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化粧水に使われている”パールエッセンス”って何者?

※この記事は執筆者が個人的なまとめとして作成したものです。
本文の内容には誤りが含まれているおそれが有ります。

皆さんは、”パールエッセンス”という言葉を見たことや聞いたことはあるでしょうか。これは化粧水やエッセンスリキッド、塗料などに用いられているもので、光沢を出すこと・肌の保湿などを目的として配合される成分の一種です。

何から出来ているの?

このパールエッセンスは、その名の通り真珠から作られます。具体的には、真珠貝(アコヤガイなど)の”真珠層”と呼ばれる部分を削り、微粒子状に加工したものです。この時点での名称は”真珠粉”といい、古来より漢方薬や化粧品として重宝されてきました。クレオパトラ、エジプトの女王、中国の皇后武則天などの古代の王族もこの真珠粉で美を保っていたと信じられています。

ちなみに真珠層とは貝の内側などに見られる虹色に輝く部分のことです。身近な貝類だとサザエなどにも見ることが出来ますね。パールエッセンスという名称ですが、実際には真珠貝以外の貝を用いることも多く、真珠のみから作られるケースは稀で、そういったものはより高価で取引されます。日本の伝統工芸品でもある”螺鈿細工”は、この真珠層を磨いて様々なものに貼り付け装飾する手法を用いて作られます。

アワビの一種、パウア貝の虹色に輝く真珠層

画像1(出典:構造色とは: 4. 多層膜の干渉

美しい真珠層を持つアンモナイト(レインボーアンモナイト)もいます。

画像2(出典:構造色とは: 4. 多層膜の干渉

真珠層を用いた工芸品、螺鈿細工制作の様子

画像3(出典:【明日への扉】貝の輝きを極めた美の骨頂~100年色褪せない螺鈿・青貝塗~

その他、パールエッセンスを使用したもの

パールエッセンスはイミテーションパール(いわゆる偽物の真珠)を製作するための塗料としても利用され、ガラス製やプラスチック製のビーズにパールエッセンスを塗布することで、本物の真珠とよく似た見た目に加工することができます。このイミテーションパール、大人の女性には馴染み深いものかもしれません。(うちの母もイミテーションパールのネックレスを持っており、お葬式などで身に着けていました)

本物の真珠(左)とイミテーションパール(右)

画像5(出典:【真珠】本物と偽物の違いって?騙されない見分け方と確かめる方法!パールの種類

パールエッセンスが肌に与える影響は?

パールエッセンスが貝から出来ており、昔から化粧品として使われていたことは分かりました。では、その有効成分とは一体何なのでしょう。それは加水分解コンキオリンという化合物です。この加水分解コンキオリンにはグリシンという物質が含まれており、これが保湿性を高める上で大活躍をするのだそうです。その他の効能としては、抗炎症・アンチエイジング・治癒促進・肌の弾性を回復・美白・消毒などがあります。

消毒、というのは意外な効能ですが、パールエッセンスは、病原の感染拡大を防ぐために、外科医の手袋に使用されることもあるそうです。(※その手袋を検索してみましたが見つけられませんでした。一般には流通していないのかも?)

美白効果は歯のホワイトニングにも利用されています。画像左下の容器をよく見るとPEARL ESSENCEの文字が。ちなみにこれは歯磨き粉です。

画像4(出典:BREYLEE Teeth Whitening Powder Toothpaste

アレルギー・刺激性は大丈夫?

しかし、気になるのは副作用やアレルギーです。どんなに優れた化粧品でも、使用者の体質によっては逆効果となることもあります。…というわけで、アレルギーの症例や刺激性などを調べてみたのですが、現時点のデータではそのようなケースは報告されていないそうです。念のため、貝にアレルギーを持つ人はパッチテストなどを行うことが推奨されていますが、食事によって貝類を摂取した場合とは異なり、貝の真珠層を肌に塗布した程度ではアレルギーと見られる反応は確認されていないとのことです。この成分自体は、基本的に誰にでも使えるものと解釈しても大丈夫そうですね。

フランスとイミテーションパール

17世紀のフランスで、とある魚の鱗を利用することで模造真珠を作り出せることが発見されました。その魚とは、ブリークフィッシュという淡水魚で、ヨーロッパ全域の川や貯水池などに生息するかなりありふれたお魚さんです。一応食べることも出来ますが、小さく、味もいまいちで身も少ないため貧しい家庭の食事として知られていました。

