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ブームか破綻か、Web3スタートアップの成長の測り方

この記事は、2022年5月26日にCoinListで投稿されたAlex Topchishviliの記事を引用しています(原文のURLはこちら)。

この10年間、Web2プラットフォームやサービスの非中央集権版を構築するWeb3プロジェクトが爆発的に増えているのを目の当たりにしてきました。例えば、CompoundはWeb3版のBank of Americaを、UniswapはNYSEを、Yearn Financeは分散型 Blackrockを構築しています。

理論的に、今日存在する9000以上のWeb3プロジェクトは、オープンソースなうえパーミッションレスで、トークンエコノミーでサポートされています。しかし、多くの新しいWeb3プロジェクトはそれ自体が分散型ネットワーク、プロトコル、DAO、dappsと呼ばれていますが、そのほとんどは実際にサービスを持っている事業体で、サービスを持つ事業体として認めなければ成長は望めません。

イデオロギーを意識していても事業拡大に直接的に寄与するわけではありません。「プロトコル」や「DAO」といった言葉を与えても、人々が実際に使いたいと思う製品を開発して規模を拡大するという要件がなくなるわけではないのです。実際、Web3プロジェクトは非中央集権化されたプロジェクトとして既存サービスを凌駕することが求められ、そのおかげで仮想通貨のシステム体系を背景にしたサービスを使用する際に生ずる大きなユーザーエクスペリエンスの不利益をカバーします。また、10%のユーザーにとっては自分のデータを所有することが重要かもしれませんが、ほとんどのユーザーはプライバシーではなく、利便性を求めているのです。

しかし、これでもまだ成功をどのように評価するかという問題が残っています。最近まで、Web3プロジェクトは、主にレート(単位当たりのドル換算金額)と時価総額という2つの指標で判断されてきました。しかし、私たちが歴史から学んでいるように、これは長期的な成功につながるような優れた指標ではありません。

決して網羅的なものとはいえませんが、ここではDeFi、レイヤー1とレイヤー2、Play-to-Earnゲーミングという3つの主要なカテゴリーに分けて、それらに適用される有用なWeb3固有の成長指標をいくつかご紹介していきます。

DeFi:資金流入とインテグレーションによる価値の成長

分散型金融(DeFi)のアプリケーションには、Uniswapのような分散型取引所やCompoundのような融資プラットフォームが含まれます。ほとんどのDeFiプロジェクトは、中央集権的な開発チームによって開発され、その後トークン保有者の分散型コミュニティに運営管理を分散させようとします。ここからは、3つの主な成長指標を紹介します。

Total Value Locked (TVL)

TVLは、創業以来DeFiアプリのOG成功指標となっています。これは、取引、ステーキング、レンディングなどのためにDeFiプロトコルに預けられた暗号資産の全体的な価値を表します。TVLはAaveやCompoundのような借入・貸付プロトコルにとっては素晴らしい指標ですが、Uniswapのように主に取引量によって成長を測定する分散型取引所にとってはあまり有用ではありません。長期的な成長を測定するのにTVLを使用することの欠点は、ユーザーやトレーダーがより高い利回りを求めてDeFiアプリから別のアプリに移行することが多く、少数のホエールが活動の錯覚を起こし、TVLがあまり粘り強い利用指標にならなくなってしまうことです。しかし、TVLは信頼性を示す指標としては最適です。資産は有形価値を持ち、他の生産的な用途に関する機会費用を担っています。

アクティブウォレット

従来のマーケットプレイスがデイリーアクティブユーザー(DAU)とマンスリーアクティブユーザー(MAU)を測定するのに対し、DeFiではユーザーが単にウォレットを接続して売買やステーキングを開始するだけです。DeFiにおけるDAUとMAUのアナログ測定は、デイリーアクティブウォレットとマンスリーアクティブウォレットとなります。

インテグレーション数

DeFiアプリは互換性があり、他のDeFiアプリと相互作用して構築できます。そのため、アプリが他のウォレット、取引所、DeFiサービスで使用されるインテグレーションの数と質も成長の指標になります。開発者の活動は、DeFiのプロジェクトの成長およびマーケットリーダーシップを達成するためのキーポイントとなります。

レイヤー1・レイヤー2:開発者の活動を通じた成長

レイヤー1とは、Ethereum、Solana、Near、Avalanche、Flowなどのプロジェクトを定義するベースレベルのブロックチェーンを指します。Polygonのようなレイヤー2のプロジェクトは、スケーリングを提供するために既存のレイヤー1の上に乗っています。これらのプロジェクトの成長は、主にこれらのプロトコルの上に構築されたアプリケーションによってもたらされます。ここからは、3つの主な指標を紹介します。

