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【エッセイ】 世界一キライなもの

カラスがキライだ。
死ぬほどキライだ。


昔から鳥類は苦手だった。
小学生の頃は、ハトさえ怖かった。
なんなら、今でもまだ怖い。
よくみると、なんだか気持ち悪い。
本当に平和の象徴?
ここに、ひとり平和じゃない人いますけど。

でも、なんとかハトについては若干克服した。
そうしないと、日常生活を送れないから。
ハトにビクついているようでは、よく晴れた日曜日に公園を気持ちよく散歩もできない。
ハトなんかに妨害されてたまるか。
生活を。
「平和」な生活を。

カラスがキライだ。
死ぬほどキライだ。

中学生の頃、通学路をいつもビクビクしながら歩いていた。
カラスのせいだ。
通学路は緑が多くて、その茂みの中に奴らはいた。
たくさんいた。

ある日の帰り道。
電柱にカラスがいた。
悟られぬよう足早に通り過ぎようとした。
その時、耳音で音がした。
肩に何かを感じた。
温かい何かを感じた。

糞だった。
糞を落とされたのだ。
肩に。
思春期の肩に。

泣いた。
泣きながら家へ帰った。
泣きながらシャワーを浴びた。

カラスがキライだ。
死ぬほどキライだ。

あれから何年経っただろう。
いろんなことがあった。
社会的にも。個人的にも。
たくさんの時間が流れた。
でも憎しみは消えない。
怒りは消えない。
時間は解決してくれない。

家から一歩外へ出れば、そこは平和ではない。
ヤツらがいるからだ。
常に電柱を見上げ、ヤツらがいないことを確認する。
ヤツらがいれば、どんなに急いでいても遠回りする。
電車を乗り過ごそうとも。
約束の時間に遅れようとも。
急がば回れ?
回らされている奴がここにいる。

カラスがキライだ。
死ぬほどキライだ。

代々木公園は素敵な場所だ。
新宿という大都会の中のオアシス。
カップルや家族連れが楽しそうにピクニックをしている。
晴れた日曜日の平和な光景。
でも行くことはできない。
ヤツらがいるから。

ゴミを漁るおぞましい姿。
気味悪く光る漆黒の羽。
見る者の心をえぐり出す鋭いくちばし。
断末魔の叫びに似た醜い鳴き声。

カラスがキライだ。
死ぬほどキライだ。
そんな自分がキライだ。

世界一キライなもの。



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