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TomoPoetry、ありがとう、いくつもの朝(motherたちへ)。

あの朝
祖父はキャベツのような心臓を
あなたに差しだした
青い空のしたで
戦闘機が飛び交っている朝
その心臓は
もっともすばらしい 

三日後
祖母は
死者を埋葬したことを確かめると
脚を刻んだ
いろいろな土地を歩きぬいた脚は
これからのあなたに
この星の形と
残酷さ
塩っからさを
いつも思い出させてくれる

三年後の朝は
世界のどこにも
だれも立っていなかった
みんなが
それぞれの母親の手足を握っていた
ひとから
ひとでないものへ徐々に変わりつつある
熱帯植物のような
母親を

地に脚を埋め
少しずつ深く埋め
全身から粘性のある液体を
幾すじも
歴史の重さのように
ゆっくり垂らす
母親たち
わたしたちは
手で受けとめれず
欠けた茶碗では役立たず
彼女のまわりに
海を掘った
できるだけ丸く
できるだけ深く
できるだけ
水を濁さず

彼女の生の色が見えるように
彼女の母親の生の流れていったのが見えるように


あなたは
あおい葱をきざむ
あかい血が流れたら洗う
ピーマンから
記憶と欲望を抜きとる
痛みが少ないように洗う
人参は
あなたの小指のように
こま切れにし
水につける
痛みがないように
昨夜の夢が
残っているか
たしかめるように
ご飯を電子ジャーから
掬い取る
夢はひとつも
今日まで残さないように

優しく しかし
厳しく過去を消し去るために
あなたは朝をすごす

整うと
すべてを洗う
人参ピーマン葱
あなたの指
新しい一日が遅れることになっても
開始するために

火をとおると
わたしの死の味とあなたの祖先の生の味がする

わたしは生きているのだろうか
たしかなことは
わたしはあなたの命を生きている

わたしの未来の死と
壊れた万華鏡が
おおう
未来の星
窓の外は
キラキラしている

まもなく
世界は静寂になる
朝食の時間だ
先ず
死を呑み込むように
水を飲む

野菜の味がする水
わたしの脚は
昨日の朝を踏みしめながら
今日の朝をきちんと確認する
まもなく
わたしの脚は
タイルに寝付くだろう

ほそくのぼってくる命を感じ
いくつもの朝を生き
ある日死んだ
あなたを
感じるだろう

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