外国人介護士活用セミナーに参加
知人の専門学校講師が主催する「外国人介護士活用セミナー」に参加。外国人労働者については2018年12月に改正出入国管理法(入管法)が採決され注目が集まっている。実際、このセミナーも当初は30名程度の参加者を見込んでいたようだが、蓋を開けてみれば100人超の参加者であった。
これは取りも直さず「介護現場が外国人介護士に期待している」ことの証左として差し支えないであろう。画像のように、厚生労働省は2025年度までに介護労働者が37.7万人不足するという推計を出している。(厚生労働省「平成27年版厚生労働白書 - 人口減少社会を考える -」より)
少し話題が逸れるが、私は地域包括ケアシステム構築や地域福祉活動計画策定等のアドバイザーとして佐渡市等の自治体に関わってきた。この「地域包括ケアシステム」が声高に叫ばれる背景にも、この介護労働者不足という課題が横たわっていることは見落とされがちである。
地域包括ケアシステムは「綺麗ごとを言っているが結局は財源不足で、地域やボランティアに肩代わりさせようとしている」という論調で語られることが多い。しかし上記の通り「そもそもこのままでは介護を職業として担う人材が足りなくなる」ことも一つの事実なのである。例え介護保険料を支払っていても、介護を担う人材が不足すれば当然のことながらサービスは受けられなくなる、だから地域包括ケアシステムの必要性が強調されるという側面もあるのだ。
本論に戻るが、入管法の改正では、政府が指定した業種で一定の能力が認められる外国人労働者(単純労働含む)に対し、新たな在留資格として「特定技能」という枠組みを作ることで外国人労働者を増やすことを目指している。「特定技能」とは「相当程度の知識・経験」を持つ外国人で、試験に合格すれば上限5年まで日本で就業できることになるが、本日時点でも明確な基準は示されていない。また、そのような状況で50万人超の受け入れという話だけが先走り、与野党が激しく議論している。この「相当程度の知識・経験」というのが不明確な状態のまま、介護現場で目先の労働者不足解消のために外国人労働者の受け入れを進めれば、現場介護職員の負担は軽減されるどころか、日本語や介護技術のOJTなどで負担が増加する可能性が高い。そしてようやく育て上げても5年で母国に戻ってしまうことになり、混乱を招くことは避けられないだろう。
本日参加したセミナーでは、介護現場の担い手としての外国人介護士の活用に向けた方策を明快に打ち出していた。介護施設が一旦採用を決めた外国人労働者を専門学校で預かって日本語や介護技術の教育を行い、国家資格である「介護福祉士」を取得させ、永住を前提とした雇用に繋げるというものだ。その人材は介護業務はもとより、「特定技能で入国してきた外国人労働者の指導者」として活躍してもらうというスキームである。
まだまだ議論の尽きない入管法の改正であるが、介護現場でのニーズが高いことは間違いないし、介護現場における外国人労働者受け入れの動きは地域包括ケアシステム構築においても重要な要素となっていくであろう。そして本日のセミナーでは、制度が追い付いていない現状で専門学校や施設が先んじて連携し、ビジネス的な持続可能性を持って社会課題に向き合おうとしていることを頼もしく感じた。新潟県においても2025年度までに4,000人の介護労働者不足が予測されており、人口減少・高齢化が進む中で喫緊の課題として取り組んでいかなければならない。
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