『籠釣瓶花街酔醒』の話

どうも、私です。

今日は、「第10回 シネマ歌舞伎の話」をします。


2023年度初のシネマ歌舞伎です。


お付き合い下さい。

姉「結果発表ーーーーー!!!!!」

私「おーーーーー!!!!!」

今年のシネマ歌舞伎は、目白押しだ。
泉鏡花没後150年ということもあって、坂東玉三郎さん主演の泉鏡花作品、

『海神別荘』
『高野聖』
『天守物語』
『日本橋』


の4作品公開されるほか、中村勘三郎さん主演の『法界坊』、御屋形様(市川猿之助さん)主演の『スーパー歌舞伎 ヤマトタケル』等が公開される。


目、足りない←


2023.6.16 8月に上映予定だった市川猿之助さん主演『スーパー歌舞伎 ヤマトタケル』は、坂東玉三郎さんと『太鼓芸能集団 鼓童』による共演作『幽玄』に変更されました。

今回、見に行ったのは『籠釣瓶花街酔醒』

中村勘三郎さん、坂東玉三郎さん、片岡仁左衛門さん競演の作品だ。

姉「勘三郎さんだけでなく、仁左玉が揃ってるとか卑怯よ←」

私「これは、卑怯←」

と卑怯な(?)キャスティングにニヤニヤしながら、私達は映画館へ出かけた。


※ここからは、切れ味抜群のネタバレにご注意下さい。


  • 運命の花魁道中

この物語は、上州佐野の絹商人、佐野次郎左衛門(中村勘三郎さん)と下男の治六(中村勘九郎さん)が商いを終え、江戸から帰るところから始まる。

次郎左衛門「桜も綺麗だし、話の種にもなるから、吉原に寄ろう」

治六「そうしましょう」

と吉原に立ち寄ると、念願だった花魁道中に遭遇。

次郎左衛門「滅多にないことだから、見てから帰ろう!」

治六「はい!」

と2人は、花魁道中を見物。
その姿の微笑ましさに思わず笑っていると、1人の花魁が現れた。

吉原一の花魁、八ツ橋(坂東玉三郎さん)だ。

姉、私「はい、綺麗!!!!!」

満足して帰ろうとした次郎左衛門が美しさに心奪われていると、八ツ橋は次郎左衛門を見つめた後、フッと笑った。

その笑顔は、次郎左衛門を見事に撃ち抜き、彼は呆然とした表情で八ツ橋の背中を見送った。

姉「そりゃ、こんな笑顔向けられたら惚れるわ」

私「八ツ橋♡」

姉「いや、お前もかい。笑」

そこから、次郎左衛門は江戸へ通っては、八ツ橋のもとへ通う日々を半年送るようになった。

そりゃ、通いたくなるわ。


  • 2人の男と1人の花魁

優しく実直な人柄、気前の良さは次第に評判となっていき、八ツ橋との関係も良好の次郎左衛門は人望も厚く、『佐野の大尽』と呼ばれるようになり、彼女を身請けしようと考える。

