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8月に読んだ小説

8月も終わりますね。

この前いくらか涼しかったのに、近頃また暑い。

朝から日差しでとろけそうです。


中高生を見かけるようになりました。

がらんと空いていた電車に、学生服姿の皆さまがぞろぞろ。英語に古文に数学に。汚れた参考書を繰る姿は、懐かしく、ほほえましい。

当時私の育った学校は、8月末まで夏休み、9月1日が始業式だったと記憶していますが、地域や学校によってだいぶ違うのでしょうね。

新学期。残暑もコロナも。めげずに参りましょう。


さて、8月に読んだ小説です。


予言の島(澤村伊智)

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比嘉姉妹の1作目でデビュー作の『ぼぎわんが、来る』が衝撃的な澤村伊智。3作目『ししりばの家』もなかなか。叙述トリックが上手ですよね。

本作はノンシリーズの長編です。

仕掛けはよい……けど恐さがちょっと足りないか。

せっかくの「瀬戸内海の孤島」なのだから、もう少しおどろおどろしさ、ダークミステリーな雰囲気を味わわせて欲しかった。二度読み必至で悪くはないのだけれど、トリックのほうに重点を置いた感じでした。

このアイデアだと短編のほうがよかったのじゃないか。



魔眼の匣の殺人(今村昌弘)

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『屍人荘の殺人』の続編。

偶然にも、上の『予言の島』と似たようなアイデア。クローズドサークルの中で、「人が〇人死ぬ」という予言の通りに次々と死人が出て……

こちらも全体にテイストが軽くて、もっと重たく暗い雰囲気を醸してもらってもよかったのかなと思ったり。これはこれで、このシリーズには適切なのかもしれませんが。

ラストの「対決」のロジックはさすがです。中盤ちょっと退屈してしまいますが、読み飛ばしたりせずに、ひとつひとつの場面を確認しながら読むことをお勧めします。

第3作もすでに出ているようなのでいずれ。



罪の轍(奥田英朗)

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重厚。今月の月間MVP。

1963年に実際に起きた誘拐事件をモチーフに、当時の社会情勢を色濃く描いた、全体にもうもうと煙草の煙で満たされた男臭い社会派ミステリー。

東京から北海道・礼文島まで。鉄道で30時間かけて捜査に出かけるシーンは熱い。電話や郵便こそあるものの、飛行機も発展途上で新幹線もこれから。ネットや携帯電話は当然存在せず。旅情ミステリーの感もあり、ヤクザの抗争や、警察の各部署の縄張り争い、また緊迫感あふれる犯罪シーンもありと、見どころの多い本作ですが、そこは奥田英朗。たくさんのキャラクターを描き分け、複雑に絡み合う各場面を、決して重すぎず、軽快にまとめ上げるのはさすがの力量ですね。

モデルとなった事件をwikipediaなどで調べる前にお読みになるのがよいかと。ネタバレしますので。



熱帯(森見登美彦)

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難解……といっていいのかも分からん。結局この作品は何なのか。幻?

しょっぱな作者の森見自身が語り手。その昔、学生時代に手に取った『熱帯』なる本を思い出す森見。印象に残っているけれど、どうも最後まで読んだ記憶がない。途中で本をなくしてしまったのですね。その後、奇妙な読書会に参加した森見は、その『熱帯』を持つ女性を見つけるのですが……

「この本を最後まで読んだ人はいないんです」

……といった感じで、導入部はとてもスムーズ。不思議な本を巡る、めくるめく冒険譚か!? そそられる「謎の提示」なのですが、中盤以降、千夜一夜物語をモチーフにした入り組んだ迷路のような構造に、どんどん迷子になってしまいました。

白石さん、池内氏、佐山尚一と、それぞれの登場人物の視点が、あっちこっちポイント切り替え。暴走するトロッコに乗せられ、どこの次元に連れていかれるのだろう……と思ったら最終章は「えっ????」

どうやら本作、私には荷が重かったようです。

どなたか解説お願い。



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