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紫陽花のブルーとコーヒー時間🕰️ちょっと遠くまでお散歩「鎌倉」
子どもの頃は見向きもしなかった紫陽花を、いつからこんなに欲するようになったのだろう。
青から紫を経て赤紫へと色相環を移動していく、まるで虹の端をとってきたような花たちの色合いの中に、好みの色が全部入っている。
いつかひと目見たいと、雨が降りしきる季節になるたびに思い出していた。
日々に追われていれば花の時期などすぐに過ぎ去ってしまう。
何年か越しに思い続けたあの花たちのブルーを見るため、おとなの遠足に出発しよう。
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一度は行きたいあの場所〝明月院ブルー〟を見るおとなの遠足
北鎌倉駅まで電車に揺られながら、短いトンネルに入るたびウアーーーン、という音がして耳が詰まったが、本気で鎌倉の山を掘って線路を通したのだなと目を閉じて思いを馳せた。
駅の改札で駅員さんが続ける案内の声にしたがって、迷うことなく人の流れにのる。
平日の午前中でも、列が途切れないくらいの人出だ。
片側に山、もう片側は海へと続く鎌倉には坂道が多い。石の階段をのぼった先に玄関があるしゃれた家を眺めながら、毎日階段はきついかなと思ったり、庭先で紫陽花を育てている家をたくさん見つけて、花や町を思う心を感じたりした。
日本人はもちろん、欧米やアジアなどさまざまな言語が飛び交う世界からのお客さんと一緒に10分ほど歩いて明月院に到着した。
明るい月、もしくは月の明かりという名前がとてもいい。
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ずっと来たかった者です。
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そんなことより、地面に映った木漏れ日をごらんなさいな。
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花の位置が低く地面に近いので、
影とのコントラストでより眩しい姿となる。
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グラデーションに色づいている、
真ん中の粒々は蕾なのか?
咲くのか咲かないのか?
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木や地面のダークブラウンとの対比が美しい。
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右が過去で、真ん中が未来。
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本物のうさぎもいるようだ。
お昼寝中とのことで姿は見えなかった。
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あじさい寺とも呼ばれる明月院の紫陽花は
「日本古来の姫アジサイがほとんどで、
その色は淡い青から日ごとに増してゆき
ついには悠久の空、母なる海のような
青に染まる」のだという。
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花びらがくるんと内側にカーブしているので、
時には妖精さんのカップになるのかもしれない。
お待ちかねのおいしいものは〝喫茶ミンカ〟にて
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自由奔放な雑草地の奥に姿を現した〝喫茶ミンカ〟
既に垂直ではないような電柱が、何かのレバーみたいだ。
それを倒すと蔦のからんだ建物に脚が生え、
夜な夜な歩き出すのだという妄想をひとしきり楽しむ。
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この時点で内心で感嘆の声をあげていた。
前面のガラスに印刷された店の名前、
その奥の開かれたページにはお品書きらしきものが。
目次
おいしい珈琲
からだにやさしいお茶
素朴な食事
土と草花
古い本と紙のもの
ゆるやかな時間
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幼い自分がよく預けられていた
記憶の中のおばあちゃんのうちのような佇まいだ。
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扉も、タイルも気になる。
順番待ちの紙に名前と連絡先を記す。
席が開いたらお店から電話をするので、
並ばないでお出かけくださいとの案内があった。
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風が吹き抜けると建物のガラス戸がカタカタと音をたてる。
目を閉じると、おばあちゃんのうちの庭に面した
木枠の掃き出し窓がカタカタなっているようだった。
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花壇に植えられたハーブ。
裏返った植木鉢。
積まれたグレーの煉瓦。
その先には何があるのだろう。
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アカンサスモリスが姿勢よく花を咲かせていた。
ハアザミと呼ばれるアカンサスには
「棘」という意味がある。
そして英語名は〝Bear's breeches〟で
「くまの半ズボン」なのはどうして?