しかし、それをよく思わない男が1人。
八ツ橋の間夫(恋人)、繁山栄之丞(片岡仁左衛門さん)だ。

遊び人であり、八ツ橋の養父でもある釣鐘権八(坂東彌十郎さん)が、お金の借り入れを茶屋に断られた腹いせに、と栄之丞を焚きつけたのだ。


権八、いらんことすんな。


権八「八ツ橋、心変わりしてますよ」

栄之丞「は?」

権八の言葉に怒った栄之丞は、八ツ橋が自分宛てに送って来た手紙を無視。権八とともに、吉原へ向かう。

栄之丞「心変わりしたって、どういうこと」

八ツ橋「えっと……」

言葉に迷う八ツ橋に、栄之丞は続けた。

栄之丞「次郎左衛門のことが好きなのか?」

八ツ橋「好きというか、その……」

栄之丞「次郎左衛門と手を切る気がないなら、こっちから縁を切る」

八ツ橋「そんな……泣」

涙を見せる八ツ橋と栄之丞のやり取りが続く。
その頃、何も知らない次郎左衛門は仲間の商人と治六を引き連れて、宴会をしていた。


  • 八ツ橋の決断

宴会の場にやって来た八ツ橋を、次郎左衛門は優しく迎えた。
だが、八ツ橋が彼に向けた言葉は冷たいものだった。

八ツ橋「あなたがここに来ることも、会うことも元々嫌だったので、身請け話はお断りします」

次郎左衛門「…嘘でしょう?」

八ツ橋「嘘ではありません。今後、私のところへは来ないで下さい」

何とも言えない沈黙が流れる座敷を、栄之丞が障子の陰から見ている。
八ツ橋は、心を痛めながらも次郎左衛門に愛想を尽かしたのだ。

呆然とする次郎左衛門を置いて、出て行く八ツ橋。
次郎左衛門は、追いかけることも出来ないほどに傷つき、恥をかかされた。

姉「最悪や……」

私「もう、やめたげて……」

そこに、拍車をかけるように仲間の商人が、

「身請けどころか、振られてるじゃないか」
「八ツ橋みたいな美人に、お前のような容姿の男が釣り合うわけがない」

と言い出して、場の空気は本当に最悪。
(次郎左衛門は、疱瘡(天然痘)に罹り一命は取り留めるも醜いあばた顔となっていて、今もその痕は残っていた)

姉「今言うなよ」

私「権八といい、黙っとれ」

それを聞いた治六が、涙ながらに、

治六「あなた達、それでも旦那様の友人ですか!!」

と訴えるも、彼らも部屋を出て行き、

次郎左衛門「八ツ橋のことは諦めて、私は田舎へ帰ります。振られて帰る果報者は私達のことです」

と言い残すと次郎左衛門は、治六を連れて帰っていった。

姉、私「次郎左衛門ーーーーー!!!!!」


  • 「籠釣瓶はよく切れるな」

年の暮れ。
次郎左衛門が、久しぶりに吉原へやって来た。

次郎左衛門「八ツ橋とまた初会となって遊びたいのですが……」

という申し出に、座敷にいる皆が歓迎し、八ツ橋もやって来て、座敷は2人きりになった。

次郎左衛門「八ツ橋、久しぶり」

八ツ橋「お久しぶりです。あの時は申し訳ありませんでした」

次郎左衛門「いいんだよ。さぁ、酒を飲もう」

八ツ橋「そんなに沢山は飲めません」

次郎左衛門「いいじゃないか。この世の別れなのだから」

八ツ橋「…いただきます」

どこか不穏な空気の漂う再会の中、酌を交わしたその後だった。

次郎左衛門「八ツ橋、あの時はよくも恥をかかせてくれたな」

と次郎左衛門は隠し持っていた『籠釣瓶』を引き抜いた。
本編中はカットされているが、次郎左衛門はお金を盗まれそうになったところを助けてくれた浪人から、『籠釣瓶』を授かっていたのだ。

ちなみに、この『籠釣瓶』はあの『妖刀村正』で、
「水も溜まらぬ切れ味で1度抜くと血を見ずにはいられない」
と言われています。

逃げようとする八ツ橋を斬り殺す、次郎左衛門。
その後、怪しく光るその刃を燭台に透かしながら、狂気に満ちた声で言った。

次郎左衛門「籠釣瓶はよく切れるな」


終演後。

姉「圧倒的バッドエンド」

私「もう無理、耐えられない」

と私達姉妹は、この悲劇に完全に打ちのめされた。

私「今すぐ、ハッピーエンドな勘三郎さんが観たい」

姉「7月の『鰯賣戀曳網』まで耐えるんだ」

私「無理ぃぃぃぃぃ」

姉「私も無理ぃぃぃぃぃ」

とあまりにも耐えられなくなった私達姉妹は、どうすればこの悲劇的結末を回避できるかを考えた。結果、

私「もう次郎左衛門は、吉原に行かずに真っすぐ家に帰ろう」

姉「それが1番ベストだわ」

という結論が出た。

私「ところでさ」

姉「ん?」


桟敷席に、浅丘ルリ子さんいなかった?

…え?



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