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【エッセイ】 ぬか床の向こうに見た私

こんにちは。米田です。

最近、ぬか漬けを始めました。「最近」と言っても、かれこれ2、3ヶ月、試行錯誤を繰り返しています。

ジッパー付きのパックに入った「漬けるだけ」のぬか漬けは本当に便利ですね。二週間続いたらパックを卒業しようと決め、無事、今に至っています。

一日一回は様子を見て、かき混ぜて、野菜を漬け、必要であれば塩や粉からし、ぬかを足す。ただそれだけの作業ですが、ぬかを触っている時間は私の癒しです。
良い発酵の証の匂いも、癖になる。

毎日毎日同じことの繰り返しのようですが、実はそうじゃない。全く同じ味に漬からないのが私のぬか床の面白い所で、そして意地の悪い所です。
毎日(多い時は毎朝晩)見ているのに、一度も同じ様子だったことがないのです。ぬか床も生きているんですね。
鰹節、昆布、干し椎茸なんかを漬けると味に奥ゆきが出てさらに美味しくなったり。知れば知るほど奥が深い。

ぬか床をこねながら、時々、同じことが繰り返される毎日に辟易していた過去の自分を思い出します。

毎日同じことのようで、本当は毎日少しずつ何かが違っていたんじゃないか。どうせ繰り返しだと目線を落としていたのは自分の方で、本当ならば見えたはずの景色を見逃しただけじゃなかったのか。
今更、そんなことを思います。

一日一回は様子を見て、かき混ぜて、彩りを漬け、必要であれば塩や粉からし、糠を足す。私は、たったそれだけのことを、毎日出来ていたんだろうか。
地面と自分の爪先しか思い出せないのは、そんな地道な作業をさぼっていた証のような気がします。

おはよう。いただきます。ごちそうさま。いってきます。いってらっしゃい。ただいま。おかえり。おやすみ。ごめんなさい。ありがとう。その繰り返し。
昨日と同じように今日が来て、今日と同じ明日が来る。
今日は昨日の続きで、明日は今日の続き。
繰り返しに思えても、その全てに意味がないわけがないんだよなぁと、今ならわかるのです。

ぬか漬け、恐るべし。

ジッパー付きの即席パックは卒業したものの、未だ、うちの糠漬けはタッパーです。ぬか壺に憧れるけれど、気負わないために(そして過発酵した時に冷蔵庫に避難させるために)もうしばらくはこのまま続けていく予定です。
日々の彩りにぬか漬け、是非お試しあれ。

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