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行き先の選び方

私なりの観光地(行き先)の選び方について書こうと思います。今後自転車旅行のマガジンを書くにあたり、先に整理したく思ったからです。

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旅行に行ったとき、どの見所に行こうかと悩みますよね。もちろんガイドブックとか読んで勉強するものの、それでもいろいろありすぎて絞れない場合があるかと思います。そういったとき、自分なりの興味の軸があるとよいかと思います。例えば、「グルメ!」「テーマパーク!」「温泉!」等々、皆さんもごく自然に何らかの基準があって行き先を決めていますよね。

私は、「大自然」と「歴史」が好きです。とにかく大好きです。それを感じるために旅行しているようなもんです。そんな私ですが、だからといってすごく歴史に詳しいというわけでもないです(なんじゃいそれ!)。

大好きなくせにあんまり詳しくない私がどうやって行き先を決めているかというと、アカデミックな権威やいわゆる「くくり」みたいなものに依存しています。

今回は、私の「とりあえずこれに該当するなら行き先として十分に検討する」という基準を列挙していきます。

*国内旅行である前提の下にまとめます。

①世界遺産

言わずもがなの世界遺産です。ここを大目的に旅行を組むことも多々あります。常にメインディッシュです。

世界遺産は文化遺産と自然遺産に分けられます(複合遺産もあるものの、日本にはない)。

世界遺産はストーリーが大事にされていると思います。個別の構成資産や各エリアが文化的に、もしくは自然として価値があることはもちろんのこと、それらの構成要素が織りなす背景や一連の流れみたいなものが世界的にみて傑出していることが重要であると私は捉えています。

したがって、その地を訪れて、そのストーリーを学ぶだけで小説でも読んだかのようにおもしろいです。世界遺産バブルの話もあるものの、結局のところ、UNESCOが相当吟味して選定しているので、観光地としてのクオリティの安定感は抜群です。

ただ、それぞれの構成資産を細かく訪れていくと「これも世界遺産の構成資産なの?!」と思ってしまうクオリティのところもあります。大事なのはストーリーとの関わりの中でどういった位置付けかという点ですから、観光資源としての見せ方がまだ定まっていない構成資産もあるようです。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「長崎のキリシタン関連遺産(世界文化遺産)」「知床半島(世界自然遺産)」です。(写真:出津教会堂(長崎)【2015年】、知床の流氷(北海道)【2010年】)

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②日本遺産

2015年から始まった取り組みで日本遺産があります。文化庁が作った枠組みです。世界遺産の日本版というイメージで、こちらもストーリーを重視した認定を行っています。より地域色が強いのが特徴かと私は捉えています。

知名度的にはまだ浸透していないですが、一連の認定遺産を見ているとストーリーとしては興味深い(マニアックでおもしろそう)と思う部分が多々あります。まずは、世界遺産と匹敵するくらいのブランド力がつくことを期待しています。

まだ新しい仕組みですし、もしかすると各認定遺産の観光地としてのクオリティは発展途上かもしれません。登録数もやたらと多く(それは意図あってのことなのでしょうが)、玉石混合の匂いを感じます。ただ、ストーリーを用いて見所をアピールすることにより、訪問した人がスムーズにその魅力を理解できるようになると思いますので、とにもかくにもそこはよいアプローチだと思います。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「若狭の鯖街道」です。(写真:熊川宿(福井)【2016年】)

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③国宝・重要文化財

国宝、重要文化財ってよく聞くものの、「なんかすごい」というイメージにとどまっている方も多いかもしれません。要は、文化財保護法という法律の下、「この有形文化財(建造物、美術品、工芸品等)は、日本文化において超重要です!」と指定されていると捉えれば分かり易いです。

国がお墨付きを与えているということで、指定に至るアカデミックな根拠もしっかりしてますし、その文化的背景や美術史に与えた影響等を知るととてもおもしろいです(逆に難解な場合も多々ありますが)。国宝は横綱級で、重要文化財は大関級と考えると分かり易いです。その下にもランクはあるものの、この2つを抑えれば問題ないかと思います。

