ファイト！

20年前、この仕事についたころ、男が保育なんてやるもんじゃないと言われてさ
女の子に囲まれていい仕事だよね、たいした仕事もないだろうしさと言われて
おまえ、手取りで１４万？俺だったら死んでるけどなぁ、恥ずかしくて、と言われてさ

おまえ、たいしたやつじゃないけどがんばれよ、でも３０になったらあきらめろよ
資格もないのに子どもに関わらないでくれますか
子どもも産んだことないくせに親の気持ちがわかるんですか
22のころはそんな声ばかりまわりにあった

ファイト! 　闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 　冷たい水の中をふるえながらのぼってゆけ

沈黙がうるさすぎて眠れなくて
暗闇がおもたすぎて眠れない

朝目を覚まして、重たい体ひきずって布団をでて
自分の野生を丸くするために爪を切って
パンをかじるには心が乾きすぎてるから水だけをのんで
今日も子どもたちのほうに駆けていく

ファイト! 　闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 　冷たい水の中をふるえながらのぼってゆけ

靴下をさがせと言う
怪我をさせないでくれと言う
汚さないでくれと言う
小学校に行って困らないようにしてくれと言う

あいつは自分の食い扶持を稼ぐために保育を文章で売っている
認可外だからできるんだよね、こんな保育、気楽でいいね、認可ならこんなのはできないよ
ああ、認可園に行っちゃったんだ、残念だね、つまらなくなったね
りんごの木だから応援してたけど、りんごの木じゃないなら応援しないよ

ファイト! 　闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 　冷たい水の中をふるえながらのぼってゆけ

どんなに心を尽くしても、大きくなったら君はぼくを忘れてしまうだろう
ぼくの名前も顔も、握りしめているこの手も
それでも君の生きてることのなかにぼくはいる
ぼくのなかに、ぼくが忘れてしまった人々がいるように

ファイト! 　闘う君の唄を闘わない奴等が笑うだろう
ファイト! 　冷たい水の中をふるえながらのぼってゆけ

ファイト!