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TomoPoetryー友野雅志の詩

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日々書きためた詩の中から、noteスタートしてしばらくしてからの最近のものをのせています。それ以前は、下をご覧下さい。   …
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2021年2月の記事一覧

Tomo Poetry、見えない石の塔。

Tomo Poetry、見えない石の塔。

三百億の紙人形を
ひと夜に一度で
ていねいに折りたたみ
生わさびのからさの
記憶は
言葉だけの若草色の
薄まり

だれも証言しないのか
その夜の空の色の
真紅のひろがりについて

そのまま忘れてしまったはずだが
きみを抱いた後
薬莢のかたちの吐息のころがり

きみは思いだすだろうか
過去という宇宙は
巨大な苺
生の落ちる前のように
死が飾り箱にならぶように
テーブルクロスは十時に染められ
銀食器は

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Tomo Poetry、安らぎの陽射し。

Tomo Poetry、安らぎの陽射し。

霞の隙間からきみは飛ぶ
手には
雲の刺青
コバルトブルーの声が
国にひびいた昼
きみが入りこんだ迷路の
静けさ
きみの記憶から
ざわめきが消えていく

きみが溶けこんだ緑の
四肢は
きみを愛撫し
きみに入りこみ
きみをひきあげる
緑から群青に変わる
時のすきまへ

若葉と蔓が伸びたきみの
血でつながる家系図は
すり切れ
危うく
天を泳ぐものを掬おうと
雲をかき回す
歴史の櫂のように

海流が身体を

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Tomo Poetry、見えない手を差しのべて。

Tomo Poetry、見えない手を差しのべて。

螺旋状にのぼる
ひとの列
言葉をすいあげながら
翌日には
耳をふさぐような
光のふくらみとなって
くだったり
きみの記憶にも
いく筋かの金色の傷

触れてごらん
しみ出てくる時間に

きみは名前で呼ばれない
記録を消していく
紙魚のひろがり
年と月 そして
人数
文字のすき間に
きみの瞳の
かがやき

今日は風呂を沸かす日
時間を何枚もかさねて
捻り
ライターで火をつける
今日は泣き叫ぶ日 

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Tomo Poetry、おくる、おくられる記憶。

Tomo Poetry、おくる、おくられる記憶。

おくる記憶
二十代に雨が降りつづけ
地がながれるように
母をおくった
だれもが黙っていた
沈黙が永遠につづくように
地球は停止していた

四十代にまるく暗くなった
父をおくった
石をころがし
水路をつくるように
父が座っていたしたは
湿った庭
いろいろな貝が覆っていた

庭に泡をあふれさせ
冷えた氷水のような
詫びと礼を
カシャッと噛んだ

スーパーの固い肉饅
蒸したらよいのだろうが
重く手に持て

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TomoPoetry、風と色そして言葉

TomoPoetry、風と色そして言葉

手足を青い宇宙に揺らしている海月
きみは白いテーブルのひだまりの
きみだけの球のなかに
ふわふわと月の浮かびかた

月と星にかたどられた
言葉が埃と光に
崩れてはまとまり
窓を横ぎる

かれらは帰ってこない
風に呼び寄せられ
宇宙に散乱する
わたしたちの呻き

日比谷のひとびとが去ったテントには
銀河がいくつもかくれて
どこからか聞こえる声

言葉が響くことのない世界で
きみは数世紀前のささやきを

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Tomo Poetry、目的地に着いたか。

Tomo Poetry、目的地に着いたか。

出発する だれもが
わからない目的地をさがして
塔がこの地に立つように
棺が地下都市の底に
ねむるように
あるいは 方舟が
星から星へながれるように

ながれる水に映る空
それを掬いとり
袴にするような
軽くあわい しかし
命を吸った地図の
重さ

何年かかるか
たどり着けるかわからない
出発せよとの言葉は
雨のように他に沁み
光のように
死者を乾燥させ
生きるものを
狂った時計のように

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Tomo Poetry、少年の涙を見ると。

Tomo Poetry、少年の涙を見ると。

少年の涙のなかをかれは滴りおちる女の黒い眼のなかを箒星がゆっくりめぐる老いた背に沿って星は墳墓の静けさに戻っていくこのまま忘れさられだれも思いださないかびと埃だらけ そして虫穴だらけの半ページ数年前から願いはかわらないいびつな足跡に光がたまっている夜とてつもないやさしさがわたしの背をながれおちるきみはあの眼を忘れただろうか世界をすべて映した黒く流れいく眼今夜 きみの眼をめぐるスカートのすその

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TomoPoetry、魂のはばたく音

TomoPoetry、魂のはばたく音

空がこおっていくと
行き場をなくした音が降る
木の年輪にそって鳥が
反らす羽
カーテンを閉じる
その波のひとの陰
ガラスの器の
高いひびきのように
さくさくと星雲を
歩いた三百年前の足音のように

降りそそぐ打楽器のあいだを
魂がはばたき
飛びだしていく

きみはきみの魂の
銀色の軌跡を
記憶する
ほかに残すものはない
ほかに残すひとはいない

魂は聴いている
星のふるえる輪郭
ひびわれるゆく卵の

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Tomo Poetry、握っている。

Tomo Poetry、握っている。

ポケットでゆびさきは
まさぐる
ときにまた遊びながら
きみの
親指のようなかなしみ
紙幣に残る涙のにおい
詩集の
きみの体温のようなしたしみ
そのページをめくるのは
言葉を知らない
蜥蜴のまるい足先

ないではないか
戸籍抄本や
サーティワンアイスクリームポイントカード

きみはだれなんだ?
わたしの存在の基礎になるものを問うように
かれは問う
銀行マンが通帳を要求するように
ドアマンが社員証をと

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ながれる水の音

ながれる水の音

深夜ねむりに落ちたからだを
水がながれる
さらさらちょろちょろと
チンギスハーンの刃から滴るように
少女の背に銃口をあてた
少年兵の額からあふれるように

ながれるものはあなたの手首をめぐり
人差し指のさきから
暗闇の青い星に
滴る
時を知らせる時計のように

あなたは歴史すべての死に責任がある
命を与えられたものの姿勢は
時を重ねた重みに
耐えなければならない

冷蔵庫からとりだした人参を
月よ

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