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高台寺 和久傳

安心して大切な人をもてなせる店No.1

仕事で知り合った和食店経営者から「食べるのが好きなら、高台寺和久傳さんは素晴らしいので是非」と、おすすめいただき、早速ランチで伺いました。

確かに!ここなら安心して誰にでもおすすめできる。外国人でも関西圏外の方でも、普段和食を食べない方でも、きっと、このお店を気に入らない人はいないんじゃないか?というくらい、素晴らしいホスピタリティでした。「和食を通じて顧客に楽しい時間を過ごしてもらう」という姿勢が、出迎えから食事中、見送り迄徹底しています。

お出迎え

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ねねの道から少しだけ西に入ると、道際に皺ひとつないえんじ色の着物をまとった品の良い女性が。名前を告げると、餅花で華やかに飾られた玄関へ。本当は1月で片付けるものだけど、華やかできれいだから、和久傳さんでは春先まで飾っているそう。新しいお店らしい、京都の料亭にしては自由な空気!

お部屋とお軸

躙り口まではいかないものの、大人は間違いなく頭を打つ低めの入り口と、土壁の天井の低いお部屋は、茶室の風情。一方、大きくとられた一面の窓からは、寧々の道のむこうに高台寺が望めます。こじんまりと落ち着く茶室感と開放感のある景観とを両立させた、居心地の良いお部屋。

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3月3日の訪問日に飾られていたのは、江戸末期の美人女流歌人・大田垣蓮月尼の、3月3日の歌。

『この殿 に けふ咲く花は いく春の もゝよろこびの はじめなるらむ』

そして、その下の花入れには、寒冬で開花が遅れる窓の外の梅よりも一足先に春を告げる、大きく開花した梅の花。

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これから次々と美しい花が開き、季節は春を迎えるのだ、という期待がふくらみ、お料理が始まる前から心が浮き立つおもてなしです。

掛け軸の説明や大田垣蓮月尼のエピソードを明るく語ってくれた女将さんはとても親しみやすく、顧客に緊張する間もあたえず、お部屋を和ませてくれます。

半張り蒸し 菜種のすり流しと白魚

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半張り蒸しとは、茶碗蒸しの上半分にお出汁を張った蒸し物で、卵液と上のお出汁が半々だから半張り蒸しというのだそう。一品目なので抑えた味つけですが、白魚のほんのりした苦みと菜の花の風味、一番下の茶わん蒸しのお出汁のあじがじんわり楽しめる、冬の寒さで冷えた体に染みる一品。あたたまりました^^

そら豆とのどくろのお寿司

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豆にかけてあるのはチーズでなくて塩!ふわふわでしっとりしていて、どうやって作ったのか不思議なやさしいお味でした。のどくろのお寿司もとても脂がのっていて美味!

猪肉と丹波牛と春の菜の鍋 -中川一辺陶氏の鍋との邂逅-

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また見たことある!このお鍋は、やはり中川一辺陶氏の作。大市、比良山荘に続いてまたお会いしましたね!(なんのこっちゃ)

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猪肉は本当にさっと、軽く出汁にくぐらせて、浜防風など、春の力強い香味のお野菜と一緒にいただきます。少し甘めのおだしが、脂にしっかりと甘みのある猪肉と高相性。猪肉もとても柔らかく、臭みなくおいしい。
目の前で仕上げてくださった料理人さん曰く、今の春の季節の猪が一番臭みなく、おいしいのだそう。

モロコの炭火焼

お鍋に続いて、焼物もお部屋で作ってくださいます。炭火の上に並べられたのは、琵琶湖産のモロコ。京都滋賀では風物詩ですが、その外では春先の食材としてモロコを連想することはないでしょうね。
モロコは北湖の推進100メートル程度に生息していて、この季節だけ産卵のために水深の浅いところに移動してくるので春先の魚として食卓にのぼるそうです、と、手際よくモロコを焼きながら、教えてくださいました。滋賀県民なのに、相変わらず滋賀のことを知りません(笑)

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モロコの頭を突き刺し、おなかの油で頭を素揚げのように芳ばしく焼き上げます。その間に、今朝ついた、柔らかー-いからすみいりのお餅やお造りをいただきます。

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料理を見れるは、お話を聞けるわ、待ちぼうけることなく次々おいしいものを頂けるわ、大満足です。

蒸し蛤と黄韮とスナップエンドウ

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利休麩とかつお菜のお浸しを頂いた後、3月3日にちなんで?おおきな蛤が!蛤の味がたっぷり染み出たお出汁は、残さず飲み干しました。

選べる ごはん!

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なんと!和久傳では最後のご飯は4品から選べるとのことでした。この日用意されていたのは、

・桜えび丼
・海苔うどん
・卵とじカツ丼
・卵とじ牛丼

の4品。
全部少しずつでもいいですよ、と優しい仲居さんの言葉に誘われて、私は桜えび丼と海苔うどん、夫は卵とじ牛丼と海苔うどん。
おうどんは稲庭うどんのような細めのしっかりした麺で青さ海苔の香りが素晴らしく、桜えびもかき揚げになっていて芳ばしく、卵とじ牛丼も京都らしく山椒の効いたとろとろ卵の一口丼。とってもおいしいものをちょっとづつ、という、たまらない心遣いのごはんでした。

最後まで楽しい器

ここまでも、人気の加藤静允先生の作品や、お餅には、素朴な赤土の素焼きのお皿など、さまざまに楽しませてくださいましたが、最後のお抹茶とお菓子では、お茶碗とお菓子のぐい飲み(見立て使い)の器を全て二人分違うもので出してくださいました。

お茶碗は、私の好きな柔らかい桃色の萩焼と、初めて見た黄色がかった伊羅保焼き。一口善哉の器は、志野焼のぐい飲みと、陶芸作家さん(名前失念)の赤土の荒々しさを生かしたワイルドなぐい飲み。

最後まで楽しかった!

総合演出で、3万3千円(消・サ税込)の満足感

ちょっとしたことですが、HPの料金記載も、サ税込のぽっきり価格で記載されていて、顧客にとってわかりやすい。一人の最低単価が2万円を超えてくるようなお店は、「良い食材を使ったおいしい料理と快適な食事空間」というラインを越えて、文化的・芸術的表現を建築・室内空間、料理で各々に表現されていますが、この和久傳さんは、顧客の楽しい時間の演出、というところに最も注力されていて、和久傳さんに一歩入ったときから見送っていただくまで、ひたすらに楽しい時間を過ごさせていただきました。

味覚は個人の主観なので、あくまで個人的感想ですが、料理だけでいえば、高台寺和久傳の味が和食の頂点か、というと、より極めた味を出している店は他にあると思います。
和久傳の味は、和食の引き算の美学を尽くして作り上げた味わい、というよりも、食材に過度に手をかけすぎず、本来食材が持つまま、自然な滋味を届ける、という印象です。

それでもなお、3万3千円でまた行きたいかと言われれば、迷わずYESです。特に、和食に精通しているわけではない大切な人を和食でもてなすなら、間違いなく高台寺和久傳さんにお願いするでしょう。

女将さんから仲居さん、若い料理人さんに至るまで、皆さん常に笑顔で朗らかに、親切に接してくださり、「ただ美味しいものを食べてもらうだけでなく、楽しい時間を過ごしてもらう」という姿勢が徹底されていました。

お食事や器に関して折々にお話しくださったのも、予約の際に、「お料理のおはなしや器のお話を伺うのが好きで、ぜひいろいろと教えていただきたい」とお伝えしていたので、ご配慮くださったと思います。

素晴らしい時間を過ごさせていただきました。
皆さんありがとうございました!

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