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焦茶色になるまですっかりサビていて、
金属と水と空気が過ごした時間を感じる。
軒下にぶらさがった謎の道具もサビサビで、
これは一体どう使うものなのだろう。
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明月院にはなかったピンクパープルの紫陽花たち。
そうこうしているうちに順番がきて、
お店の人から呼ばれた。
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案内されたのは1人掛け椅子の席だった。うれしい。
メニューの表紙は今の季節に合わせて
スタッフの方が紫陽花をイメージして描いたもの。
マッチ箱の注意書きもしっかり読む。
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涼しげな白い貝殻と
大好きな赤い実の飾り。
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ひと品め 水出しアイスコーヒー
ネルドリップのホットとしばらく迷ったが、
とにかく暑かったので。
ミルク入れは口が欠けている。
欠けているけれど、
ミルクは入れられるのだもの。
そしてコーヒーの澄んだ味わいとともに、
グラスの繊細な口あたり、ガラスの薄さに驚く。
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生地からこねて作られたあつあつの揚げたてを、
ふわふわ、かりっといただく。
中にはひき肉と細かめに刻んだゆで卵、
すがすがしい香りの生パセリ、
そのほか何かおいしいものが入っている。
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最近なぜかデザートにプリンを頼みがちである。
卵の風味と、きっとやさしい種類であろう砂糖の甘さ、
カラメルの苦甘さを堪能しつつペロリとたいらげる。
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その向こうのキッチンの明かりが
曇りガラスごしにほんわりと見える。
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窓枠の隅にいた内気そうな小さいこを、
もう少しで見逃すところだった。
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ゆるやかな時間を過ごさせてもらった
席の様子はこんなふう。
ちなみにこの椅子はくるくる回るタイプ。
店内には古い本や出版数の少なそうな本、
焼きものなども売られている。
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店内の席数は20に満たない。
時間の制限もない。
信じて愛するものを揺るぎなく大切にする。
そんな自分のことも大切にする。
そういう時間を過ごせる場所。
願わくば、雨の降る日に再び訪れて、錆びたトタン屋根にせわしなくあたる雨音を聞きながら、ゆったりとホットコーヒーをいただきたいものだ。
とびだす絵本の専門店は鎌倉にある 〝Meggendorfer〟
〝メッゲンドルファー〟というお店の名前は、ドイツのしかけ絵本の父と呼ばれる人物からもらったそうだ。
鎌倉駅から徒歩10分のところにある、全国でもめずらしいしかけ絵本の専門店の存在を知ってからずいぶんたつが、今回ようやく訪れることができた。
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ずっと変わらず絵本が大好きだ。
しかけ絵本は平面である紙が立ちあがり、
とびだし、めくったりのぞいたり、
動いたり穴があったり、
特別な世界へ連れて行ってくれる。
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ほとんどに見本が用意されているので
手で触れながら紙のアトラクションを
楽しみ、味わうことができる。
上の写真はメッゲンドルファーのホームページより。
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〝メッゲンドルファー〟のロゴデザインを手がけた
染色家、造形作家である望月通陽さんの線画に
谷川俊太郎さんが詩をつけた「せんはうたう」
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みじかいひらがなの言葉。
箱がピンキング鋏で切ったようにギザギザで、
なんだか大量生産をする気のなさそうな装丁である。
表紙と同じく箱の内側までブルーになっている。
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本文のページは二つ折りの紙を綴じた形をしており、
紙の内側はペパーミントのような明るい水色をしている。
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うちにあるとびだす絵本はいかがでしょう。
〝Cookie Count〟Robert Sabuda
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Maggie Bateson、Louise Comfort
おとなのおやつは上限なし!なので〝café vivemento dimanche〟へ
こちらのカフェはが鎌倉で30周年を迎えた人気店。
お店の名前の意味がフランス映画のタイトル「日曜日が待ち遠しい」なのだと知って、必ず行こうと決めた。
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前の方に中学生らしい男女5人グループが
並んでいたのだが、集合時間に間に合うか
ギリギリのところのようだった。
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この看板は30年立ち続けているのだろうか。
夢と希望を抱いてコーヒー店をかまえた青年たちは、
どんなおじさまになられたのだろう。
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オープン当時はまだ、日本にスタバもなかったはずだ。
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中深煎りコーヒーのディマンシェ
30年前は若者であったマスターが、きっとそのときと変わらず丁寧に淹れたコーヒーを運んできて笑顔を向けてくれる。
外の看板に描かれている人だった。
これがびっくりするほどおいしかったのだ。
酸味が苦手だからと深煎りばかり飲んでいた自分が、いくつもコーヒースタンドを巡るうちにコーヒーは赤い実であることに気がつき、酸味をフルーティとようやく感じられるようになってきたタイミングだった。
ナッツのような、とかチョコレートのようなと表現される風味、甘みを発見できた気がした。
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生クリームとコーヒーアイスをトッピング
おとなの遠足では、おやつに上限はない。
薄めのワッフルなのだが、生地にほどよく甘みと少しの塩味があり、行列のできる鯛焼き屋さんのもちっとおいしい皮の部分をこんがりと主役にしていただいている感じに近い。
中学生たちは卵がつやつやのオムライスをかきこんで出て行った。
飲み物は水だったから、また何年後かに来て、あのときは時間なくてほんと焦ったよね、などと言いながらコーヒーを注文してほしい。なんて思ったりした。
鳩サブレの本店や鎌倉野菜の八百屋をのぞいたりしながら鎌倉駅へ戻る。
改札の真上につばめが巣を作ったらしい。
「ひなが巣立つまでご理解ください」と貼り紙があり、鎌倉駅にいくつも並んだ自動改札のちょうど真ん中の1カ所が通行止めになっていた。
また、短いトンネルのたびにウアーーーン、と耳を詰まらせながら東京へ向かう。
好きなものを思い続けていたら、その時間の分だけ思いが積もるものだ。
目に焼きつけた花のブルーと、過ごした時間を何度も思い出すだろう。そしてきっと満足のため息をつく。
遠足でもなんでも、これからが、おとなになってからが楽しいのだ。
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おとなの遠足に最後までおつき合いいただき、
thank you so much!
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