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もう観た?もうしゃべっていい?「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」感想文とイラスト

ジョニー・デップのウォンカの、若かりし頃か。
最初はそれしか思わなかったのが、予告映像やキャスティングを知るにつれ、これは観に行くやつだ、と確信した。
わくわくしながら待った公開日の金曜、仕事終わりに間に合うのはIMAXのレイトショーだけ。
遅い時間のまばらな客席でのお楽しみ。
甘いチョコやら何やらいろいろ、たくさん味わってきた感想文を提出する。



ピンクのコットンキャンディに乗って


若き日のウォンカが夢を歌いながら軽やかに登場してからずっと、上映時間中ほとんどずっと笑い顔になっていたと思う。
「みんなが笑顔になってしまう」
ひとことで言うとそんな映画。

ウィリー・ウォンカは、自信作のおいしいチョコレートをみんなに買ってもらうことだけで帽子、ではなく頭がいっぱい。自分が損とか困るとかをちっとも気にしないから、持っていたコインもあっという間に消えていく。
魔法といってもいろいろで、発明家でもあるウォンカの魔法は日常からつながっているような気がする。手品師をマジシャンというが、抜け穴が用意してある手品に似ている。
招待状が届いて学校に入学し、呪文を学ぶ魔法とは少しちがっていて、何も持たずとも、誰もが想像力と心待ちひとつでその世界に飛びこみ、一緒に楽しむことができる。
メアリー・ポピンズの魔法もそうだと思い出した。
いろいろなものが入っている不思議な両者のカバン、あれは‥‥もう、魔法でしかないか。
それにしてもイギリスは魔法の宝庫である。

ウォンカの最初の仲間となる女の子ヌードルは、生い立ちや耐えてきたことを表すようなグレイッシュブルーの衣装だ。
夜の動物園からの帰り道、2人で屋根の上を散歩した時に掴んでいた、数えきれないほどたくさんの、カラフルな色とりどりの風船。小さなことひとつずつ、少しずつ、辛い暗いことの多い毎日に、明るい色味がさしてきたようだった。

閉じ込められたあの洗濯作業場は「今おかれている辛い環境」を指すのだろうか。
あきらめて、ただ耐え続けるのではなく、誰かと一緒に作戦を立てたり、さまざまな準備を万全にととのえることができたら、思い切って抜け出せるかも、と言われているような気がした。

みんなと協力してこぎつけた最初のお店は素晴らしかった。
チョコレートの川が流れて、花もカップも食べられるお菓子で、天井からしっかりと吊られたピンク色の綿菓子に、お砂糖がまぶしてあるに違いない7色の虹にもピンクが。

たとえ炎で全てが燃えても、選択の余地なく乗りこんだ船が爆発しても、濃厚なチョコレートドリンクで溺れそうになっても‥‥
何度もうつむいて涙もこぼすけれど、そのたびに必ず立ち上がって進んでいく。
しかも、悪いやつをやっつけるというよりは、斜め横から得意分野で攻めた結果、敵が自滅するというような、戦いに見えない前進の仕方は心やさしい。敵も、お金はなくしても本当のところでは傷ついていないのが、甘いチョコレート職人のやり方なのだ。


ティモテのこと、全然わかっていなかった


ティモシー・シャラメが、忘れられなくなってしまった。
ルカ・グァダニーノ監督「君の名前で僕を呼んで」と、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督「DUNE/砂の惑星」しか観ていなかったが、モデルような美少年、線が細くてはかなげで、物憂げでもあり、親しくない人には無口、そんなイメージだった。
ところが今作についてのインタビューやコメントを見聞きするうち、知っていた彼より少し大人になって、真面目でチャーミングで、映画を心から愛している俳優さんなのだと知った。
勝手に抱いていたイメージは、彼の演技力の産物であったのだ。
ティモテ(お家ではフランス式のこの呼び名だと知り、敬愛を込めてのティモテ呼び)の演じるウォンカはソフトな歌声とともに、軽やかに宙を舞ったりピンク色の舞台でステップを踏む。
ミュージカル映画であると身構えずに、たくさんの人に観てほしいと思う。声量があって高らかに歌いあげるタイプではなく、歌を口ずさみながら、夢のこととか、とっておきのことを話してくれているような歌い方だ。
でも大事なところでは声をはる。
広場ではじめて自己紹介する場面だ。
〝My name is,Willy Wonka!〟
このときの挑戦的な、夢がかなうと信じて疑わないキラキラした瞳が好きだ。

