TomoPoetry、風と色そして言葉
手足を青い宇宙に揺らしている海月
きみは白いテーブルのひだまりの
きみだけの球のなかに
ふわふわと月の浮かびかた
月と星にかたどられた
言葉が埃と光に
崩れてはまとまり
窓を横ぎる
かれらは帰ってこない
風に呼び寄せられ
宇宙に散乱する
わたしたちの呻き
日比谷のひとびとが去ったテントには
銀河がいくつもかくれて
どこからか聞こえる声
言葉が響くことのない世界で
きみは数世紀前のささやきを聞く
きみはこの言葉を覚えているか
だれも読めないこの文字を記憶から引き出せるか
流れ去った海流が語った意味を思いだせるか
テーブルの上で
歴史と
一日の時間がゆっくり交差する
空間と時間を攪拌する無数の砂時計の手足
きみの手足は
純白の石に描かれた
情熱のなごり
まだ残る熱の放射
赦されるには血が流されなければならない
よみがえる記憶
きみから血はながれていない
ながれるのは
音のないシンフォニー
彫ることを忘れた記憶
たくさんの
カラフルの
殺意とかなしみが
地を吹き荒れたのに
今 テーブルも
床はかわいている
過ぎ去りつつあるものを選び
窓から宇宙のそとへつまむ
先ずあなた
あなたを小さな宇宙にそのままにしてはいけない
つぎは
あなたにとってのわたし
わたしはあなたの
存在を裏返したものだから
さよなら
小さく尖った唇へのキス
ブルーの海月が
天球儀を透かしみると
曼珠沙華の紅色
わたしの右手は青く避けた海月
左脚は
なにかを吸いこんだ曼珠沙華
いまは
すべてが沈黙している
きみが青いガラスボールのなかで
乱れながら
開く口
そこをきみは生きつづけよ
不安のように揺れるものはない
知性のように意味をかたるものはない
言葉のようにささえるものもない
悔恨のようにぶらさがるものもない
浮遊する色には不幸も悲しみもない
そこが位置で意味なのだ
ときどき
銀河がうめく
海月のかがやきで
夜 宇宙の軋みと
あたらしい命を聞く
夜明けまえの
真紅の花弁に
ふたつの唇は語らない
倒れるきみを支えるのは
言葉になるまえの
色とりどりの
空と海
まもなく空に
青く湿った月が出る
海は赤い花であふれるだろう
そこに海月の手と曼珠沙華の脚のきみは立っている
眼はとじたまま
待っている
風を
風が言葉をはこんでくるのを
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