【短編?】会話の代替
「いらっしゃいませ、本日は何をお求めですか」
「"逃避による幸福の可能性"を一つ。支払いは…"幸福の代替物の代替物"は使えたよね」
「はい、お使いになれます」
「いくつか見繕ってもらえるかな」
「かしこまりました、ではこちらの"藝術"などはいかがでしょうか」
「うーん、今日は頭を使わないヤツがいいな」
「では、こちらの"快楽"などはピッタリかと」
「ラインナップは、あぁ、うん、"愛"と"非致死性の毒物"の二つをもらおう」
「ほかにも何かお求めになりますか」
「そうだな、もう少し中を見てもいいかな」
「かしこまりました、ごゆっくりどうぞ」
「あれ、こんなの前にあったっけ」
「こちら新商品の"継続的な承認"となります」
「"継続的な承認"、そんなのもあるのか」
「最近の若者に特に好評ですよ」
「流行ってるってこと、これが」
「昔は高級品だったんですが、今はかなり安価になったのが大きいですね」
「ほぅ、一応幾らするのか聞いてもいいかい」
「大体の方は"今までの人生"の切り売りによる分割決済を希望されます」
「なんだそれは、実質無料じゃないか」
「一応後の処理が大変だったりもするんですが、少量ならそういう問題も無いかと」
「後が大変というのは具体的には」
「そうですね、今の"継続的な承認"は安価ゆえ少し変質しやすいのが問題なんです」
「なるほど」
「他の幸福に変質するならまだ良いんですが、直接"不幸"に変質するケースも御座いまして」
「溜め込むとマズいってことか」
「こちらとしても、使用後は別の形で"幸福"を追い求めることを推奨しています」
「意外と扱いが難しいんだね」
「ただ、その辺りさえ気をつけて頂ければ、今最も利率が高い"幸福の可能性"になります。実際に利用されてる方も大勢いらっしゃいますよ」
「ふん、まぁ、面白そうだな。この"継続的な承認"も一つくれ」
「かしこまりました。お支払い方法は如何なさいますか」
「インターネット決済で、今までの人生の中から"ギターの経験"と"英語が堪能"で足りるかな」
「それと"映画への造詣"で丁度でございます」
「持ち合わせがあってよかった」
「こちらお品物でございます」
「そうだ、"快楽"も買ったんだった」
「こちらいつも通り包装させていただきました」
「助かるよ、じゃあ」
「またのお越しを心よりお待ちしております」
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