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不動産開発プロセス その3

今回はステップ①である人口動態調査について説明します。
使用するデータの説明になります。実際にケーススタディも後々行います!
この記事では居住用不動産開発以外にも商業用不動産開発も視野に入れているので、ご注意ください。


人口動態調査とは

人口動態調査とはある地域における居住者に関する調査。
具体的には、人口・年齢構成・家族構成・収入・雇用状況などを用いて、開発を計画する地域の需要を特定する調査。

必要なデータは国勢調査や総務省のHPから持ってこれる。
ちなみに、シドニーではAustralian Bureau of Statistics(国勢調査)Department of Education, Skills and Employmentが実施する調査を使用します。

それではデータごとに特徴を見ていきましょう。

総人口

一番初めに見るべき数字。
特に、周辺地域からの人口流入や通勤通学が少ないと考えられる地方・地域において、総需要量をおおむね決定することができる。
人口が変化する要因は主に以下4つ。
緑地開発による新住宅地の増設
自然増
低密度住宅から高密度住宅への移行
築古物件から高密度住宅への移行

人口ピラミッド(Population Trees)

一定の年齢幅ごとに総人口に占める割合がわかる。
教育需要・保育需要・公共広場需要・イベント需要・医療需要・介護需要など、それぞれの世代が求める異なるサービスの需要量を特定することができる。
特に、25~35歳のバンドは今後の保育・教育需要を想定するうえで重要なバンド。

人口増加率

人口ピラミッドと併用して使用する。
どの年代が増加しているのか・減少しているのかを特定する。
増減の変化では自然増減・外部からの流入・外部への流出が考えられる。
時系列でみることでどの年代が今後も増えるかを予測する

民族

オーストラリアは移民国家のため、民族や出身をターゲットとした戦略を立てることも可能。
日本も今後移民が増えるとなると、各民族ごとに求める需要を特定する必要が出てくる。

収入・財産

家賃・提供サービスの価格を決めるのに役立つ。
収入格差・富の格差はジニ係数を使用して可視化する。
ジニ係数は0~1で表されるもので、ある水準の財産・収入を持つ人たちが総人口のどの程度を占めているかを表したもの。
収入は平均値ではなく中央値ジニ係数を使用することで、その地域における許容可能な支払家賃額・サービス価格を特定できる。

世帯構成

例)夫婦のみ・夫婦と子供・シングル・そのほか
居住用不動産において潜在的な不動産需要を見つけることができる。
ちなみにシドニーでは、都市部においてシェアハウスが多くみられる。
これは家賃が高いため、若者が結婚前に金銭的負担を減らすことを目的に利用されている。

居住形態

例)戸建て・賃貸併用住宅・アパート・マンション
地域の人口密度・不動産価格・世帯構成によって地域差が出る。
戸建ては子供がいる家族からの需要が高く、広めの土地が手に入る場所で高まる。

所有形態

例)賃貸・持ち家・残債ありの持ち家
賃貸か持ち家かは世帯構成と関連している。
若者が多い地域では賃貸比率が高くなる傾向がある。
居住形態とも関連しており、マンション・アパートは賃貸比率が高くなる。

借入

毎月返済額と家賃水準は該当地域の住宅価格を反映する。

雇用状況

例)失業率・就業率・就業者数・労働力人口
雇用状況は家賃・サービス価格に影響を与える収入に直結するため、非常に重要な項目。
また、正規雇用か非正規雇用かも不動産需要に影響を与える。
正規雇用であれば金融機関からの借入が利用しやすくなるため持ち家比率が高まる。

その他

学生数・学校数:学生向けの市場が形成されている。
親元を離れている子供がいる家庭:データと実情の違い
自動車保有状況:公共交通機関の利便性に影響
通勤手段:地域圏を越えた通勤通学が可能かどうか
都市内外への移動:当該地域が地域一帯に置かれている経済的状況

今回はこれまで。
人口動態調査で見るべき項目を列挙しました。
需要の特定を間違えると、借り手がつかない・売れない物件を開発することに繋がります。
次々回あたりに今回のデータを用いたケーススタディを実施します。
ぜひお楽しみに。

次回は「不動産市場のダイナミクス」を取り上げます。
ありがとうございました!

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