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前を向けた話

私はうつむきがちな性分である。もともと自分がこの世に生を受けた理由について思い悩み、自分の存在自体が何らかの間違いであるという結論に至った。その証拠に、幼少の学校生活でも、成人してからの社会生活でも、変わらず消えるようにと周囲からは求められてきた。希望や居場所を感じたことは無い。誰かと目があえば気持ち悪がられるか、イチャモンをつけられて殴られるか金品を奪われるかのどちらかであるわけだから、実際にうつむいて過ごしていることも当然である。良い迷惑であるが、私のうつむきがちな性格やその言動について「希望を見つけろ」とか「前を向け」とかいった風にお節介にも矯正を試みる輩も現れる。ある日、私が珍しく顔を上げて歩いていることを、その類の輩から大層嬉しそうな顔で指摘された。そのとき私は縄を掛ける場所を探していた。

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