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【絵のない絵本】とある春の日に耳をすませば

とある春の日に耳をすませば

きゅるきゅる さあさあ

  ぴゅんぴゅん びゅうびゅう

きゅるさあ さあぴゅん 

  ぴゅんびゅう びゅうきゅる

そよそよそよそよ

  そよそよそよそよ

びゅうさあ きゅるぴゅん

  さあびゅう ぴゅんきゅる


「ったくはるかぜの奴!」

「じゃあ、春はしばらく先延ばしってことかい 」

「ええ、はるかぜさんが元気になるまでは」

「早いとこ、今日の担当を決めないとですよっ」

「だから、今それを話し合ってるんだろうが」

「お願いですから皆さん、そんなに吹き荒れないでくださいな」


びゅうぴゅん きゅるびゅう

  そよそよそよそよ

さあきゅる ぴゅんさあ

  そよそよそよそよ


「ったく迷惑かけやがって!」

「しょうがないですよ」

「よりによって今日から春って日に、運が悪いねえ」

「はるかぜさんは、緊張に弱いですからねっ 」

「もたもたしてると、こがらしの奴が舞い戻ってくるぞ」

「皆さん、今日の担当はどなたにしましょうか」


きゅるきゅるきゅるきゅる

さあさあさあさあ

ぴゅんぴゅんぴゅんぴゅん

びゅうびゅうびゅうびゅう


「僕がきゅるきゅる回ると、子供たちが喜ぶんだ!一緒にきゅるきゅる回るんだ!」

「こんな爽やかな日は、私が潮の香りをさあさあっと届けてやりたいじゃないか」

「ぴゅんぴゅんって、鳥達が私と短距離走するのを待ってるんですっ」

「そろそろ地球も大掃除が必要だ、私がびゅうびゅうと掃いて綺麗にしてやるんだ」

「皆さん、皆さん」

「何が掃除だ! 僕に譲れ!」

「鳥とかけっこなんて馬鹿みたい」

「きゅるきゅるって、目が回りますよっ」

「潮の香りが爽やかだと?笑わせるな」


きゅるきゅる さあさあ

  ぴゅんぴゅん びゅうびゅう

きゅるさあ さあぴゅん 

  ぴゅんびゅう びゅうきゅる

そよそよそよそよ

   そよそよそよそよ

ごほっごほっ ごほっ ごほっ


「あら!」

「みなさん、どうも、ご迷惑をおかけしまして」

「体のお具合は?」

「この通りです、ゴホッ」

「無理して出てこなくても良かったのによ!」

「私が休んでる間、季節外れの台風が起こっていたみたいなので」

「ふん」

「つむじかぜさん、しおかぜさん、とっぷうさん、はやてさん、今日の担当はどうか私に選ばせてくださいな」

「誰を選ぶんですかっ」

「今日の私の代わりは、どうかこのそよかぜさんに」

「なにい?」

「わ、私ですか・・・?」


きゅるさあ さあぴゅん 

  ぴゅんびゅう びゅうきゅる

ひょ〜〜〜〜 ひょ〜〜〜〜〜


「穏やかで優しいそよかぜさん

 この春の初日にふさわしい

 どうか、この私の代わりに、

 皆に春を届けてきてください」


そよそよそよそよ

  そよそよそよそよ

そよそよそよそよ

  そよそよそよそよ


今日は春一番の予報でしたが、これぞ春という穏やかな1日になりそうです。微風にそよぐ木々の音が耳に気持ちの良い1日となりそうです。

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