無縁仏になろうとして失敗した話(3)学生ニート編

無縁仏になろうとして失敗した話(2) の続き

めでたく学生ニートとなった私ですが、重圧から解放されたことでモラトリアムを楽しむ余裕ができました。子供の頃から叩き込まれてきたこの世は間もなく終わりを迎えるのでこの世で成功に価値はないという考え方は心の中に深く根ざしていました。そんな私にとって社会に出て働いて幸せな人生を送るという未来像は全くリアリティのないものでした。ただ自堕落に生きて行き詰まったら死ねばいいやと半ば本気で考えていました。親不孝ここに極まれりですが、8年間までは在籍できる国立大学でしたので、あと6年はこのモラトリアムを楽しめる。そんな風に考えていました。

家に引きこもっていてもやることは限られています。幸いネット環境がありましたので、2ちゃんねるに入り浸り深夜アニメを実況したかと思えば、ニュース系の板で天下国家の行く末を憂うというまさに駄目な人間をやっていました。今振り返ってみると、所謂ネトウヨの走りとでも言いましょうか、自分の現状は棚に上げて中国や、韓国を蔑み嘲笑うようなどうしようもない人間でした。

もちろん、ニートの分に漏れず小説を書いてみたり、ブログを運営して天下国家に物申すと言った活動も始めてみては長続きしないそんな日々でした。ちょうどテレビアニメ「NHKへようこそ」が放映されていた時期だったと思います。中途半端で何者でもない自分と主人公がクロスオーバーするようで、身につまされる思いもありましたが、なんでうちには岬ちゃんが来ないんだ!なんて馬鹿なことを考えるくらいには能天気に生きていました。岬ちゃんの引き取られた家庭が所属していた宗教団体のモデルがどうみても母親のアレだったこともあり多少複雑な感情を覚えはしていましたが。

そんな無為な日々にも飽きが来たのでしょうか、大学5年目の夏休みに軽い気持ちでアルバイトを始めました。もちろん、大学なんか通っていませんのでテストも夏休みも関係ないのですが、堂々と大学に行かないで済む2ヶ月という時期に多少の高揚感があったのだと思います。働くと言ってもやりたいことがあるわけでもないので、趣味に関わる仕事に就きたいなとホントにそんな軽い気持ちからでした。当時、アニメ、漫画、ライトノベルにはまっていましたので、月1くらいのペースで近くのターミナル駅のある街へとアニメグッズ、コミック、ライトノベルの買い出しをしに出かけていました。アニメ関連ショップというと分かる方なら大体3つか4つ思い当たると思うのですが、毎月その3〜4件を梯子して欲しいアイテムを入手していました。ただ、それぞれのショップに特に思い入れがあるわけでもなく、駅から近い順に回って欲しいものが揃ったら帰るというその程度のオタクと呼べるかも怪しい中途半端なく人間でした。

アルバイトに応募したのはそんなショップの中でいちばん駅から遠いお店でした。理由は明確ですぐにバックれて客として通えなくなってもいちばんダメージが少ないと思ったからです。そんな軽い気持ちで8月の1週目の金曜日に応募フォームから応募しました。

驚いたのは翌日、土曜日には面接の日時連絡がメールで届いたことです。面接はその翌日の日曜日でした。あまりの急展開に驚きましたが、ほぼ引きこもり生活を脱却するには勢いも必要だと思い面接に行くことにしました。何度か訪れたことのある店内でしたがバックヤードは予想以上に狭く物で溢れかえっていました。少し窮屈な思いをしながら面接を受けていると、面接官である店長は驚くべき発言をしました。
「いつから働ける?」
まさか、その場で採用されるとは思っていなかったので面食らいましたが、こうなっては勢いが大事と思い
「いつからでも大丈夫です!」
と答えました。
「じゃ、明日から来れる?」
「明日はちょっと…明後日からなら」
面食らっているうちにあれよあれよという間に2日後の8月第2週の火曜日から勤務開始することが決まったたのです。

そんな形で1年半程に及んだ学生ニート時代は終わりを迎えて、アルバイト大学生時代へと進んだのです。

無縁仏になろうとして失敗した話(4) へ続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?