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音楽で人生が変わる日 -カセットテープダイアリーズ-

その曲を聞いたときから人生が変わる、そんな瞬間がある。
カセットテープダイアリーズは主人公を10代の多感なときだった自分と重ね合わせて見ることができる。そんな映画だった。

あらすじ

1980年代のイギリス、パキスタン移民2世の主人公ジャベド。
白人社会から受け入れてもらえず、自分の本当にやりたいことは親に反対され、どうしようもない行き詰まりで出会ったのがブルース・スプリングスティーンの音楽だった。その瞬間から彼の人生が変わっていく。

音楽の力

自分にも主人公みたいに音楽で人生が変わる瞬間がいくつもあったのでとても共感できる展開、内容だった。
例えば
QueenのSomebosy to Love

The Rolling StonesのYou can't get what you want

Bob DylanのThe Times They Are A-Changin'

彼らの曲は自分が思っていたことや自分の感情を代弁してくれているようで、聞いた瞬間に体中に電撃が走ったのを今でも覚えている。
今でも苦しいときは初心に立ち返る意味でも自分の原点として戻ってくることが多い。

音楽に限らず、創造物に感化され、その哲学を内面化し、そこから自分だけの哲学を作り出す過程は人を成長させる。
いままでの自分では考えつかなかったこと、できなかったことが、音楽との出会いでできるようになっていく。そういった経験をダイナミックに表現したのがカセットテープダイアリーズという映画だった。

どうしようもなさを打ち破るために

主人公ジャベドはパキスタン移民の2世だ。流暢な英語を話すが肌の色は茶色。ナショナリスト共に露骨に馬鹿にされることもある。
親も典型的なアジア人らしく家族のために自分の夢を諦めろと迫ってくる。
正直、自分の力だけではどうしようもない。音楽を流すだけで世界は変わらない。でも、そんなどうしようもなさを打ち破ってくれるのもまた音楽なのだ。音楽で世界は変わらないが、自分は変えられる。

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敬愛するブルース・スプリングスティーンを信じ、愚直なまでに彼の哲学のもと行動する。つまずきながらでも、すこしづつ自分の周りを変えていく。
正直、すごくかっこよかった。

いまの僕だってどうしようもなさを感じる瞬間がたくさんある。仕事とか恋愛とか、うまく行かないことばっかりだ。
だからこそそんなどうしようもなさを打ち破ってくれるような出会いをひとつひとつ大事にするしかないのだ。感化され、行動する。この2つができれば何かが変わりそうな気がする。
今の僕は10代の頃ほど多感じゃない。いろんなことを経験して感受性は鈍りつつある。それは否定しない。
それでも自分を変えてくれる何かとの出会いを探し、純粋に感化される努力をする。そうやって生きていこうと思えるいい映画だった。

ディーン=チャールズ・チャップマンはいいぞ

映画「1917」でジョージ・マッケイとともに一躍有名になったディーン=チャールズ・チャップマン。
今作では主人公の友人役として登場するのだが彼がまたいい味を出していてよかった。

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いい友人役が出てくる映画はいい映画。主役を引き立てる脇役というポジションで2度も実力を見せたディーン=チャールズ・チャップマン。次回作が大変楽しみである。


コロナで大変な世の中だけど、大変良い映画だったので(とくにブルース・スプリングスティーンファンにとっては)ぜひ見に行ってください。


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