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第9話 マタニティブルー?

どんどんとお腹が大きくなってきた妊娠30週前後、ちょっとした鬱症状に見舞われた。

グレさんの家族たちと過ごした賑やかな日々も瞬く間に過ぎ、急に虚無感というか、でかい腹と共に自分だけがポツンと取り残されているように感じ、急に悲しい気持ちに襲われた。
疲れもあったのだろうけど。

30週が過ぎてくるとお腹もまた一層重たくなるけど、そろそろいつでも入院できるように準備しといたほうがいいだとか、赤ちゃんがやってくる準備としてこれが必要だとか、急に考えることが多くなった。

どうしようかなぁ〜と思っているところに、「ベビーカーとかベビーベッドとか要るよ…!ベビーバスとか、あれもこれも」とグレさんが色々言い始めた。とりあえず、赤ちゃん用品店へ行ってみるかという事になり、色々物色をした。ベビーカー売り場を見ながらワケが分からない…と目を白黒させていたのだろう、店員さんが色んな説明をしてくれた。

「このタイプは四輪駆動タイプで5〜6キロですね。そのくらいだと、赤ちゃんも抱っこできるし、ベビーカーも片手で持てるし、他に荷物も持てるので軽量と言われる類の…」と説明されるも、頭の中では『ろ!6キロ…!!か!片手…!!』と衝撃が走った。

6キロ+赤子+色々が詰まったバッグ = 疲弊

というかベビーカーなのだから押すもんなんだけれど、その時はその計算式で頭が埋め尽くされた。そしてベビーカーを試しに押して店内を周った際に全身から拒否反応を感じた。

ホーローおまるだけは準備出来てます。

どんどん大きくなる腹とは対照的に、何が必要かわからなくて結局何も用意できていないという焦りや、ベビーカーとかほんとにいるの?という疑問や、どんな生活が待っているのだろうかという不安が一気に襲ってきた。

かと言って、里帰り出産でもなく東京で産むのでグレさん以外に頼る人がいないということに色んな人が心配をしてくれた。しかしながら実家の事情で帰れない理由もあるのと、そんなに無謀なことなのか?という疑問がまた私を悩ませた。

そこからどんどんと心配の虫は暴走し始め、グレさんの姪っ子が誕生日会を開いて楽しそうにしている様子を見ながら、『誕生日会も開いてもらったことのない自分が果たしてそんなことを自分の子にしてあげることができるのか…』とか、今から5年先の心配をし始めてしまい、気分の落ち込みは底辺に達した。

そして、いつものごとく私は号泣しながら、何を伝えて良いかもわからず、とりあえず「とりあえず買って良いと思えるのはベビーベッドだけで、ベビーカーは必要って思えるまで買いたくない」と訴えた。
その後、自分の心配をつらつらと伝えた。
グレさんは誕生日会の心配をする私に驚きつつ、笑っていた。「もうそんなことを考えているなんて可愛い」とすら言ってくれた。

一度はメルトダウンを起こさなければ気が済まないらしい自分にも、飽き飽きしてしまうが、もうそこはホルモンのせいにしておくことにする。あと何回これがあるのだろう…(呆)と思う。産んだとて終わらないだろう…

ついつい気を張りすぎる癖があるので「ふわふわ〜」とか「ゆるゆる〜」と唱えながら息を吐くと意外に良かった。カードに書いてお守りのようにしている。

ふと気づけば考えているような日々が続いたが、行き着いたのはこのお腹にいる子は私とグレさんのそれぞれの人生の糸が結ばれてやってきた縁なのだということだった。これまでの人生で紡いだ糸が繋がっていって、私はグレさんという宝物に出会ったんだなぁと感じられる。
そして、お腹でグネグネ、ポコポコと動き回るこの子もまた、私たちそれぞれの糸が繋がっていった上に出来上がった新たなもの。

すでに彼女は私に色んな気づきをくれるわけで、私は彼女と共に一歩ずつ maman(マモ) になろう。

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