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麦のこと④

昨夜、麦が旅立ちました。
とても穏やかに。

前日、迷った末におむつを着けた。
その夜にはもう水を飲むことも出来なくなってしまいました。

昨日の朝は、自分では起き上がる事も出来なくなった。吐き気がするようで何度かえずくけれど何も出ない。今日が最期かもしれない、そう感じました。

その後は、うとうとしては、口の中が気持ち悪いのか咀嚼するような仕草をしたり、目を開けて小さく「にゃ」と鳴くのを繰り返していたけれど、昼前には深い眠りに入っていった。

はじめての看取りが不安だったときに出会った、にゃあこさんのブログ。お守りのように繰り返し読んでいました。

旅立ちまでどんな経過を辿るのかが書かれていて、それによると、麦は昏睡状態に入ったようだった。ときどき寝返りさせても目を覚ますことなく昏々と眠り続けていたから。

あぁ、麦はもう苦しさは感じてないんだな。そう思うと穏やかな気持ちになりました。

夜、夫と私の間に麦を寝かせて、川の字になって布団に入った。私の布団の足元には、もう一匹の猫のきびも丸くなって。
両側から二人で、撫でたり話しかけたりしながら、麦の旅立ちを見守った。

眠り続けていた麦が、薄く目を開け、手を大きく動かす仕草をして、その後から呼吸が変わった。

口からふーっと息を吐く。間隔を開けながらそれを繰り返す。その後で足が小さく痙攣のように震えた。

そして、呼吸が止まった。

穏やかな、ほんとうに穏やかな旅立ちだった。

麦のいないこれからの日々。

それを生きることがどんな感じなのか、まだわからないけれど。私のなかで、ひとつの時代が終わった気がしています。

娘が九つのとき。
ひとりっ子の彼女が大人になっていずれ巣立つまで、弟として、家族として暮らそう。そう思って迎えた麦。

麦、お姉ちゃんね、今夜は麦のことを思って眠るねって言ってたよ。
夢で逢えたかな。きっと逢えたよね。

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