開発者数とアプリケーション数

レイヤー1とレイヤー2のプロジェクトはオープンソースであるため、誰でもその上に構築し、統合することができます。あるプロトコルの上に構築された開発者の数とアプリケーションの数は、おそらくレイヤー1・レイヤー2プロジェクトにとって最も重要な成長指標です。プロジェクトに貢献している開発者の数を定量化する方法は、Githubのような開発者環境やライブラリのアクティブユーザー数を確認することでしょう。スピンオフアプリがユーザーと投資家の両方から支持されればされるほど、ベースとなるプロジェクトの成長も期待できます。例えば、Flowブロックチェーンは、2020年12月にネットワーク上のアプリが50個だったのが、2021年末には650個に増加していました。Flowの上に構築されたプロジェクトは、昨年7億ドル以上の資金を調達し、Flowブロックチェーンの取引拡大とユーザー普及に貢献しました。

アクティブウォレットの数

ほとんどのレイヤー1とレイヤー2のプロジェクトは独自の暗号ウォレットを持ち、ユーザーはそのインフラ上に構築された分散型アプリケーション(dapps)と売買、取引、出資、交流することができます。DeFiの場合と同様に、デイリーアクティブウォレット(DAW)とマンスリーアクティブウォレット(MAW)の数は、重要な成長指標です。Metamask(Ethereum)、Blocto(Flow)、Phantom(Solana)などのサードパーティウォレットは、しばしばそのプロトコルのエコシステム内からユーザーの資産にとっての主要なハブとなることがあります。

取引の総数と総量

取引の数、(10万ドル以上の)大口取引の数、および特定のプロトコルの取引量は、(多くのプロジェクトの最終目標とは必ずしも一致しませんが、)交換手段としてのネットワークの使用を示す良い指標になります。また、総取引量のドルシェアは、競合他社に対する市場シェアを測定するために使用できます。

Play To Earnゲーミング:パートナーシップやプレーヤーへのインセンティブによる成長

Play-to-earn(P2E)ゲームとは、プレイヤーが現実世界で価値のある報酬を受け取ることができるテレビゲームのことです。通常のテレビゲームでは、ゲーム内のアイテムはプライベートなデータネットワーク上に保持され、ゲームクリエイターが所有していますが、NFTでは、プレーヤーは購入したユニークなアセットを所有することができます。また、プレイヤーはゲーム内アセットのNFTを所有すると、それを作成したプラットフォーム外で自由に販売できるなど、通常のゲームでは実現できないことができます。さらに、プレイヤーはゲームそのもののガバナンスにも意見を出すことができます。暗号ゲームの成功の見本となるような持続可能なモデルはまだありませんが、P2Eプロジェクトを評価する上で有用な3つの指標を紹介します。

アクティブプレイヤー数

1日(または月間)のアクティブユーザー数は、ゲームの成長と人気を測る重要な指標です。ゲームのコンテンツの豊富さは成功に不可欠ですが、コンテンツが豊富なゲームでもユーザーが少なければ価値はなくなります。また、アクティブユーザー数を維持する能力も重要です。例えば、Roninチェーンで構築されたAxie Infinityでは、ゲーム内通貨であるSLPの収益が減少しているのに加えて、1日の平均ユーザー数は過去6ヶ月間で12万人から約2万人に減少しています。

ユーザーあたりの取引量

この指標は、プレーヤーあたりの平均送金額を指し、ユーザーエンゲージメントのレベルとトークン設計の健全性の両方を反映しています。ユーザーあたりの平均取引量を伸ばすことは、収益を伸ばすためのキーポイントでもあります。プロジェクトを評価する際には、ユーザーあたりの平均取引量の安定性と成長性を確認します。

ギルドやパートナーシップの数(と質)

Web3ゲームでは、成長と分配は、通常プレイヤーの紹介とギルドとのパートナーシップによって達成されます。暗号ゲームのギルドとは、一緒にプレイし、データやゲーム内のアセットを共有し、他のゲーマーをサポートするゲーマーのグループです。Yield Guild Games、Ancient8、Good Games Guild、Merit Circleなどのギルドは、新規プレイヤーがゲームを始める際に、通常では購入できないようなゲームアセットを貸し出せるようにしています。また、スカラシップやオンラインマーケティング、直接投資を通じて、P2Eゲームのデイリーアクティブユーザーの増加も支援しています。ギルドは、ゲームの品質、コミュニティの強さ、ゲーム経済の堅牢性という3つの要素を考慮して、支援するゲームを選択します。

結論

Web3が成熟するにつれ、顧客、収益の原動力、真の成長指標を理解する必要性も出てくるでしょう。この記事で紹介した指標は、それらだけで物語ることはできませんし、しばしば異なる注意点や制限を伴いますが、Web3プロジェクトの方向性を示す良い指標となるのは間違いありません。そのような指標を理解することは、ビジネスやサービスの決定、またコミュニティのインセンティブを導くのに役立ちます。

Web3で様々な新しい成長モデルが出現すると期待され、今後のプロジェクトの進展とそれに伴う指標が楽しみなものです。

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※この文章は下記からの引用です。
Boom Or Bust: How Web3 Startups Measure Growth
Alex Topchishvili (CoinList)
https://bit.ly/3NQq9Oe

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