に繋がるような、シンギュラリティを展開したきっかけになった人だと思ってます。なんでかっていうと、彼がシンギュラリティを主張したことで、アーノルドシュワルツネッガーの『ターミネーター』ができたりしたじゃないですか。
その意味でハリウッド映画って本当に機を見るに敏で、それAIで人類を絶滅させる論が一気に普及した気がしてるんですよね。なんかそんな気がしませんか。
師田:そうですね。なんかそういうの多いですよね。
なんかマトリックスとかも、なんかいわばそういう感じですかね。その流れにあるような気がしますよね。AIが実は裏で社会を操っていたみたいな。あれはシミュレーション仮説っていう、自分たちの今いる現実が夢なんじゃないかっていうような、そういった話にも繋がってきますので
五条:そうですよね。
それともAIが人類を絶滅させるような、あるいはマトリックスのようなAI支配の世界観が普及したので、AIが仕事を奪う論が一気に盛り上がったのかもしれないと思ってるんですよ。
師田:そうですね。
何かそれに関して多分視点が二つあると思ってて。
まず一つ目はAIが人間の知性を超えるっていう、そういった汎用AIっていうものがまず生まれるかっていうことが一つ目だと思うし、仮に人間の知性を超える汎用AIが生まれたときに、人間はそのAIと共存競争していけるか、つまり一緒に生きていけるかっていうことが二つ目の論点だと思うんですよ。
1個目の論点で、人間の知性をAIが超えるっていうことは実際に起こりうるんですかね。
五条:今日のテーマですよね。あくまでも個人的な考えなんですが、ボクはAIが人類の知能を超えるシンギュラリティ、つまり技術的特異点を超えるかどうかについて、汎用AIができるかどうかについて、本当は誰もわかってないんじゃないかなっていう気がしてるんですよ。だから今回は、なぜ誰にもわかってないとボクが思うのかについて、ちょっと考えを述べたいと思います。
ところでボクはテキストを生成する生成AIをおっかけてるので、一方、画像とか動画を生成する生成AIって動作原理が全く違うじゃないですか。だから意見できないので、今日はテキスト生成AIについてちょっと考えてみたいと思うんです。
師田:うん、うん。
五条:前回、今のテキスト生成AIの限界について述べたわけですけど、師田さんが説明してくれたように、生成AIって感情を持ったり経験を持ってないので、経験なんかを織り込んだテキストを生成できないという限界があるっていうことですよね。
だからシンギュラリティが起きるかどうか、つまり汎用AIが実現するかどうかって、生成AIが感情を持ったり、そういった限界を超えることができるのかっていう問いになるんです。
つまりライター観点から言うと、テキスト生成AIが井上ひさしとか村上春樹のようなテキストを書けるかどうかっていうのが問いなんだと思うんですね。
そこでボクの今のところの結論は、今のコンピュータの仕組みのままでは、生成AIが井上ひさしを超えることはないんじゃないかなと。コンピュータの仕組みが根本的に変わることがあれば、もしかしたらシンギュラリティが起きるかもという立場なんです。
師田:なるほどね。なんかボクは結構シンギュラリティは、わりと起こるっていうふうに思ってる派なんですね。そういうのも理由は何か人間のひらめきとか、その感情とか経験によるひらめきみたいなものって、結局、そんな別に脳科学に詳しいわけじゃないんですけど、ニューロンのシナプスの樹状突起の部分からの化学反応の伝達の部分によって起きてるわけですよね。そういう感情の動きとか思考の動きっていうのをシミュレーションできればいいと思うんです。
なので、人間が物理的存在であるならば、ボクは汎用AIみたいなものがライティングに限らず、AIは人間の知性を超えて汎用AIっていうものが生まれてくるんじゃないかなってボクは何となく素人ながら思うんですよ。
五条:これ二つ論点があると思ってて。ちょっと今回二つ目は今回の議論の中に入れるのは難しいという気がしてるんですけど、AIって「私は考えるモデル」じゃないですか。
デカルトが「コギト・エルゴ・スム」と言ったように、私は考えるから私は存在してるんだっていうのが生成モデルですよね。
でももう一つの考え方は、人間の考えというものは対話の中から生まれるというのがありますよね。「間主観性」というか。これ議論すると、哲学の話になるんどえ、今回はその一歩手前の話をしたいと思うんです。
