見出し画像

TomoPoetry、かなしいのか、ちがうのかはきみが語ってくれないか。

いくつもいくつも
重ねたビートの色のように
寝たシーツの
子午線のような
ほそくかくした歴史のように
コロンブスの
ペニスの皺
走りまわる蜜のような時間
そこからわたしは
彼女の下着に
潜りこむ

そこから歴史は語られる
洞窟の奥の
よろこびと

ピラミッドの隙間の
希望と

地下の個室の
悟りと

ひとはひとつのうつくしさをもって生きる
と言った
政治家は
みなじぶんの裸体を見るといい
ひとはひとつの欲望のために
すべての美徳をかくしてしまうといった
裸体の
男は
だれもじぶんの裸体を見ないことを
知っていた

醜さとずる賢さしかないことをかれは知っていた
どんな理念も
思想も
ただのことばでしかなかった

かなしいのではない
落胆するのでもない
半年すると彼女の下着の
色がちがう
クリップのいちが違う
同じように
銃のデザインは十代の少女のスカートになり
そのトリガーは
コーヒーに誘うより
やわらかく
かんたんに
口をひらくだけ

ミサイルは落ちる
運動会のサイレンのように
死ぬのは
会場の
壁にもたれるひとびと
あかい花
真珠のような実
手と
唇を
あらう 

死は叫びを呼び出す 
だがわたしたちは忘れてしまうのだ
衝撃も思想も
生きている地軸のような鉛筆も

きみはわたしに死んでほしくないという
かれにも
かのじょにも
死んでほしくないという
しかし 銃を撃つのはきみだ

わたしはきみに死んでほしくないと思う
かれにも
かのじょにも
死んでほしくないと思う
しかし 銃を撃つのはわたしだ

だから
わたしは
いのちはいらない
会話はいらない
歴史はいらない

わたしのなかで
生きてきたきみが
死ぬ
そのとき
ひとこと言ってほしい
それだけでいい

好き
好き
好きだった

さよなら
さよなら
好きだった

もうすぐ
わたしはいなくなるだろ
しばらくして
わたしたちはいなくなるだろう
ことばがひとつ消えるように

きみは
おぼえているだろうか
あの言葉を
わたしたちは
ほかに残すものはなくなってしまった

ひとつ残して
愛している

だれの口からも
形として現れなかった
蒼く凍った
きみをつらぬく言葉

風はかわらない
きみも
わたしも
腐敗していく 
空はわたしたちを分解して 
すきとおる 

帽子ですくってごらん
そこには いくつか言葉が 
見えるはずだ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?