アイデアの型まとめ#3「ブランドジャーナリズム」
シリーズ第3回となった今回は
「新しい企業広告のあり方」をテーマにブランドパーパスと
ソーシャルインサイトを結び付けることでアイデアを生む
「ブランドジャーナリズム」という手法を紹介します。
Brand Purpose/ブランドパーパスとは
前回のアイデアの型まとめ#2「マイノリティサポート」で
広告クリエイティブ業界のキーワード変遷として
Social Good:利益のためだけでなく社会のための広告
Authenticity:なぜその社会課題にアプローチするか
Inclusion:世界中が直面したDiversityという社会課題とどう向き合うか
の流れをご紹介しました。
その流れの中でAuthenticityの次に注目されたキーワードが
Purpose:そのブランドが存在することの大義名分
でした。
これは、VisionやMissionなどの未来志向の概念とは違い、
現在に目を向け、ブランドの拠り所として具体的。
例えば、NIKEは自分たちのPurposeをこう定義しています。
Our purpose is to unite the world through sport to create a healthy planet, active communities and an equal playing field for all.
NIKEは "Fairness(公平さ)"こそが世界をより良くするものだ
という強い信念を持っていることがわかります。
そんな強いPurposeを持つからこそ、放っておけなかった問題。
それが、人種差別に抗議したアメフト選手キャパニックのプロリーグ追放という事件。
これは人種差別への抗議として試合前の国歌斉唱時に起立を拒否したことから始まります。
その後、アメフトのプロリーグNFLは起立を事実上義務付ける決定をし、
それでも不起立をやめないキャパニックはリーグ追放となりました。
しかし、NIKEは"Just Do It"30周年キャンペーン"Dream Crazy"に
Unfairに立ち向かったキャパニックを起用。
コピーは
"Believe in something, even if it means sacrificing everything."
「たとえ全てを失うことになっても、信念を持とう。」
NIKEはキャパニックをサポートすることで
NIKEもまた信念を貫きました。
その結果、NIKEのスニーカーを燃やす不買運動にまで発展し、
株価は下落したものの、キャンペーン開始1週間で急激な回復をみせ、
オンラインセールスは31%増加し、株価は過去最高値を更新。
Purposeという大切な視座のもと、どうアイデアに定着させるのか?
その一つの答えが本日ご紹介する「ブランドジャーナリズム」だと思います。
ブランドジャーナリズムとは
実は具体的に定義されている言葉ではないそうなのですが、
私としてはこう理解しています。
「ブランドがジャーナリストとして社会に対して鋭いを持って信念や物語を消費者と共有する手法」
そしてこの定義を「アイデアを生む型」に翻訳すると
ソーシャルインサイトとブランドパーパスを結び付けること
となると思います。
具体的に見ていった方がわかりやすいので、
以下にブランドジャーナリズム事例をまとめていきます。
事例①パンテーン/「#この髪どうしてダメですか」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000042936.html
ソーシャルインサイト:ブラック校則を無くして欲しい
学校には人権侵害ともとれるブラックな校則がいまだ多く残っており、
時代の変化に合わせてアップデートすべきだという声が数多くあがっていた。その中でも黒髪規定は撤廃して欲しい理不尽なルールだった。
ブランドパーパス:「あなたらしい髪の美しさを通じて、前向きな一歩をサポートする」
パンテーンは上記のような社会問題を解決すべく、
生徒のみならず先生や学校サイドの人からフラットな意見を募集し、
広告の中で両者の意見をうまくハンドリング。
建設的な議論の場を用意することで両者にとって
納得のいく校則のあり方を再考するきっかけを作った。
結果:V字回復
(もちろん広告のみによって成し遂げられた結果ではないですが
貢献度は高かったのではないでしょうか)
事例②Oisix/「かあちゃん、楽しい夏休みをありがとう。」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000359.000008895.html
ソーシャルインサイト:夏休みはお母さんにとって戦争
僕自身、子どもが生まれてヒシヒシと感じますが、
保育園に預けられる平日と違って、休日、とてもしんどい!
もちろん子どもと過ごせる掛け替えのない時間で癒される一方で
子育てって大変!!!常に気が張ってるし、ご飯食べさせたり、おむつ替えたり、不機嫌にならないよう遊んだり、世話しているとシンプルに疲れる。
特に祝日は営業日が減るので休日にちょっと作業しようなんて時間が取れずに逼迫します。
夏休みとなると、そんな祝日みたいな日が押し寄せるわけですから
今から想像して既に怖いです。
ブランドパーパス:「これからの食卓、これからの畑」を理念に、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決する。
上記パーパスのもと、戦争に例えられるほど大変な夏休みを過ごした母親に
国民的世話の焼ける息子キャラであるクレヨンしんちゃんから感謝の言葉を
かけることで少しでも大変な夏休みを楽にする、
そんなメッセージをクレヨンしんちゃんに馴染みの深い春日部駅で展開。
結果:売上アップ
事例③Microsoft Surface/「大学生に、ノートPCはいらない。」
https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1903/02/news023.html
ソーシャルインサイト:若者のPC離れで学生さん大丈夫かな...?
若者へのPC普及率が著しく低く、スマホに依存している人が多い。
PCは社会に出るまでにある程度使い慣れていないといけないし、
何かを生み出す上で必要なアイテムなのに、
それと無縁な生活を送ってて将来が心配。
ブランドパーパス:to empower every person and every organization on the planet to achieve more
「PCは良き相棒として世界を広げ、何かを成し遂げるためのツール。
だから卒業することだけがゴールの大学生にはいらないよ。」と
大学に入れば盲目的に買うのではなく、何のために買いたいのかを考え、何のために買いたいのかを考え、
大学の意義を議論するきっかけを作った。
結果:(とてもよかった)
この案件を担当したので結果も知っているのですが、
ここでは書けないくらい良い結果でした。
なぜ高い効果を生むのか?
実は若者は広告に社会問題を考えるきっかけを求めている。
https://www.businessinsider.jp/post-200259
これは購入による社会参加という意味性を見出していて、
機能やイメージよりも「意味」で選ぶ時代になってきたのではないかと思う。
ブランドジャーナリズムでアイデアを生むには
社会の変化に敏感であることが一番大事だと思います。
そうすることでソーシャルインサイトを自分の中にストックしていき
そのブランドのパーパスにあったものを棚卸しすることで
アイデア開発に繋げられます。
【そのためにできること】
①定期的に本屋にいく
平積みされている本のタイトルや雑誌の表紙をチェックすると
表紙変遷を見るだけでソーシャルインサイトに気づく。
②リアクションを知る
ネットでも動画や投稿のコメント欄まで見ることで、
どんな感想を持つのかまでセットでインプットする。
街中で聞こえるちょっとした会話/掛け合いに耳を少し傾ける。
思わぬインサイトがあったりする。
③Twitterを徘徊する
情報の速さと生々しさという点ではマスメディアよりTwitter。
情報の精査は必要ですが、無自覚な本音が発露しやすい場所なので
徘徊していると、思わぬヒントに出会したりします。
まとめ
ブランドジャーナリズムはジャーナリストのような視点で
ソーシャルインサイトを発見し、
そのブランドのPurposeと結び付けることでアイデアを生む手法。
それにより、商品を買うこと・利用することに意味が生まれ、
消費者の購買意欲を高めることができる。
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