観光という観点からみると、国宝、重要文化財の中でも、建造物が行き先となってくるかと思います。私は、国宝建造物であれば、近くに旅行するなら何が何でも行きたいと思います。重文(重要文化財の略)建造物であれば、可能な限り行きたいと思います(マストではない)。国宝・重文建造物は、多くが100年以上の歴史を有しています。その歴史の重みに思いをはせるだけで満足度MAXです。

そういった意味で京都や奈良は国宝・重文建造物だらけなので、興奮で鼻血が止まりません。滋賀は地味なイメージあるものの(失礼!)、国宝・重文建造物ランキングで京都、奈良に次ぐので、私にとっては天国です。

ちなみに、建造物毎の指定となるので、あるお寺に国宝建造物があるといっても、五重塔は国宝だけど、金堂は最近再建して新しい、ということがよくあります。どれが国宝・重文なのが建造物毎にチェックする必要があります。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「三佛寺投入堂(国宝建造物)」です。(写真:三佛寺投入堂(鳥取)【2011年】)

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④重要伝統的建造物群保存地区

③で述べた文化財保護法は、有形文化財だけではなく、その他にも様々な文化的財産を保護しています。重要伝統的建造物群保存地区はそのうちの1つで伝統的な街並みを保護する枠組みです。

全国各地の歴史が息づく城下町、宿場町、門前町等において、一定のエリアが設定され選定されます。なお、そのエリアの1つ1つ建造物が文化財としての価値があるわけではありません。比較的新しい建造物もエリア内に含まれていることが多いです。ただ、景観として1つの伝統的な街並みを形成していることに変わりはありません。

その街並みの背景や歴史、文脈を学ぶことも当然おもしろいですし、ぶらぶらと街並みを眺めながら、おしゃれなお土産物屋さんとかカフェとかに入って雰囲気を味わうのもよいと思います。なぜなら、重伝建(重要伝統的建造物群保存地区の略)の大きな特徴は、そこに人々の生活が現在進行形で存在している点だからです。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「下郷町大内宿」です。(写真:大内宿(福島)【2007年】)

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⑤名勝・史跡・天然記念物

さらに、③④で述べた文化財保護法によって保護されている文化財の1つのジャンルとして記念物があります。「名勝」「史跡」「天然記念物」の3種類あり、それぞれ頭に「特別」がつくと、国宝と重要文化財の関係性と同じように横綱級にパワーアップします。

それぞれの詳しい説明は上記のリンクに譲るとして、ざっくりと説明しますと、名勝が美しい庭園や景勝地、史跡が歴史的な出来事の舞台、天然記念物が珍しい自然物(動物、植物、地質鉱物)といったところです。いずれも「特別」がつく横綱級は是非見に行くべきだと思います。他の文化財系の見所と同じく、抱えている背景や歴史、文脈にとても魅力があります。

なお、天然記念物に関しては、動物(イリオモテヤマネコ等)や植物(マリモ等)も含まれるので、季節や保護の状況から見に行けるものなのかどうか事前チェックが必要です。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「栗林公園(特別名勝)」「旧閑谷学校(特別史跡)」「湧玉池(特別天然記念物)」です。(写真:栗林公園(香川)【2007年】、旧閑谷学校(岡山)【2008年】、富士山本宮浅間大社の湧玉池(静岡)【2010年】)

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⑥重要文化的景観

もう1つ、③④⑤と同じく文化財保護法関連で、重要文化的景観を挙げさせてもらいます。重要文化的景観は、地域や風土に根差した景観、いわゆる日本の古き良き風景を残すことを目的として、重伝建と同じように一定のエリアが設定され選定されます。

私は重要文化的景観について、これまであまり意識してませんでした。最近気にし始めたといったレベルです。おそらく、何か目玉となる見所があるというよりは、選定エリアにある何気ない景観や雰囲気が素晴らしいという感じなのかなと思っています(あまり巡れてなくて曖昧です)。カメラ片手に良い景色を探すのが楽しそうです。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「別府の温泉景観」です。(写真:別府温泉(大分)【2008年】)

