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無駄の煮こごり

私たちが最後まで持って行けるものは何も無い
なのに意味のありそうなことや価値のありそうなものをできるだけ掬って並べて安心していたい
意味がなさそうで価値がなさそうなものは時間とお金の無駄で 無かったことにされる

なくても生きていける
でもあったら嬉しくなってしまう

歩き疲れた時に現れてくれるベンチ
驚くほどすべすべの石
ちょうどいい枝(持ちやすい)
栄養が無いらしい胡瓜
使い道のない長い紐がついてるブラウス
届けない手紙
二度と読み返さない日記
他人の家の夕飯の匂い
雨が染み込んで色が変わったアスファルト
誰かが誰かを呼ぶ声
力技で曲げたスプーン(先生に叱られた私の超能力)

サウンドオブミュージックのmy favorite thingsばりに並びたててみた

私はできるだけ、できるだけこういうものを集めて忘れずに持っていたくなる
でも これらも同じように持っては行けない
何も持って行けないなら、それまで好きにする
他人が笑っても馬鹿にしても私がいいと思ったようにするし捨てずにいる

ただ、まだよく間違える
後で気付いたり気付かなかったりする
それすらいいことにする

欲張りな私は持って行けないと知りながら
最後の最後まで鍋いっぱいの無駄の煮こごりを抱えていたいのだ

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