何者にもなれやしない

今朝、通勤電車でボーっとしながら「仕事を辞めたら沖縄旅行へ行こう」なんてことを考えていた。
今の職場を離れることができるその日が近くなってきたので、気持ちが少し軽くなったのだろう。鬱屈としていた毎日に少しだけ、ほんの少しだけ希望が見えた。

職場に到着し、与えられた単純作業をただひたすらにこなす。
お昼ごはんを食べることだけをモチベーションにひたすら感情を殺して作業を続ける。

お昼休憩になり、早々とお弁当を食べ終えたあとは派遣先のオフィスビルの1階へと向かう。そこには誰でも座れるベンチが置いてあり、目の前の開放的な窓からは緑の木々だって見える。なんだったらかすかにクラシックも流れていて、最近はこのスペースで貴重な残りの昼休憩の時間を過ごすようにしている。
執務室に流れるあの重い沈黙の中で過ごすより大分ましだ。

ふと、スマートフォンの通知を確認すると転職活動で応募していた企業からの選考結果だった。
予想通りのお祈りメールに目を通し、「ああ、困ったなあ」と思う。

この企業へは転職エージェントを通して応募したので選考結果もその転職エージェントを介して送られてきたのだが、本文には選考に落ちた理由まで丁寧に書かれていた。

要約すると「あなたは転職スパンが短いようだから当社に来てもすぐ辞めるでしょ」といったことをオブラートに包んだ内容だった。それを読んだ瞬間は「まあ、そう思うのも仕方ないよね」と思った。

短い昼休憩もあっという間に終わり、足早に執務室へと戻る。
スリープ状態のパソコンを起こし、さっきやっていた作業の続きに戻る。

パソコンの画面を見ながら、ついさっき見たお祈りメールのことを思い出す。

そうだよな。

自分がどれだけ「自分にも何かできるはず、合ってる職場だったら長く働けるはず」と思っていたとしても、一般的社会ではただの”転職回数が多い人”なんだよな。
自分が採用する側でも、きっと同じことを思うだろう。

もちろん、選考に落ちたからと言って自分自身が否定されたわけではないし、向こうもそんなつもりはないだろう。
転職回数が多いというのも体のいい後付けの理由で、本質的な理由としては年齢や経験の少なさが原因かもしれない。

起こった事実だけを述べたら、たった1回書類選考に落ちただけ。
それなのに、なんでこんなに悲しくてやるせない気持ちになるんだろう。

「自分にも何かできるんだ」という気持ちを持ち続けては結果が伴わず、辛い気持ちになる。結果が伴わない理由も分かり切っている。

圧倒的な努力不足。

でも

もう頑張りたくないんです。

別に今までも頑張ってきたとは言わないけれど

未来への希望を完全に捨てることはしなかった。

だけど

今の自分を社会一般的な物差しで測ろうとすると

あまりにもちっぽけで。

すごく惨めな気持ちになる。

こんな思いを持ち続けて生きていくくらいなら、いっそのこと…

そんな考えすら頭によぎる。

多分、私は”何者か”になりたいという気持ちが強くて、だからこそ漫画やアニメの世界の登場人物に憧れたりなんかもした。何故なら彼らは特別だから。

でも現実世界はそんなにうまくいかず、自分はただの何者にもなれないちっぽけな存在。「いつかは何者かになれる」と信じて生きてきたけれど、いつまで経ってもそんな気配はない。

多分、自分がプログラミングを勉強していたのも「こんな自分でも何者かになれるかも」といった淡い期待があったのだろうと、今になってそう思う。その時はその努力が実り、小規模ではあったが開発の仕事をしていた。

別にそこまで嫌いな作業では無かったし、やりがいもあった。
でもだからといって休日までプログラミングをしたり自分の制作物を作ろうと思うほど、好きではなかった。

ネット上には「これだけ努力したら、エンジニアになれました!」といったような記事か「休日にコーディングするくらい好きじゃないと、エンジニアとしてやっていけない」といったような記事がたくさんある。

私は言うまでもなく後者の道を辿っているのだろうが、「開発の仕事を続けて実を結ぶことができれば、せっかく何者かになれそうなのに、ここで諦めるのか?」という気持ちが捨てきれずまた開発関係で転職活動をしている。

きっと今回選考に落ちたのは、そんな不純な動機を見透かされたのだろう。
自分の中に両極端な気持ちがあるから、困っている。

「やっぱり、何者かになりたい」という気持ちと
「何者かになりたいという気持ちだけで転職活動をすると失敗しそう」という気持ち。

何が正しいのか、どれが自分の本当の気持ちなのか分からない。
そもそもこれまで何回も言ってきたが「何者か」ってなんだ?

アニメや漫画の世界だったら、きっと自分は一瞬だけ見切れる大勢の通行人のうちの1人。それも顔が映っていない後ろ姿だけの”通行人A”といったところだろうか。

そんなことを言うと「通行人Aにだって人生があるんだ」と怒られそうだが。。。

とりあえず”通行人A”から名前だけでももらえるようにもう少し生きてみようと思います。

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