五条:完全に哲学の世界へ足を踏み入れることになっちゃいますね。その一歩手前の議論に限定して話をすると、人間の脳のニューロンの発火と伝達の仕組みをコンピュータがシミュレーションできるかどうかっていう話からいくと。
実は人間って無意識で考えてるっていう、哲学の話になっちゃいますけど、考えがあるじゃないですか。はい。でも、無意識のメカニズムって、誰もそれを解き明かしてないんですよ。仕組みを解き明かせないとシミュレーションできないじゃないですか。
師田:そうですね。それに関してボクは、それ仕組みを解き明かすの割とそんなに遠くではないのかなっていう気はしてるんですよね。
五条:うん。そうですよね。つまり無意識も含めて、仕組みを解き明かすことができる日が来たならば、シンギュラリティは実現するかもしれないですね。だからボクもそれには全く同感なわけです。
師田:攻殻機動隊で、主人公の女の人が、私のゴーストが囁くのよって言っているじゃないですか。あの人ってロボット的な感じで義体化してて、電動してっていう完全に機械的な存在なんですけど。それでも魂みたいなものを信じてるんです。モノリスの直感で従うみたいなことを言っていて、だから結局また強い哲学的な話になってしまうんですけど、人間にゴースト的なものがあるのかみたいな話にはなってくると思うんです。
それに関してはまた、後ほどというか、これはどうしましょう、1回テーマを設定して、ぜひ話したいですね。
五条:そうですね。でね、師田さんが攻殻機動隊の例を出したのはすごく暗示的で、なんでかっていうと、攻殻機動隊機動隊では、新井素子が首のところのセンサー端子に直センサーをぶっ込むじゃないですか。あれが必要なんですよ。
ニューロンの発火と伝達の仕組みを神経系の伝達の仕組みをシミュレーションするためには、実は人間は神経系に直接センサーをぶっ込む技術を持たなきゃいけないんですね。
師田:なるほどね。
五条:うん。それが侵食型センサーと呼ばれてるんですけど、これイーロン・マスクなんか今は本気で開発してたりするんですよ。だからそれでコンピュータを人間の神経系に侵食型センサーで直接ぶっ込んで、神経の伝達の仕組みなんかがわかれば、もしかしたらっていう話はあるかもしれないですよね。だからこれもさっきの話と一緒で、そういったテクノロジーが実現したら、もしかしたらシンギュラリティはあり得るかもしれないという話になってしまうの。
師田:そうですね。それがニューロン的な側面で論点として一つありますね。ただそれがニューロン的な仕組みである必要性はないわけじゃないですか。要するに他のモデルがあって、実行モデルがあってもいいわけなので、結局人間のニューロンモデルによる思考っていうのと異なるようなモデルによって、AIが思考で別の人間を超えるっていうこともあると思うんですね。
五条:なるほど。うん。それを言ってるのが、あのケビン・ケリーというアメリカの思想家なんですけど。彼はね、全く師田さんと考えが同じで、AIって、「エイリアン・インテリジェンス」だって言ってるんですよ。はい。異星人の知能だと。つまり人間とは違うと。
うん。だから、今までのシンギュラリティって、人間の知性・知能を前提に、シンギュラリティを受けるかどうかっていう議論だったじゃないですか。だからケビン・ケリーは、それはやっぱありえないと思っていて、ただエイリアン・インテリジェンスならありうると。
師田:なるほどね。人間をシミュレーションすることが難しいというのは何となく思うので、そういう違った形での思考のモデルみたいな、インテリジェンスといったものは結構ありうるのかなっていう気もしますね。
五条:そうですよね。うん。その長いスパンで見たときね。
師田:そうそう。
五条:うん。それで師田さんって、2018年に新井紀子さんっていう方が「AI vs.教科書が読めない子供たち」という書籍を出して、大ベストセラーになったことを覚えてません。
師田:はい、よく聞いたことあります。
五条:あれ本当に売れたんですけど。でね、その本を読んでボク感動したんですよ。なんでかっていうと、こんな難しい話をこんなに簡単に説明できるのってすごすぎると思ったんです。それ以来ボク新井紀子さん理論に従ってシンギュラリティ問題は考えるようになったんですね。
新井紀子さん理論ってすごいシンプルで、今のコンピュータって巨大な電卓なんですよ。つまり基本は数値演算マシンで、もっと言えば、四則演算やってるだけなんですよね。
