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Tomo Poetry、掛ける。



鞄掛けから
三世紀前の鞄をとる
なかには崩れた文字と
かすかな干し肉
夜の風
帽子をとる
頭の上にもっていくと
紫の花と
白い粉末
ときに名札がある
いろいろな文字を
たどると
肉体の形をしている
スプリングコートをとる
霧と雨の匂いしかしない
幾つの魂を
包んだだろう
さっとまいあげると
十三世紀のステンドグラスが見える
後ろで
あなたの恥部をあらわにする
一瞬
あなたは満足して笑う

空は
一日かけて
砕け続ける
五千年の中国大陸の白い街路
くだいた魂を
数えることはできない
白い道に
ブルーの
みなみ太平洋のステンドグラスが降る
上海のバンクに
降るひかりは
いろいろな人種の
肌と血のにおい
そして 理解できないことばが
靴のあとを追ってくる
くだけた星の外郭
あおく
しろく
あかく
悲鳴といっしょに降る

帽子とコート
そして首を
悲鳴に濡らして帰る
父や母がいなくなって五百年の
戸口へ
そとは
ずーっと爆発音と悲鳴と
笑いと
引き裂く音
あなたは帽子を帽子かけにかける
ピラミッドのかおり
奴隷狩りをした人びとの
アヒージョのかおり
それに隠れて
多くの
首の丸さ
眼の奥のふかさ
魂以外の腐敗したものの
ほのかなかおり
あなたは思いだす
コートをかける
白い灰が
黒い靴に落ちる
死者はだれ
それはあなたは知らない

すべてをかけて
見上げると
一個残っている
あなたは聞いてしまう
あれは
あなたの首のためだ

あなたは
記憶を消去する

夢のなか
あなたはあなたの首を見る
ステンドグラスはまた
輝いていた
あなたは
寝返りをうって
あなたの星をだきしめる

枕にあなたの首の
シルエットがある


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