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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2021年5月の記事一覧

Tomo Poetry、掛ける。

Tomo Poetry、掛ける。


鞄掛けから
三世紀前の鞄をとる
なかには崩れた文字と
かすかな干し肉
夜の風
帽子をとる
頭の上にもっていくと
紫の花と
白い粉末
ときに名札がある
いろいろな文字を
たどると
肉体の形をしている
スプリングコートをとる
霧と雨の匂いしかしない
幾つの魂を
包んだだろう
さっとまいあげると
十三世紀のステンドグラスが見える
後ろで
あなたの恥部をあらわにする
一瞬
あなたは満足して笑う

空は

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TomoPoetry、かなしいのか、ちがうのかはきみが語ってくれないか。

TomoPoetry、かなしいのか、ちがうのかはきみが語ってくれないか。

いくつもいくつも
重ねたビートの色のように
寝たシーツの
子午線のような
ほそくかくした歴史のように
コロンブスの
ペニスの皺
走りまわる蜜のような時間
そこからわたしは
彼女の下着に
潜りこむ

そこから歴史は語られる
洞窟の奥の
よろこびと

ピラミッドの隙間の
希望と

地下の個室の
悟りと


ひとはひとつのうつくしさをもって生きる
と言った
政治家は
みなじぶんの裸体を見るといい

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TomoPoetry、ありがとう、いくつもの朝(motherたちへ)。

TomoPoetry、ありがとう、いくつもの朝(motherたちへ)。

あの朝
祖父はキャベツのような心臓を
あなたに差しだした
青い空のしたで
戦闘機が飛び交っている朝
その心臓は
もっともすばらしい 

三日後
祖母は
死者を埋葬したことを確かめると
脚を刻んだ
いろいろな土地を歩きぬいた脚は
これからのあなたに
この星の形と
残酷さ
塩っからさを
いつも思い出させてくれる

三年後の朝は
世界のどこにも
だれも立っていなかった
みんなが
それぞれの母親の手足を握

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TomoPoetry、海に根づくひと。

TomoPoetry、海に根づくひと。

いつからこの姿勢で
立っているのだろう
出発に遅れた鳥のように
藍色の
劇場の天井を見あげる
台詞を思いだすことを
捨てた役者のように
陽射しのなか
錆びている作曲家の像のように
一日の
ながい時間
潮の満ち引きに合わせて
膝までは
既に根になり
かさかさの皮を濡らし
腰から胸は
乾いた剥製
斜めに伸ばされた右腕は
何かを求め
あるいは
何かと別れの握手のあとのように
生きている
右腕
その指先を

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