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10歳の自分に謝らなければならない


名古屋に一人旅に行った。
このご時世あんまり外に遊びに行くのもはばかれるんだけど、政府がgotoトラベルやってる訳だし、ようやく受験が終わって遊べる訳だし、10代最後な訳だし、なんだしなんだしAGC…って事で。

朝6時半、サラリーマンしかいない新横浜で名古屋行きの新幹線のチケットを買う。
眠たそうなサラリーマンたちの横を、コロコロと音を立てながら歩くキャリーケース少年は、朝の景色にあまりにも馴染んでいない。
「似合ってないなぁ…」なんてポリポリ頭を書いたのはこれで2度目。初めて朝帰りをした日の山手線を思い出した。

新幹線の車内販売で飲み物を買う。小学生の頃の家族旅行で、車内販売でアイスが欲しいと親にせがんだら、「高いからダメ」と一蹴された。あの日から、ずっと車内販売は僕の憧れで、ひとりで新幹線に乗る時は必ずなんかしら買うようにしてる。見てるか?10年前の自分。

そういえば、10年前、2分の1成人式というのがあって、「二十歳になる自分へ」というお手紙を書いた気がする。あの頃思い描いていた大人はあまりにも"大人"で、10年前の自分に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。あの頃はなんだって夢見れたっけ。いや頑張ればなんだってなれたか。「努力は報われる」なんて言葉は子供の為にある言葉だけど、もうちょい努力しておいても良かったんじゃねぇかと思う。自分より年下のやつが何億と稼いでいて、自分は車内販売の数百円で満足しているの、あまりにも小さすぎやしないだろうか。

ふと開いたGoogle マップで気づけば熱海を越えていて、新幹線のスピードに心が追いつけなくなっている。スイカの種みたいに母親の子宮から飛び出した僕の人生って、あっけなく20になっていくもんなのか。成人した大人たちはその恐怖を酒とタバコで飛ばして生きているのだろうか。それともはなからそこから目を向けてないのだろうか。


のぞみに乗ったので駅にはほとんど停まらず、8時前にはもう名古屋に着いてしまう。もちろん三河安城には停車しない。

あれからいくつもの停車駅があったはずなんだ。立ち止まって考える時間はたくさんあったはずなんだ。手遅れだよ、もう。

10歳の僕が新横浜を出発して、20歳の僕が名古屋に行く。
現在、三河安城駅を定刻通り通過しました。





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