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秘密協定

ベッドは机に言った。
「役割を交換しましょうよ」
机はそれを承諾した。

それは私の知らないところで交わされた約束で、だから、私はベッドで食事をして手紙を書き、机の上に丸まり眠らなければならなくなった。

この家の主は私だと思っていたが、ベッドと机は私の思い通りにはならなかった。

この世はすべて錬金。

次の日は、書斎とバスルームが役割を交換していた。
なので私は、本から「湯」の文字を取り出して浴び、シャンプー台に並べた本を手にとって浴槽の中で読書をした。

その年のクリスマスは、メインと付け合わせが交換された。
私はマッシュポテトを大量に盛り上げて鶏の丸焼きを成形し、柔らかく練った鶏肉をスプーンいっぱいだけ皿の端に乗せた。

額には気持ちが降りてくる。
すぐに割れてさらけ出すから、内緒には向いていない。
一方、口唇は寡黙だ。
ペラペラという音が、本音をすっかり隠してくれる。

家。体。持ち物。料理。
自分のものだと思っていたものは、なかなか思い通りにいかない。

世界は秘密でできている。














ヘッダー写真撮影地:台湾・九份

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