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⑦近代化産業遺産

最近、勢いづいているのが近代化産業遺産です。経済産業省が2007年から始めた枠組みです。明治維新以降、日本の産業発展に貢献した産業遺産(工場跡、炭鉱跡、土木物等)に文化的な価値を見出し、それらを保護することが目的です。富岡製糸場や九州等の近代化産業遺産群は、世界遺産にまで登録されています。

ともすると、工場跡地や炭鉱跡は芸術や文化とは無縁に感じるものの、そこで生み出された技術や製品が人々の生活を大きく変えていった点に大きな価値があります。それらに思いをはせると非常に感慨深くなります。各遺産におけるスケール感やミニマルで実用的なデザインの建造物等は鑑賞する分にも十分楽しめると思います。工場萌えと通じる部分がありますね。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「舞鶴の赤煉瓦倉庫群」です。(写真:舞鶴の赤煉瓦倉庫群(京都)【2016年】)

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⑧国立公園・国定公園

国立公園は自然公園法により指定された日本を代表する自然の風景地です。国定公園はその国立公園に準ずる自然の風景地です。管理主体が国(環境省)であるか都道府県であるかという違いもあります。

https://www.bes.or.jp/invitation/list_qp/

大自然を思いっきり楽しみたい場合は、国立公園・国定公園がぴったりです。登山やドライブ等々、楽しみ方も様々です。キャンプも最高ですね。最高の景色を見ながらのんびりしたいもんです。山岳系の公園であれば、温泉がある場合も多いです。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「西表島」です。(写真:西表島のマングローブ林(沖縄)【2018年】)

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⑨ジオパーク

ジオパークは、「大地の公園」を意味し、地球(ジオ)の営みを体感できるエリアをいいます。国内では、日本ジオパーク委員会が日本ジオパークを認定をしており、さらに世界ではUNESCOが世界ジオパークを認定しています。日本からも9地域が世界ジオパークに認定されています。

私は、ブラタモリが大好きです。地学があれほど面白いとは思ってもいませんでした。ジオパークでは、地学的な土地の楽しみ方を存分に味わえます。雄大な景色から奇景まで人間ではつくり得ない大地の造形を見ることができます。その成り立ちを知ることで地球の力強さと人間の小ささを感じます。

私が今まで訪れた中でお気に入りは、「洞爺湖」です。(写真:洞爺湖(北海道)【2007年】)

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⑩その他

さて、ここまで挙げてきた以外にもいろいろなくくりがあります。

土木遺産

凄い渋い!土木建造物の遺産。でも近代化産業遺産と同じくらいの価値はあるのではないか!

日本三大〇〇

・日本三景
・三大夜景
・三名城
・三名泉
・三名園 
・三大松原 等々

三大〇〇は、頑張れば3つ制覇できそうなので、達成欲から私はついつい立ち寄ってしまいます。結構力のある観光地がそろっていると思います。

日本の〇〇百選

・百名山
・日本百景
・日本の滝百選
・名水百選 等々

日本の〇〇百選は、数が多すぎるのでほぼ考慮してません。しかし、百名山等はやはり認知度も高いので少し気にしています。

別表神社・一之宮
※どちらもいろいろと歴史的な背景があるようですが、そこは割愛します。

別表神社とは、神社本庁が定めた特別な扱いを受ける神社です。比較的歴史が古く規模の大きな神社が選定されており、パワースポット好きには参考となるくくりです。

また、ある地域の中で最も社格の高いとされる神社を一之宮と呼びます。例えば、「武蔵国一之宮=大宮氷川神社」「相模国一之宮=寒川神社」等が挙げられます。こちらも比較的歴史が古く規模の大きな神社となっています。各国の一之宮神社も是非制覇してみたいです。

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以上、とにかく私の頭にある基準を全て出してみました。これらを事前に調べて旅行をすることで、後悔なく見所を巡れている気がしています。
もちろん、こういった基準だけで行き先を選ぶと偏ってしまいますので、その時々の興味や状況に応じて適切に情報収集する必要があると思います。あくまで参考情報です。

今後も、「こういう基準とかくくりがあるのか!」という発見があったらちょこちょこ追記していくかもしれません。

それでは!

*カバー写真:上野ファーム(北海道)【2012年】

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。 他のnoteも是非読んでいただければ嬉しいです。