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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2021年9月の記事一覧

TomoPoetry、ちいさなたからが死んだ。

TomoPoetry、ちいさなたからが死んだ。

今日 ちいさなたからが死んだ
家族親族近所のひと
なにもできずに
泣く
わたしたちにできるのは
悪いひとと一緒に生きていかないこと
金に賤しいひとと食事をしないこと
そして 失ったときは
泣くこと

老衰か
銃弾か
だれかの悪意か
神の
ひとの心がわからない決定か

わたしはわたしの心を確認する
生きていたいのか
死にたいのか
わたしが死んだあと
泣くひとが少ないように
わたしが死んだあと
安堵す

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TomoPoetry、無い耳にひびく風

TomoPoetry、無い耳にひびく風

目覚めると
左の耳がない
昨夜虫の声を聞いたのは
右の耳だったのか
耳殻が無い
時間のトンネルのような穴
頭に
ながい歴史の
叫び
悲鳴
笑い
詩が
真っ赤なペンネから絞りだされるように
聞こえる

その朝 食べたのは
ペンネのアラビアータだ
神の前でながされた
いのちのやわらかさ

翌朝 自分で選べと
誰かが
左の空洞にひびく風にのせて
つぶやいている

要らないものを選ぶ
性器にする
かれはう

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海にもどるこいびと

海にもどるこいびと


目覚めると
きみは鍋のなかにいる
きみのいのちが
鍋にひろがっている

わたしたちは何を
食べようか
魚のお汁に
青菜をすこし
ハンバーグやステーキのあいだに
わたしたちは飲む
南太平洋のスープ
北欧の刺身

夜 きみを抱くと
きみは毎晩まいばん
ほそくかるくなる

そして ある朝
鍋のなかのきみを見た
命を溶かしている

その夜 わたしは
きみを太平洋に連れていく
死がきみの背後に落ちる

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Tomo Poetry、林檎をかじったあとに。

Tomo Poetry、林檎をかじったあとに。

誰のもの
空は?
きみは返事を待たずに
まっすぐに上っていった

天にぶらさがったまま
影を
西から東へゆらす
忘れものがあるように

朝やけの空に
きみが揺らいでいる
身体はほそくなっている

毎晩落ちてくる
きみの型紙を
写しとった
一日分の空

なんども洗った
白いシーツと
白い頁の歴史書のうえに
かさなり積もる

表紙をひらくと
あいだに夢を空に忘れてきたわたしが
すきとおって挟まっている

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