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会いたい人へ会いに行く日帰り旅。


夏のとある日の午前中。私は新幹線の中で焦っていた。

朝早く起きて、東京行きの新幹線に乗った。
大好きな女優さんの舞台を見に行くためだった。

ギリギリに着くのは嫌だったので早く東京へ着くようにと、
前々から時間もしっかり確認していたのに。

ところが途中で新幹線が止まってしまった。
理由は東京辺りで台風の影響がまだ少しあったからだ。

後少しのところなのに、と思っていた。
少し早く乗っていてよかったとも思った。

時間が経ち、新幹線が動き出した。
ほっと安心する気持ちと、
舞台の開演時間まで間に合うのかと焦りもあった。

東京駅にとりあえず走る。駅員さんに乗り換え線を聞こうとしたが
駅員さんも忙しそうだった。

「困った。」

東京駅は私にとっては迷路だった。

焦ると余計何もできなくなる。
私は、近くにいたお姉さんにどの電車に乗れば良いのかを尋ねた。

優しく教えてくれたので、その電車に乗った。

東京の電車はこんななのか・・・。
汗をかきながら電車の人の多さに圧倒された。

毎日通勤や通学でこれを味わうのか・・・。
それだけで体力が消耗されそうだ。

そう考えながらも少し焦っていると、渋谷駅に着く。

あの有名なスクランブル交差点もお構いなしに駆け抜けていく自分。
今まで体育の授業以外でこんなに一気にダッシュしたこと
ないんじゃない?と言わんばかりのダッシュだ。

ひとりの女が、リュックを背負って本気で走っているのだ。
きっと見かけた人もビックリしただろう。
とりあえず必死なのだ。

劇場に着くとインカムをつけた女性が
「早く早くっ。もう始まっちゃいますよっ!」
と私に言い、マイクで何かを話していた。

階段を急いで上がり、そのお姉さんが座席にも案内してくれた。
本っっっ当にギリギリだった。
私が席に着くと、私を待っていたかのようにすぐ舞台が始まった。

きっとさっきのお姉さんが舞台裏に伝えてくれたのだろう。感謝しかない。

首から汗が大量に流れていたが、そんなのお構いなしだ。
最初から見れるだけで嬉しかった。

もちろん、隣の席のお姉さんには
「汗臭いかもしれません。すみません。」と先に断りを入れた。

以前もこの女優さんの舞台は見に行かせてもらったが
その時よりも席が近く感じた。

大好きな女優さんがまさか肉眼で見れて、直接声が聞けるなんて。
幸せでいっぱいだ。全速力で渋谷を駆けた甲斐があったのだ。

舞台は2時間少しで終わった。
次は行きたかった場所へ歩いて向かう。

時間は午後4時前。さっき全く目に見えていなかったセンター街を通る。

こんな感じだったのかと、走っている時の自分を思い出すと
少し笑えてくる。

ふと歩く場所に素敵な場所を見つけたりする。
〝のんべい横丁〟名前に唆られるが今日は日帰りで時間がない。
また来てみたいな。

来たかったカフェについた。
お目当てはショートケーキだったんだけど、売り切れだったので
違うものにした。

とりあえず、朝から何も食べていなかった。
汗をかいた体に甘いものが染み渡った。

次は、あの女優さんが行きつけだと言っていたご飯屋さんに行こう。
そう思い店を出た。楽しみだなぁっ。

・・・なんて思っていたが、残念。


お店に着くと、〝CLOSE〟の文字があった。
調べていた定休日とは違うのに何故だろう。

そう思ったが、きっと台風があったからかな。なんて良しとした。
また来たらいい。

午後5時。諦めて東京駅にタクシーで向かう。
新幹線の時間は6時半だった。
もしかしたら丁度よかったのかもしれない。と少し思った。

東京駅について、お土産を見る。
大好きな東京バナナも買えたことに安堵し、新幹線に乗る。
お待ちかねの、

一杯やろう。行きは女優さんを真剣にみたくて飲んでいなかったのだ。
新幹線といえば、これが楽しみなんだから。

短い時間だったけど、東京を少しは楽しめたのではないだろうか。
次はもっとゆっくりしたいものだが・・・。

今日のつまみは渋谷をダッシュで走った自分だった。

何回思い出しても笑えてしまうが、よく頑張ったなぁ。

「お疲れ、自分。」


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