ブリークフィッシュ。親指大の。

画像6(出典:Please add Common Bleak, Alburnus alburnus

当時のフランスでは、これらのブリークフィッシュの鱗から模造真珠を生成し、それらを本物の真珠として売り捌く詐欺が横行していました。当然、本物の真珠を持っている人から見ればそれが偽物であることは一目瞭然だったのですが、そのような人たちはごく一部の富裕層に限られており、圧倒的多数派であった大衆は教養に乏しく、彼らを騙すには粗悪な模造品でも十分だったといいます。

彼らが大金をはたいて購入した憧れの真珠が、実は貧困層の食卓に並ぶ小魚から出来ていると知ったその時はさぞ落胆したことでしょう。女性へのプレゼントに…とホクホク顔で購入した男性の将来を思うと心が痛みます。我々の時代だって、結婚指輪のダイヤモンドが実はプラスチックだった!ということはあり得ない話ではないのです。想像はしたくないですが…

18世紀 模造真珠工場の様子。作業員は殆どが女性であった。

画像7(出典:Pearl Essence

化粧品として生まれ変わるブリークフィッシュ

偽真珠詐欺横行の一方で、ブリークフィッシュは美容界に新たな風を吹き込む存在となっていきます。ブリークフィッシュの鱗はアイシャドウや、クリーム、フェイスパウダーなどに配合され、女性たちにきらきらと美しい光沢をもたらしました。「真珠のような美しい肌」を求めた女性たちは、文字通り真珠の粉末を身に纏うことを望んだのです。(実際には魚の鱗なのですが)。

しかし、これは結果的に良い結果を生みました。一匹のブリークフィッシュから抽出される美容成分は非常に少なく、抽出のコストや希少性などからそこそこ高価な代物だったのですが、そのおかげでこれまで細々と生活していた漁師の中には巨万の富を得る者もいたそうです。そして何より、この成分には毒性がなく化粧品の成分との相性も良かったため、子供から大人まで誰でも使うことができ、ますます人気を博していきました。

そしてその人気は1900年代に突入しても衰えることはなく、根強いものとなりました。この頃には、ブリークフィッシュよりも手軽に生成できる類似成分、オキシ塩化ビスマスが使用されるようになり、「ビスマスホワイト」の名で知られています。この成分を使用して作られたパウダーは、パールパウダー、パールホワイト、ブランデパールなどの名前で呼ばれることもありました。主に顔に塗布するフェイスパウダーとしてよく使われていました。

1959年 ビスマスホワイトのフェイスパウダーを使用した女優。

画像8(出典:Pearl Essence

まとめ

”パールエッセンス”という言葉は聞き馴染みがなく、どれ、どんなヤバい成分なのか調べてやろう…などという邪な気持ちで調べ始めたのですが、調べれば調べるほど、健康上のデメリットが無いという情報ばかりが出てきて、少し拍子抜けでした(良いことなんですけどね)。化粧品に含まれる成分や添加物というのは、人によっては体に合わず毒となったり、そもそも人体に使用するべきものではなかったりと、様々な紆余曲折の歴史を持つものだと思っていたので、このようにどこのサイトを読んでも安全性がべた褒めされている物質なんてのは、かなり珍しいのではないでしょうか。私としては、社会の気づかない黒い事実を暴いてやろうという意気込みだったので、正直ちょっとがっかりしているのですけどね…

途中でお魚のほうに興味が流れてしまったのはごめんなさい。この辺の歴史がとても面白く感じてしまって…どこにでもいる雑魚が真珠や高級化粧品へ生まれ変わるなんて、夢がありませんか?…ないですか?詐欺はダメですけどね!

冒頭でも書きましたが、この記事は私個人のために作成したもので、見直しや情報源の精査などは一切やっておりません。間違った情報が含まれている可能性があることを留意して、お楽しみ頂ければ幸いです。

当記事を作成するにあたって参考にしたサイト:
加水分解コンキオリンとは…成分効果と毒性を解説
真珠で保湿?美容成分としての真珠
Pearls In Skin Care
Pearl Essence

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