だからテキスト生成AIが統計計算をすることで、次に来る単語は何かを推論してるって言ったんですけど、統計計算こそ、四則演算の積み重ねじゃないですか。
師田:そうですね。
五条:だから、テキスト生成AIは、超高速のコンピュータくんがいて、超高速に電卓をを叩いて、次に来る言葉はなんだろうって、すごい超高速に計算してるっていうことですよね。
だから、新井紀子さん理論の結論は、人間の感情とか無意識といったようなものをコンピュータが、仮に無意識のメカニズムがわかったとしても、コンピュータが計算してシミュレーションができるかと言えば、それは無理でしょっていうのが、その彼女の結論なわけです。
師田:なるほどなるほど。
五条:うん。だから、今までの議論を振り返ると、シンギュラリティが起きるためには、そのコンピュータの仕組み自体とか侵食型センサーとか、そういったテクノロジーの仕組み自体がガラッと新しいものに変わる必要があるし、第2に、さっき師田さんがおっしゃったように、無意識とか、まだ誰もその仕組みを解明できてないものが、外部できる必要があると思うんですね。
師田:うん。そうですね。確かにそういう意味で言うと結構ハードルが高いような感じがしますよね。
五条:ハードルが高いし、誰もそんなテクノロジーが実現できたりとか、いつできるとか、本当はわかってないんじゃないかなって気がするんですよね。
師田:そうですね。なんか結局、インターネットがどういう形で進化する、例えばメタバースとかWeb3とか生成AIとか、こういう形で進化してくって予想できてた過去の科学者とかって、多分、そんなほど多くはないと思うんですよね。
今はVUCAの時代って言われてて、さらに技術の進化とかがもう圧倒的にランダムに加速してるような時代において、将来、20年後とかの技術動向を予想するっていうのはもうほぼ不可能に近いので、多分、誰であっても確かな事は言えないとは思うんですよね。
五条:そうですよね。いや、ボクも本当にそう思うんですよ。ボク自身はテクノロジーの世界では、未来は予測できないっていうのが原理だと思ってるので、だからカーツワイルが2045年にシンギュラリティが起きるって言ったって誰も否定できないし、誰も肯定もできないっていう。
師田:確かなことはちょっと言えそうにないかなっていう感じですね。
五条:だからそういう意見が出てくるとボクはね、ポジショントークだなと思ってるんですよ。
師田:そうですね。結局誰も正解わかんないし、その正解が合ってるか合ってないかを判定することも多分できないだろうし。
五条:さっきゴーストの話が出ましたけど、感情の定義とは何だとか、本当に何だろうな、無意識の定義は何だとか、何かそういう哲学的な話にどうしても踏み込みざるを得ないんですよね。
師田:その通りですね。だから最近本屋行くと哲学の方すごい多いじゃないですか。うん、なんかAIが普及してきて、なんかみんな自分を見失って哲学も増えてるのかなって思ったんでですけど、なんかみんな未来を予測しようとしてるんですよね。
未来を予測しようとして、それに近いような考えが哲学的なことだっていうことに結構世の中の人がたどり着いてるというか、需要を得て、哲学の本が結構本屋に並んでるんじゃないかと。
みんな未来予想しようとは頑張ってるって感じです。ボクたちも含めて。
五条:なるほど、その解釈は面白いですね。たしかにそんな感じがします。
師田:この問題に関しては1回だけでは語りきれないので、次回の5回目以降にも、続きの話をしていきたいなと思います。今回の4回目の結論としては、シンギュラリティを超えるとした、人間を完全にシミュレーションできるかもしくは人間ではない個別のエイリアン・インテリジェンスっていったものを確立するといった話になってくるんじゃないかと思うんですけど。技術がどう進むかわからんから、結局確かなことは言えないっていうような結論ですね。
五条:そうですね。ボクはどっちかというとエイリアン・インテリジェンス論ですね。
師田:そうですね。そういう感じで第4回は終わりにしたいと思います。こんな感じでAIに関するトピックを対談形式でお届けしているので、もし興味がある方がいれば、ぜひぜひ購読してみてください。
はい。というわけで、五条さん、今日はありがとうございました。
五条:どうもありがとうございました。