TomoPoetry、魂のはばたく音
空がこおっていくと
行き場をなくした音が降る
木の年輪にそって鳥が
反らす羽
カーテンを閉じる
その波のひとの陰
ガラスの器の
高いひびきのように
さくさくと星雲を
歩いた三百年前の足音のように
降りそそぐ打楽器のあいだを
魂がはばたき
飛びだしていく
きみはきみの魂の
銀色の軌跡を
記憶する
ほかに残すものはない
ほかに残すひとはいない
魂は聴いている
星のふるえる輪郭
ひびわれるゆく卵の脆さ
暑さのなかで
色に染まりゆく飢餓
そして 欲望
愛しあう砲撃のはげしさで
殺しあうキスで濡れながら
人はみんな肩をくみ
真っ白いシーツを
旗のように波打たせながら
星を鳴らす
きみは誰も知らないきみの歌をうたえ
誰も聞かない隠れ伝えられて数千年前の歌をうたえ
紙飛行機が飛ぶ
ざわざわと雲とカーテンがゆれる
鳥はもう飛ばない
鳴き声は聞こえない
御粥はつめたい
言葉を語らない目に
大地は純白な
歴史の最初のみひらき
きみは声にならない歌をうたえ
夢を写した窓ガラスに罅がはしる
冷気がながれこみ
思いが氷像になる
言葉になる前の
叫びの像
絶叫が立っている水晶のように
横たわるわたしに連絡が届く
共鳴する魂のだれかの呼吸
魂の音をきく
静かな昼
魂の軌跡を見る
青があばれる夜
星雲がなみうつ音を聴く
祈りのような
命のような
生の音
そして静かな
死の音
魂がくだけはじめると
生命の音が聞こえる
鳥たちが羽ばたきを始める
さあ わたしも
歌う時がきたようだ
喉から嘴がまっすぐに
つづけて
まっすぐに揃った羽が
震えはじめる
いっせいに
生きることを思いだした
化石の鳥のように
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