5才の王さま

 ぼくはここの王さま。

 小さなとこだけどぼくだけの国さ。

 家来もいないし町のひともまだいない。国を造ってる最中なんだ。城を造るにも町を造るにも1人でやらなければならない。
5才のぼくにはけっこう大変なんだ。
他の国の人からは変な目でみられる。ぼくは忙しい。

  ある時、けんかが強そうな兵士が2人やってきた。ぼくの領土をよこせって。もちろん、断った。そしたら町を破壊してきた。ぼくは必死に抵抗したんだけどすごく殴られた。ここはお前のものじゃないって僕は国を守るのも必死だ。
 今までもそうだった。場所を変えては1人でつくってきたんだ。こんぐらいで負けないぞ。
2人はまんぞくげに威張りながら帰って行った。

 はやいとこ壊れた建物を直さなきゃ。ぼくは少しずつまた作り始める事にした。体がじんじんしてる。我慢しなきゃ・・・・・とっても痛い。
 他の国の人達もひそひそ見ては帰って行った。

 そこにまた1人やってきた。

ぼくのことをじっと見てる。何かを決めたかのようにこっちに来た。なんだよって思って少し戸惑ったけどぼくはしらんぷりして作業を進めた。

 だけど彼は言った。ぼくも直すの手伝うよって。少しぽかんとしてしまった。初めてのことだ。ぼくはすごくすごくうれしかった。ぼくはずっと1人でやってきたから。

 2人でコツコツと直していく。あれしてこれしてって言うとすぐやってくれた。やっぱり1人より早い。

なにより楽しい。久しぶりにたくさん話した。初めての町人だ。ぼくはこの国をこんなふうに、あんなふうにしたいって思いを伝えた。町人くんもいいねって言ってくれた。ぼくはうれしかった。

 町人くんがこうしようあーしようと良くやってくれる。ぼくに無い考えの持ち主だ。すごい。でも話しをしていてちょっと問題がおきた。
 こっちのほうがいい、あっちのほうがいいってだんだんと多くなってきてぼくの考えとは違くなってきた。
 ぼくはそんなんじゃうまくいかないよ、ダメだよと言うんだ。だけど絶対こうしたほうがいいよって聞かないんだ。

 だから言ってしまったんだ。ぼくがここの王さまだって。
 
 そしたら町人くんは悲しい顔をした。町人くんはそれから喋らなくなった。そして怒ってしまったのか急に町を去ってしまった。いいんだ。ぼくがここの王さまなんだ。

 ぼくは早いとこ、この国をつくらなきゃいけないんだ。

 そうしてるとまたあの兵士2人がやってきた。今度はいきなりぼくの国に入ってきて城を建て始めた。
 ぼくはやめてよ、ここはぼくの国なんだって何度も言った。2人は聞かない。だからぼくはとても怖かったけど勇気をふりしぼって2人の城を壊してやった。
 2人はぼくを5個くらいにした大きさに見えるくらいに怒ってこっちに向かってきた。
ぼくはまた殴られ吹き飛ばされた。痛い。痛くて痛くて泣きそうだ。
 でもぼくはこの国を守らなきゃいけない。絶対に負けない・・・・ぼくに兵士がいたらなぁ・・・・。

 その時、やめてって大きな声が聞こえた。町人くんだ。助けに来てくれたんだ。ぼくはまた嬉しかった。でも町人くんの体はガクガク震えいた。
 他の国の人たちもまた変な目で見ながら集まってきた。
 町人くんは2人に弱々しい声で言った。争いはだめだよって。
そして、少ししてからぼくのほうにむかって、君の思いはわかるよ。でも、はなし聞いてほしいし、ひとりぼっちじゃ、ちゃんとできないよ。王さまにだってなれないよ。ってぼそぼそと言った。
 
 ぼくはなんだか涙がでてきた。言われたことにビックリしたんじゃない。そんなことは知っている。ずっとほんとはさびしかったから。

ほんとはみんなと居たい。

 2人はまだ怒っていたが町人くんの勇気に他の国の人たちも謝りなよって声をあげはじめた。2人もおどおどしはじめ、居心地がわるそうだった。
 2人はぼくのほうにふてぶてしくむかってきた。そして、一言、ごめんな。って。
 ぼくは2人に怒っていたけど、なぜだか心がすぅーっと晴れた。
 ぼくも、1人で占領してごめん。ここはみんなでつくる場所だね。って言えた。
 ぼくはなぜだかまたまた嬉しかった。

 町人くんがぼくと2人に一緒に協力して国をつくろうよ。っておどおどと言った。そして息を大きく吸って言ったんだ。
みんな一緒にあそぼ。って。
それはそれは曇り空をはねのける大きさの声だった。
 周りにいた人たちは、あっちからはうん、こっちからはいいよ、そっちからはおっけー、って笑顔で走ってみんな集まってきた。

 ぼくはまたまたまた嬉しかった。みんなありがとうって大きな声で言えた。
 この国はいろいろな建物が建ち並んだ立派な国になった。



 ゴーン、カーン、キーン、鐘がなった。そろそろ夜がくる時間。みんなは、また明日ね。って帰って行った。



「王さま、迎えにきましたよ。」声が聞こえた。お母さんだ。
 
「あら、今日のはとても立派な国ね。1人でつくったの?」

「あのね、今日はね、みんなでつくったの。」

「えっ?みんな?」

「うん、ぼくね、ぼくね、ともだちができたんだ。」

「ほんとに・・・・・・良かった。お母さん嬉しい・・・・ごめんなさいね。お母さん、いつもお仕事であなたを1人にさせてばっかりでね。あなたにお友達ができて、とても、とぉーっても嬉しい。」

「みんな、すっごいつくるの上手なんだよ。お母さん、今日誕生日でしょ。いつも完成しないから今日は絶対に完成させて見せたかったんだ。」

「ありがとう。絶対に忘れない1日になったわ。」
「じゃあ、大きなケーキを買ってかえりましょう、王さま。」

「うん。やったー。」

 ぼくは、王さまにはなるにはまだまだ勉強が必要だ。町を造るのも他の人と協力するのも気持ちを伝えるのも難しい。でも今は、王さまになるより、明日もともだちとたくさん遊ぶほうがいいな。


 そうそう、言い忘れてたけど、これはぼくとみんなで国をつくった砂場でのおはなしだよ。  完                           



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