今から「DUNE/砂の惑星part2」が待ち遠しい。
U-NEXTとNetflixにたまっているマイリストから、まずは「ストーリー・オブ・マイライフ」を観よう。
ティモテ不足を補うためにも。



これでもかと言わんばかりの豪華キャスト


たとえばまだ若くて、あまり映画を見ない人が、今作ではじめてヒュー・グラントを見たとしたらどう思うのだろう。
ウンパルンパのキャスティングを知って、映画館へ行くことを決めたようなものだ。
「甘いマスク」とか「ハンサム」の代名詞のようだった(過去形でいいのか?)あのヒュー・グラントが、オレンジ色の肌に緑の髪で身長45㎝になるのを見る日が来るとは。
そして本当におもしろく、いい感じに嫌味があって自分勝手なので、ウンパルンパを演じることそのものが、ヒュー・グラントのブリティッシュジョークなのだろうという結論に達した。
初対面だったという方は、まず「モーリス」の画像をチェックして、ぜひ「ラブ・アクチュアリー」や「ブリジッド・ジョーンズの日記」も観るのがおすすめ。(自分はコリン・ファース派であるが)
きっと、ウンパルンパを見る目が変わるはず。

映画館行きを決定した理由はもう1人、神父役のローワン・アトキンソン!
あの、一度見たら忘れられないコメディ「Mr.ビーン」の人である。もっと見たくなってしまった場合は、いい意味でアクが強い彼の珠玉のコメディ作品を鑑賞しよう。

また、美術や衣装の色彩や造形が魅力的で、映像をとめて隅々まで眺めたいくらいだった。
キャストも、スタッフも豪華。
歌、音楽、光と影の映像やカメラワークも一丸となって、この甘いだけではなく、いろいろな味に変化して最後にとびきりのあと味を残すチョコレートのような、素敵なファンタジー作品を作りあげている。


母と子の物語にギュッとなる


お母さんと子どもの関係は、人生のはじまりであり、土台となることが多い。
幼いウィリーの回想シーンが心に残っている。
〝Every good things in this world started with a dream.〟
低めのお母さんの声で、この映画のテーマでもある言葉が語られる。
母と子はどんな物語でも、いつも仲よしとは限らないし、仲よしだったとしても長く一緒にいられるとは限らない。
伝えたい思いをどれだけ伝えられるか。
ウィリーにはお母さんの思いがしっかり伝わっていた。
いざ、大事な場面、さあ始めるぞという時、若きウィリー・ウォンカは目を閉じて
〝here we go,mum〟
とつぶやいている。
胸がギュッとなる。
もう会えないお母さんに呼びかけている。
呼びかけてくれるんだ、お母さんに。

親と子どものキャスティングは、演技やメイクで表現するほかに、骨格や顔つきの雰囲気でよく選ばれているものだと感心することがある。
母親役のサリー・ホーキンスは、とってもウィリーのお母さんらしい姿だった。実際、映画を観終わっても「シェイプ・オブ・ウォーター」の女優さんだとわからなかったくらいに。


終わりに


同じ映画を何度もくり返し観る人について、新しい作品をたくさん観た方がいいのでは?と思ったことがある。
でも、それは正しくなかった。
また観たいと思ってしまったら仕方がないのだ。

「前作ではお父さんが歯科医でさ‥‥」
と上映後にお客さんの声。わかるわかる、あの矯正装置、心配してたので。
ティム・バートン監督とジョニー・デップの前作も大好きだ。その上で、この作品も大好きなのだ。

これまでくり返して鑑賞した作品は多くない。
「インディージョーンズ」シリーズ
「ハリー・ポッター」シリーズ
「パンズ・ラビリンス」←「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督
「かもめ食堂」
ここに「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」を追加する事になるのはまちがいない。

公開日に観たのに感想文の提出が遅いのはなぜか?
この映画への愛をこめて、ファンアートを描いていた。
最後までおつき合いいただき、
thank you so much!

夢見ることからすべては始まる

それにしても広場の時計の鐘が鳴る時の、あの仕掛け人形は最高だった‥‥


#映画感想文
#ウォンカとチョコレート工場のはじまり
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